第17話


 無言で鍵が開いた。

相当、嫌われてしまったようだ・・・・・・


 ドアを開けると、玄関で瑠璃が仁王立ちしていた。


「何回も電話したんだけど」

「携帯がお亡くなりになった。悪い」


 空は、2度と会うことがないと思っていた瑠璃を見て、少し緊張した感じで返す。


 どう切り出すべきか。

そんな事を思って考え、沈黙が生まれる。


 空はそのなんとも言えない空気から抜け出し、話を進めるためにアイを玄関に入れた。


 アイは綺麗なお辞儀をする。


「アイです。本日はお願いがあ・・・・・・」


「アイちゃんだぁぁあーーーー!!」


 瑠璃は目を光らせながら、アイに握手する。

これには、空も瑠璃も困惑していた。


「あー。瑠璃? 知ってるのか?」


「知ってるも何も! ゲームのキャラクターだよ! あの作者不明の神作『マジックファンタズマ』の登場キャラクターで、この子のコスプレは悪役令嬢役のアイちゃん。最初、私は嫌いだったけどアイちゃんが健気で努力家って知ったらもう、大大大ファンになったの! まだまだあるよ。同封されてた裏話本に載ってた情報なんだけど、アイちゃんは小さい頃・・・・・・」


 瑠璃は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている、空とアイを見て恥ずかしそうに顔を隠す。


「別にオタクってわけじゃないからね? あの作品においてだけだから・・・・・・。この子がどうしたの?」


「あっ、ご紹介に預かりました? アイです」


 アイは混乱しながら、再びお辞儀をすると瑠璃はやたらとニヤニヤしている。


「ど、どうかしました?」

「いや、可愛いなーって思って。そのお辞儀もアイちゃんの完コピだし」


 アイは困ってしまう。

一方的に知られていて、どこまで知っているかはわからない。ひたすらに怖かった。


 そこで空がフォローに入る。


「アイが泊めて欲しいらしいんだ」

「私は喜んで!! お父さんもお母さんも旅行行っちゃったし、好きなだけ泊まって!! じゃあ、アイちゃん、今夜は語ろうね!」


 瑠璃は目を本当に発光しそうな勢いで光らせ、目にも留まらないスピードでアイの手を掴み、つれ去ってしまった。


 空は、それを微笑んでみながらリビングに上がる。

すると、放置されている本の上に瑠璃の携帯が置いてあった。


 空は、瑠璃に携帯を返しにいこうとしてその携帯を持つ

 すると、本のタイトルが見えて『マジック☆ファンタズマ 徹底解剖集』と書かれていたことに気づいた。


(これが例のゲーム本か)


 空はそう思って手に取る。

少し興味が湧き開いてみると、まず最初に全キャラのスリーサイズが載っていた。


 男のスリーサイズと共にそこにはアイのも・・・・・・

そこにはちゃっかりマーカーが引いてあった。


 空は瞬時にその本を閉じる。

脳内でそのサイズで何をとは言わないが想像してしまった。


 空はその後、冷水を浴びて心身ともに洗い流した。


 そして、もう一度、本を開いて読んだ・・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る