妄想能力者と現実能力者の討伐戦 前後日録

忽那 和音

青春編

プロローグ

 これは陰光大学付属陰光中学に飛び級進学したばかりの女子中学生とその仲間たちの物語。

 そうなるはずだった……。


「ほらーー、走らんかい!」

 一体、どこからの影響を受けたのか。赤いジャージにストレートヘアをヘアゴムで一本縛りにした女性の体育教員がいた。


 いや、これ完全に例のヤンキー漫画を見たとしか言いようがないよね。絶対に!!


 ミツキは心の中で強烈にそう思った。しかし、それほどの体力は無かった。

「うえ~~、朝練で走ったばかりなのに、さらに体育の授業に走るとかないでしょ~~」

 今にも倒れそうな顔の歪んだ表情で体育の授業として校庭の隅から隅まで走った。


「ほら、こんなところでばてる場合じゃないぞ!ミツキ!ほら、どうした!?私のこの格好に文句を言いたいのであれば、千本ノックで玉を全て取ってからにしろーー!」


 完全に挑発してる。これ、完全に挑発してるよ!!くそーー。教員という立場を利用しながら、中学へ進学した私をここまで追い続けるとは……。あやつやりおるわい……。


 ミツキは心の中に少年的な人格と時代が遅れて覚醒したような侍の人格がいる。


 外には流失していないが、ミツキは心の中でいろんな人々がいる。おそらく……。しかし、それは自分で作り出したものはごくわずかで、多くはテレビ上の人物やアニメなどのキャラクターをコピーしたような人物がほとんどだ。


「少年と侍で語り合うなーー!!」


 なぜばれた!?


「目の前のグラウンドの道だけを見続けろ!!」


 つまーー


「つまらないじゃない!!」


 グラウンド十周終了後。

「あーー、ごほごほっ。しっ死ぬかと思った……」


 ミツキは皆が休憩を含めて十周を走ったが、ミツキはなんらかのプレッシャーを感じて、余分に五周追加して走った。


「はい、ミツキ。大丈夫?」

「あっ、あ、ありがとう……ごぐごぐごぐ……」

 エレンから貰った水筒をミツキはがぶ飲みしていく。


「ミツキ、そんなに飲まなくても」

「私の心の声洩れてる!?」

 ミツキは目を最大まで開き、エレンに聞く。


「何のことよ」

 エレンはいつもの変なことが起こったとこれは正常な反応の一部だと思っている。


「私、あの先生にいつも以上に心の声を聞かれていたんだけど!!」

「ちょっと、頭の熱覚ました方が良いんじゃない?」

 持っていたタオルでミツキに風を送った。


「でも、あの先生。絶対、心の声まで聞こえる特殊能力を持っているんだよ!!ぜーたいにーー!!」

 心の声が聞こえることについて興味が無い上に、既に授業は終了し短い休み時間の間にミツキの正直くだらない話に付き合ってはいられなかった。

 エレンは着替えが入っていたカバンを渡した。

「はい」

「えっ……」

「これから、日直だから。じゃあ」


「えーーちょっと待ってよ~~」


 ミツキは急いで着替えてエレンを追いかけた。


「待ってよーー。エレーーン!!」

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