第21話 クリスとインディオの王女は野宿しながら王都を目指しだしました

クリスは、はっとして気付いた。

爆発がしてやばいと思った時には、モニカの手を掴んで何かしたのだった。直ぐ傍を見るとモニカが倒れていた。


「モニカ様!」

クリスは慌ててモニカを揺すって起こそうとした。

「うっ」

モニカは目を覚ました。

「ここはどこ」

「さあ」

モニカの言葉にクリスも口を濁す。


木は鬱蒼と茂っていた。どうやら更に奥に入ったようだった。


「ありがとう。あなたが救ってくれたのよね」

「よく判らりませんが」

「転移してくれたんでしょ」

「えっ」

クリスは自分が転移なんてできるとは思ってもいなかった。でも、あれは確かに転移だった。


「そうですね。転移できるなんて判っていなくて。このままだと死ぬっと思って必死にあがいた結果が転移だったんですね。二度と出来ないような気がしますけど」

クリスは正直に言った。


「そんなに離れてはいないと思いますけれど。戻りますか」

「いえ、敵の規模等もわからないわ。出来たら先に行きましょう」

「そんなに時間が経っていないと思いますから、太陽の具合から言ってあちらが王都の方向だと思いますが………」

クリスが指差した。

「そうね。取り敢えず、出来る限り先に向かいましょう」


二人は山道を歩きだした。


クリスは途中で食べられる実を見つけると爆発の前に持ち出した背嚢に入れていく。

「その赤い毒々しい実は食べられるの」

モニカが聞いてきた。

「これはグミの実で、美味しいですよ」

一つクリスが食べてみる。そして、モニカに渡す。

モニカは恐る恐る食べてみる。


「あっ、本当だ、美味しい」

モニカが美味しそうに言った。


「そうでしょ。夏だからいろんな木のみがあるんです」

「シャラはすごいね。私は全然知らないや」

「山国育ちなんですかね」

モニカの言葉にクリスが笑って言った。


「でも、このまま行って今日中に街に着きそう?」

「なんかどんどん山に登っているような気がします。難しいんじゃないですか」

シャラは平然と言った。


「下手したら野宿か」

女二人で野宿なんてモニカはやったことがなかった。


「まあ、そうなったら仕方がないですよね」

「シャラは野宿をやったことがあるの?」

「うーん、記憶にはないんですが、なんとかなるかな」

そのクリスを不安そうにモニカは見た。


その後3時間歩いても森は切れなかった。


「モニカ様。そろそろ野宿の準備をしたほうが良いと思います」

日が陰リはじめて川のそばでシャラが進言した。


「そうね」

諦めてモニカが言う。


「ちょっとまってくださいね。この川には魚がいるので」


シャラは枝をナイフで切って適当な長さにして、その先に背嚢を探って紐を取り出して結わえた。安全ピンを手で何かつぶやきながら釣り針にする。


そして、早速釣りをはじめた。


ものの2分で2匹の大きなイワナを釣り上げた。


「えっ、シャラはすごいね」

モニカは感嘆した。ご飯は最悪木の実のみだと思っていたのだ。その木の実にしてもクリスが取ってきたものだが。


そのままクリスは火をおこして、細い枝を適当に切って串にしてイワナを刺して火で焼く。


「本当にシャラは慣れているんだな」

モニカはひたすら感心していた。


二人がイワナにかぶりつき終わる頃には頃は外はもう暗くなり始めていた。


薪を適当に積み上げてシャラは火を切らせないようにして呪文を呟く。

そして、周りに障壁を張る。


「これでクマが出ても大丈夫です」

と言うとクリスは横になった。


もうただただ、モニカは感心するしか無かった。


クリスは横になると疲れていたのかすぐに寝だした。


それを見て、モニカはクリスの強心臓に驚いた。

この強心臓ぶりといい、転移出来たことといい、やはりクリスはシャラザールなんだろうか。寝入る前にモニカが思ったことだった。


疲れ切ったモニカもあっという間に寝入っていた。


二人の可愛い寝顔を魔法の火が照らしていた。


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ジャンヌに鍛えられたクリスは野山では最強です。

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