第19話 クリスはインディオ王国の国王に呼び出されました

「おはよう」

そこに王女のモニカが入ってきた。

「おはようございます。モニカ様」

クリスが挨拶した。

「どう、名前とか思い出せた?」

モニカが聞く。

「いいえ、全く」

クリスは首を振った。

「取り敢えずあなたの名前はなんと呼べばいい」

モニカが尋ねた。

「何と言われても。全く思い出せなくて・・・・・」

「そうよね。無理しなくて良いわ。でも、名無しの権兵衛じゃ都合が悪いから取り敢えず、シャラと呼んでも良い」

「シャラって戦神シャラザール様の本名ですよね」

クリスは言った。

「あなたすごいわね。シャラザール本名知っているなんて。そんな所は覚えているのね」

「そうですね。何でなんでしょう?」

クリスもよく判っていなかった。

「取り敢えず、当面シャラでいいわよね。シャラザール様でもいいんだけれど」

「いえ、シャラで結構です」

モニカの言葉にクリスは仕方無しに頷いた。人前でシャラザール様なんて呼ばれて傅かれたい訳はなかった。


「その方が周りにも、シャラザール様のの化身と判らなくて良いわよね」

「あのう、モニカ様。私おそらくシャラザールと様とは関係ないかと」

モニカの言葉にクリスは反発するが、

「まあ、そう言うことにしておきましょう。もし、起き上がれるなら、お昼でも一緒にどう」

「そのような。一国の王女様と昼食をご一緒するなどとんでもございません」

「そこは気にしなくて良いから。じゃあ宜しくね」

モニカはそう一方的に言うと部屋を出て行った。


クリスは午前中はベッドで食事をしてその後は医師の診察を受けた。




そして、昼食をモニカと食べた。


「あなた相当身分は高かったと思うわ」

モニカはそのクリスの食べる様子を見て確信した。

「そうなのですか?」

「その食べるマナーや姿勢、仕草の一つとってもとても洗礼されているもの。高貴な香りがするわ。私の方が余程野暮ったいわよ」

モニカはそう言って笑った。


「そのようなお褒めのお言葉は、もったのうございます」

「ほら、その言葉にしてもそうよ」

クリスの言葉にモニカは笑って言った。


「私のほうが余程田舎王女ね」

「・・・・」

クリスはなんと応えてよいか判らなかった。


「失礼します」

そこへ兵士が入ってきて、モニカの耳に囁いた。


「父上が」

「はい。出来たら至急お会いしたいと」

モニカの声に兵士が応えた。


「でも、シャラは目覚めたところでいきなり長距離の移動は難しいと思うわ」

クリスの方を気遣いながらモニカが言う。


「しかし、国王陛下も状況が状況なだけに急いでいらっしゃるようです」

「カロン砦の奪還の兵は」

「王都からは流石に10日程かかります。今は付近の兵を早急に集めているところでして、もう一両日中には千は集められるかと」

千ではコロン砦の奪還は難しいだろう。王都からの兵と言っても5千くらいしか送れはしまい。その兵で奪還は難しい。シャラザールに再び来臨いただかなければ、奪還一つにしても難しかった。ここで休養すればシャラが再びシャラザールになってくれるのではとモニカは勝手に期待していたが、父や貴族共が会いたいと言っているのならば、無視するわけにも行かなかった。


「判ったわ。今日一日、シャラには休んでもらって明日王都に向かいます。そう父上に伝えてくれる」

「了解しました」

兵士は敬礼して出て行った。


「ごめん、シャラ。父がどうしてもあなたにお会いしたいと」

「えっ、殿下の父上と言われると国王陛下ではないですか」

「ゴメン。どうしても連れてこいと言って聞かないのよ。お願い」

モニカはクリスに拝みこんだ。


「そ、そんな事を言われても」

クリスは出来れば断りたかったが、モニカは頷いてくれなかった。


「私はシャラザール様ではないですからね」

クリスは念を押したが、おそらくそれは信じてもらえないだろう。クリスはこれからのことを思って逃げ出したくなった。


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