第56話 時の流れは残酷で…。
時間は、誰にも平等に流れていく。時の流れとともに、かつてはスーパーマンのように活躍してきた人も、その力を失っていくのである。釈尊が、避けることのできない「四苦」として、「生・老・病・死」を挙げていたが、それは今でも変わらない。人はやはり、生きて、年老いて、病を得て、死んでいく存在なのである。
上野先生が74歳の時だったか、40年間続けられた理事長を勇退されることとなった。と同時に、常勤医から非常勤医になられた。とはいえ、上野先生が診療所のオーナー(土地や建物のかなりの部分が上野先生名義であった)であることには変わりなく、変わったことといえば、理事会に上野先生が来られなくなったことと、上野先生が夜の外来から撤退したことくらいであった。
また、同時期に上野先生の右手として活躍されていた事務部長も退職された。これは多分に人間関係のもつれであったと思われる。個人的には、私が事務当直のバイトを始めたときに、素人である私を指導してくださったのが事務部長であったので、私自身は事務部長に嫌な思いは全くなかったのだが、いろいろと診療所内でトラブルはあったようである。年齢による定年退職後も仕事は続けられる予定であったのだが、どういうわけか、その後変な話になり、
「じゃあ、仕事もいい機会なのでこのまま退職しますし、理事の職も退任します」
ということで退任されてしまった。
同時期に、かつては「鉄人」と呼ばれるほどハードワーカーだった北村先生も、年齢を理由に当直を勇退された。
そして、新理事長は所長でもある源先生がその任につかれ、サポートする事務長も、30代の事務課長と総務課長の二人が理事となり、源先生をサポートすることとなった。診療所も世代交代の時期であった。
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