第36話 希の決意

のぞみさんの気配がはじめてお会いした時とまったく違いました。どこかで修行したのでしょうか?腰に以前はなかった短剣を下げていますね〟


(そういえば、ナギは私の日記の内容をユナには話していなかったっけ)


〝はい。私が以前ここに来ようとしたとき、イストリカルと呼ばれている存在に出会いました。私は彼を導師マスターと呼び「獅子の泉」でいろんな秘術を習いました。先程は実践も兼ねて気配を消してみたのですが、ユナさんには感じとられたようです。私はまだまだ修行が足りないようです〟


〝わたくしは謡女うためとして幼い頃から修行をしてきましたが、希さんは短期間でこんなに力をつけています。まったく驚くばかりですよ。イストリカルについてですが、ナギの姉のセツナと意識共有している存在でしょうか? 同一の存在かは不明ですが、どうやら私たちの敵ではないようですね〟


〝はい、少なくとも私の導師マスターのイストリカルは味方だと思います。それと、先程のナギちゃんとの話で、私の意識がナギちゃんと共有できなくなった原因は、ホモ・ファージの攻撃なのでしょうか?〟


〝それはわかりませんが、ナギの体験からしてもレム睡眠状態ではないことはわかります。このまま希さんの自我が戻らない状態が長くつづくと大変危険です〟


〝ユナさん、このまま何もしなければホモ・ファージが私の世界に干渉し人類が滅びの運命を歩むことになるのでは? 私は以前の私ではなく〈精神操術マインドクラフト〉を習得し力もつけています。それに単独で異世界を行き来できます。私は自分の持てる力を使いΦファージを無害化するために戦いたい。しかし、どうしたら良いかわからず、こうして会いにきました〟


〝わたくしたち〈弥終いやはてやしろ〉の者たちは、いまのところじかにホモ・ファージを攻撃するすべがありません。これまでは多世界に干渉しながらΦの脅威の及ばぬ運命を探っているところでした。そんな中で何かの力に引き寄せられるように希さんに出会えたのだと感じています。もしΦに対抗しうる方法があるとすれば、Φの発生源を辿たどり無害化するのが一番確実な方法なのではないかとわたくしは思います〟


〝Φの発生源を辿る。それはΦの隕石が落下した時代にさかのぼり、ホモ・ファージの発生を防ぐべくを無害化するということでしょうか?〟


〝はい。しかしそれはわたくしたちの力では大変困難なことです〟


 ユナは半ばあきらめの表情を浮かべていた。

 

(私は精神世界を過去に遡れて、こうして実体化もできる。Φの発生源を辿ることまではできるかもしれない)


 希は自分のできることで力になりたいと思った。

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Φ:ファージ 外山 脩 @pikanchu1115

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