第41話飛んできた影

「やっと到着か。」


男は立ち上がると窓から外に飛んでいった。


迷うことなく一直線に飛んでいった。


道沿いに沿ってサンに乗った二人が進んでいると町が見えてきた。


「あれが次の目的地、あの天使のような奴が何なのか気になるな。」


「アランさんが探してたのは本当に悪魔だったのですか?」


「確かに俺は悪魔を探していた。なのに見えたのはまるで本物の天使のようだった。物語に出てくる白い服に白く穢れがない綺麗な翼。そして、容姿も男の俺が見ても美しいと思ったほどだった。レイミヤも、もし天使のような姿をした男を見たら気を付けてくださいね。もしかしたら向こうも気づいているのかもしれないので。」


「分かりました。」


アランとレイミヤが町に入る前に話していると町の方から黒い影が飛んできた。


「アランさん、なんでしょうあれ?」


レイミヤがいち早く気づき影を指さしながらアランに聞いた。


「あれは鳥じゃないかな?」


アランも影を確認してみると影は翼をはためかせた。


「主様、あれは鳥ではございません。」


ハーゲンティが咄嗟にアランに話しかけた。


急にハーゲンティが話したことでアランとレイミヤの視線が影から一瞬外れた。


確認するためもう一度見てみると先ほどまであった影はなくなっていた。


「いったいどこに行ったんだ?」


アランとレイミヤが見失った影を探してあたりを見渡してみるが見つからなかった。


「遅いよ、僕がどれほど待ったのかわかるかい?」


突如上から声が聞こえた。


二人が上を向くと日の光が眩しく一瞬目を閉じたが次の瞬間日の光が何かに遮られた。


光を遮ったのは白く大きな翼だった。


「お前はいったい誰だ!?」


「おいおい、出会って早々にお前とは失礼な奴だな。まあ、別にいいか。好きに呼ぶと言い。


 初めまして僕の名前はクロセル以後お見知りおきを。」


クロセルは二人の前で飛びながらお辞儀をした。


「クロセルさんは天使なのですか?」


レイミヤがそう聞くとクロセルは軽く笑った。


「フフ、そうだねそういうことにしとこうか。」


クロセルはレイミヤの方に手を伸ばしながらゆっくりと近づき始めた。


向かってくるクロセルにレイミヤは怯えていた。


アランは近づくクロセルを見てレイミヤとクロセルの間に割って入った。


「あんたも初対面の女性にいきなり近づくのはどうなのかね。」


「チッ」


クロセルは小さく舌打ちをした。


「確かに失礼なことをした。お嬢さん怖がらせてしまって申し訳ない。」


クロセルはレイミヤに向かって頭を下げた。


「主様、そいつは天使なんかではありません。私たちと同じ悪魔です。」


ハーゲンティはアランだけに聞こえる声でクロセルの正体を教えた。


「やっぱりか、千里眼で観たのもこいつの顔だったからな。」


でもなぜ俺たちの前に現れた?


少なくとも一人は悪魔がいることはわかっているだろうに。


アランはクロセルがなぜいきなり現れたのかがわからなかった。


「それでそちらのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


クロセルは笑いながらレイミヤの方を見て聞いてきた。


「私の名前はレイミヤです。レイミヤ・シルフォード。」


「俺のなま・・」


「レイミヤというのですか。何とも美しい名前をお持ちのようだ。それでいてその美しい姿、お目にかかれて光栄です。」


クロセルはアランが名前を言う前に話し出した。


「レイミヤ様、もしよろしかったら目の前の町に見える城へと寄ってください。ぜひ旅の疲れを癒していってください。」


「どうしますか、アランさん?」


「いや、せっかくのお誘いだが断らしてもらうよ。」


アランが言うとクロセルの眉がピクリと動いた。


「そうですか、無理にではないので構いませんよ。もし何かありましたら私を訪ねてください。私はいつでも城にいますので。」


クロセルはそういうと城の方へと飛んでいった。


アランとレイミヤはクロセルが見えなくなるまで見つめていた。


見えなくなるとアランはその場で座り込んだ。


「大丈夫ですか、アランさん!?」


「大丈夫、ただ力が抜けただけです。レイミヤ、あれが今回の標的です。」


「ええ、ブエルが私に教えてくれました。」


そう言ってレイミヤはブレスレットを見た。


「小僧、なぜすぐに俺を出して戦わなかった!!」


フラウロスが目の前にいた悪魔を見逃したことに怒っていた。


「あいつはただ話していただけだ。なんの害はなかっただろ。なんでも力で解決しようとするなよ。」


「戦いが始まってからの召喚なんか殺してくれと言っているようなもんだ。次からは悪魔と対峙するときにいち早く召喚するんだな。」


そう言ってフラウロスは黙った。


「誰か、クロセルのことについて知らないか?」


アランは契約をしている悪魔にクロセルのことについて質問した。


「私なら知っているぞ。」


答えたのはオロバスだった。


「あいつは隠している秘密は何でも知っている。さらに、実際には大水が流れていないのだがまるで流れているかのような音を出す。そしてもう一つ液体を温める能力がある。しかし驚いたな、あいつは前までは表立ったことをするような奴じゃなかった。いつもは目立ったことはしないで高い地位も望まないでおとなしく暮らすのがあいつだったのに今じゃあ城で暮らしているとはな。こんなところだな私が知っているのは。」


オロバスはクロセルの能力について知っていることをアランい話した。


「ほかにクロセルについて知っている奴はいるのか?」


アランがもっと情報を得ようとするが目立った情報は得ることはなかった。


「みんなありがとう。大体はクロセルのことが分かったな。」


恐らくあいつが手を出してこなかったのはこちらの戦力がまだはああくできていないからだ。


フラウロスの言う通りもしあいつが攻撃してきていたらその時点で負けていたかもしれない。


次からは常に一人は誰かを隣に置いておこう。


「アランさん、これからどうしますか?」


一人考えているアランを見てレイミヤが聞いてきた。


「とりあえず、町に入って宿を探すとするか。」


アランとレイミヤはサンに乗って町の門を目指した。

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