第22話 怪鳥は白人魔導部隊を殲滅しました

翌朝二人は多くの鳥の鳴き声と周りの明るさに目が覚めた。


「ごめん、シャラ、朝まで火の番してくれてたんだ」

火がついていることを確認してモニカが謝る。

「そんな訳ないじゃないですか。最初にくべただけですよ。あとは適当です」

クリスは最初に適当に魔術で調節しただけだった。


「えっそうなの」

モニカは不思議そうに火を見ている。そんな魔術はあまり聞いたことがなかった。


クリスは完全に忘れていると言うか記憶喪失中だが、小さい頃から冒険ごっこと称して王城の中庭や避暑の離宮でジャンヌに付き合わされて、王城の森というか中庭などで野宿をたまにさせられていたので、そこでの経験が生きていた。

それに付き合わされた護衛達は大変だったが………・


クリス達は昨日採った果物の実を食べて出発する。

昨日ぐっすり寝れたので快調に歩ける。

しかし、二人は二人の周りに敵の追手が迫っているのに気付かなかった。



「隊長、野宿の跡のようなものを發見しました」

その2時間後に、付近を捜索していたホワイテアの魔導部隊の一人が報告してきた。

「よし、直ちにその先を探れ」

司令官は命じつつ、大半の魔導師をその場所に集結させた。


2時間後には散らばっていた指揮官はじめ副官等30名が集結した。


「モニカ王女と魔導師と思しき者が歩いているのを発見しました」

その魔導師から連絡あったのはそれから1時間後だった。

「川沿いに真北に向かって歩いています。えっ、ギャ」

魔導通信が急に途絶えた。


「どうしたのだ」

司令官が尋ねるが、副官も首をふるしか出来なかった。


「気付かれたか、急ぐぞ」

残っていた20名も慌てて駆け出した。



一方クリとモニカは険しくなった山を手も使ってよじ登っていた。


そして、峠に出るとその先は開けていた。


その先には赤茶けた大地が広がっていた。そして、真ん中には天高くそびえる赤茶けた山が見えた。


「ま、魔の山だわ」

呆然としてモニカが言った。


「魔の山って怪鳥がいるっていう」

「そうよ。ギャオースのいる山よ。変ね。違う山域を歩いていると思ったのに、魔の山に出るなんて最悪だわ」

クリスの言葉にモニカが答えた。


「どうします。見た感じ怪鳥はいないみたいですけれど」

「でも、見つかったら問答無用で攻撃されるって話だわ」

クリスの問いに怯えたようにモニカが言う。


「でも、可愛い女の子2人組にいくら怪物でも問答無用で攻撃してくることはないと思いますけれど」

「ギャオースが女を見逃すなんてあるはず無いでしょ。相手は化け物なのよ。人間の男じゃ無いんだから」


「でも、私、獣に襲われたこと無いんです。皆避けていくっていうか。今度も大丈夫だと思いますよ」

クリスがとんでもない事を言い出す。


「え、それはありえないわ。始祖でもやっと追い出しただけなんだから」

と言いつつ、モニカはクリスを見た。


見た目は確かに可憐な少女だ。しかし、もし少女がシャラザールなら、ギャオースといえども怖がって近寄って来ないかもしれない。大回りしたら時間がかかるし、ここはそれにかけてみるのもいいのかもしれない。


「でも、そうね。時間もないものね」

「一か八か行ってみましょう」

モニカはクリスの言葉に不吉なものを感じたが、赤茶けた台地を歩き出した。


台地は歩き難かった。大きな岩が至るところにあり、時に避け、時に乗り越えて行く。至る所に突起物があってモニカは何度も転けた。


泥だらけになりながら、歩いている二人を遠くから魔導部隊の者達は見つけた。


「よし、いたな。行くぞ」

「司令官。山からなにか飛んできます」

魔導師の一人が叫んだ。


「キェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

凄まじい叫び声が大地一帯に響いた。



「げっ、ギャオースよ」

それを見てモニカは慌てた。

それは巨大な青い鳥だった。


「きれい」

クリスはその鳥をみて感嘆してつぶやいた。

「ちょっと、シャラ、隠れて」、

そのクリスの手を引いてモニカは岩陰に隠れさす。


「なんだ、あれは」

「怪鳥ギャオースではないですか。ドグリブの始祖が追放したという」

副官が言った。


「こちらに来ます」

伝令が叫んだ。


「キェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

ギャオースは叫ぶと、口から火を噴いた。


司令官は慌てて岩陰に隠れる。


隠れ損なった部下の数人が火達磨になった。


「おのれ、散開して攻撃しろ」

司令官は命じる。


しかし、ギヤオースはその暇を与えずに、傍まで一気にくると着地した。


下にいた魔導師が2人踏み潰される。

司令官は最大にした衝撃波をギャオースにめがけて放つ。

しかし、ギャオースはそれを羽で1扇ぎして跳ね返した。

それをモロに受けた魔導師たちが弾け飛ばされる。


「キェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・・・・」

ギャオースは嘴を開けて叫んだ。

そして、それは途中から音波攻撃に変わって強力な攻撃が魔導師達に襲いかかった。

司令官も副官も障壁を展開したが、一瞬で破壊され、多くの者はその衝撃をもろに食らった。その後に生きている者は誰もいなかった。



「ヒィィィ」

それを遠くで見ていたモニカは思わず、後ずさった拍子に近くにあった岩に当たる。

その岩は大きな音を立てて崖から落ちた。


ギロリとギャオースは二人を睨むと二人に向けて飛び立った。

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