第4話 セッション
「お願いします」
自分の意識の起源はどこかで分岐した同時代の誰かの意識の
「希さんは集合的無意識にアクセスできる人なのかも知れませんね。それに創造力が高くて物凄いスピードで脳が情報の整理を行っているようですね」
「集合的無意識ですか?」
希は集合的無意識という言葉に、意識の起源に似たものを感じた。
「ええ。そして希さんは覚醒時と睡眠時どちらもレム睡眠状態でいることが多く、少し語弊があるかも知れませんが、常に脳がぼんやりしています。実はこの状態の方が脳は創造力が高まりエネルギーの消耗も激しいのです。希さんは随意的に自分の意識の指向を内面に向けることができます。これは瞑想状態と一緒です。希さんの場合は"観察瞑想"といって自己の内面にある感情や雑念を客観的に観察していて、そこに物語性のある他人の人生を垣間視ているのかも知れません」
「でもそれが現実を上回ってしまったらどうなるのでしょうか? 精神世界では明らかに時間の流れが現実とは異なります。誰かの半生を視たにもかかわらず現実世界では数分しか経っていなかったこともあります。それに伝染するんです」
「伝染、ですか?」
「はい。例えば私がAさんの人生をトレース中に婚約者のB子さんが現れたとします。すると私のホストだったAさんはそのままに、B子さんの人生のトレースも始まるのです。もちろんB子さんの過去にも
「それは危険ですね。放っておいて情報の整理が追いつかなると脳機能がオーバーフローしてしまうでしょう。トレース伝染を抑制する必要があるかも知れません。それは同時に希さんの睡眠障害対策にもなるでしょう。帝國大の教授にも私から連絡をしておきます」
こうして六十分のセッションは早めに終り、希はパーソナルチェアから降りようとスリッパに足をいれた。
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