第32話魅せられた者

フラウロス、アンドロマリウス、ハーゲンティの三人は全く歯が立たなかった。


オロバスは最初のフラウロスの攻撃以外ダメージを受けることはなかった。


まるで蹂躙だ。


「どうした?こんなものなのか?まだまだ力を使えるよになっていないようだな。」


オロバスはフラウロスの元に歩いていき目の前に立った。


「ほらここまで来てやったぞ、攻撃が当てやすいだろ?」


オロバスは完全に舐めていた。


「くそが!!」


フラウロスはやけくそになりながらオロバスに攻撃を始めた。


手に炎を纏い殴り始めた。


「ほらほら、当ててみるがいい。」


だがオロバスはフラウロスの攻撃をすべて躱した。


オロバスはフラウロスが攻撃する先がまるで見えているようだった。


「インフェルノ・フィアンマ!!」


フラウロスは両手に炎を貯めてオロバスに放った。


「よし!」


フラウロスの前方に炎が出たためアランも今度は攻撃が当たったことを確信していた。


「どこを狙っているんだ?」


オロバスはフラウロスの後ろに回り込み攻撃を躱した。


そこからは一方的な攻撃が始まった。


オロバスはフラウロスを剣で切りつけ、足で蹴りフラウロスを痛めつけた。


フラウロスもよけようとしていたが、オロバスは避けた先に攻撃を繰り出すためまるでフラウロスが攻撃に当たりに行っているようにも見えた。


「貴様――!!」


オロバスの後ろかハーゲンティが突進していった。


オロバスの死角からの攻撃オロバスには見えるはずもなかった。


ハーゲンティの攻撃が当たる瞬間オロバスは避け攻撃はフラウロスに攻撃が当たった。


「何をやっているのだ貴様は。」


オロバスは呆れながらハーゲンティに攻撃した。


「スパーダバーラ!!」


ハーゲンティのよっから繰り出された斬撃はハーゲンティの腹を切り裂いた。


ハーゲンティは壁に貼り付けになり動かなくなった。


「おっと、ついやりすぎてしまった。」


「さて次は貴様だな。」


アンドロマリウスが密かに近づいていたのにもオロバスは気づいていた。


「近づくならバレずにそして、速くだ。」


アンドロマリウスが攻撃したときすでにオロバスはアンドロマリウスの目の前にはいなかった。


アンドロマリウスは周囲を見渡しオロバスを探した。


「いったいどこだ!?」


「こっちだ。」


アンドロマリウスの後ろから声がした。


アンドロマリウスは振り向いた途端蹴り飛ばされた。


蹴りは体にめり込み骨が折れた。


アンドロマリウスの口からは血が流れ出た。


「こうやって相手に近づくんだ。覚えておくがいい。」


満身創痍の状態になったフラウロス、アンドロマリウス、ハーゲンティ。


ハーゲンティとアンドロマリウスはもう動けそうになかった。


フラウロスも立っているのがやっとのようにふらふらしていた。


「もっと楽しませてくれ!」


月明かりがオロバスの姿を照らした。


その姿はまさに悪魔そのものだった。


アランはフラウロス達の攻撃をことごとく躱すオロバスを見ていた。


「まさか、お前の能力は!」


「おや、さすがに気付いたかな?私の能力は過去現在未来すべて私には見えている。それが私の能力。」


オロバスは自分の能力を明かした。


「どおりで、フラウロス達の攻撃が当たらないわけだ。」


「その通り。私は常に戦いながら未来を見ている。そうすれば攻撃など当たるはずもない。貴様らは私を倒すことなど叶わないのだよ。ハッハッハッハ」


オロバスが笑う中オロバスの目の前を炎が通り過ぎた。


フラウロスが炎を飛ばしオロバスに当てようとしたが躱された。


「無駄だと言っているだろう。だが、初撃は痛かったぞフラウロス。小僧、貴様あの老人からもらった回復薬を持っているんだろ?私にくれないか?」


オロバスはアランに手を伸ばしながら近づいてきていた。


「さあ、速く私によこせ。」


「ふざけるな!貴様なんかに、グハッ!!」


アランの腹に重い何かが当たった。


「貴様に拒否権などない。人間ごときが逆らうな。」


オロバスが腹に拳を入れていた。


アランはその場に腹を抑えてうずくまった。


オロバスはアランのポッケを剣できるとドーボからもらった薬が出てきた。


「おとなしくよこせばよかったものを。」


オロバスは薬を拾い口を付けた。


「全く何を渡したかと思えば回復薬とは警戒するだけ無駄だったな。それにしてもひどい味だほんとに効果があるのか怪しいものだな。」


オロバスは薬を飲むと目の前がぐらつき始めた。


「なんだこれは?貴様私に何を飲ました!」


オロバスはアランに剣を突き刺しアランを貫いた。


オロバスの症状はすぐに収まった。


「いかんいかん、ついこの子供を殺してしまった。」


アンドロマリウスの体が灰に変わり始めた。


「坊主が死んだか。これもまた運命なのかもな。」


アンドロマリウスは灰の山になった。


「主様・・」


ハーゲンティも這いつくばりながらもアランに近づいてきてたがアランに着く前に体は灰に変わった。


「オロバスてめえは絶対に許さねぇ。」


フラウロスの声はどんどん小さくなっていった。


次第にフラウロスも灰に変わった。


アランが死んだことで契約していた悪魔三体も共に死んだ。


「全くつまらん連中だ。くそ、あの薬のせいで気分が悪い。確かあの女が回復の魔法を使えたはず。」


オロバスはレイミヤのとこまで行くと髪をつかみ持ち上げた。


「おい、小娘早く起きろ。」


レイミヤは最初の一撃ですでに息絶えていた。


「全くこれだから人間は脆すぎる。仕方ない時間をかけて治すとするか。アトもう終わったぞいったいどこにいるんだ。」


オロバスはアトを探すため部屋を探し回ろうとすると、背後からただならぬ気配を感じた。


オロバスは急いで振り向いた。


そこにいたのは死んだアランの体だった。


「なんだ今のは。まさかこの小僧が?だがしかし、こいつはすでに死んでいるはず。」


オロバスはアランに近づこうとすると足元に灰が集まってきた。


「な、なんだこれは!?」


灰は瞬く間にオロバスの体を包んだ。


そして灰はオロバスの体の中に入っていった。


「いったい何が起きているんだ!」


オロバスの体に異変が起き始めた。


体がぼこぼこと膨らみ膨らんだところにアンドロマリウスの顔が現れた。


「な、なんだこれは!!アンドロマリウス貴様は確かに死んだはず。」


次にハーゲンティの顔もオロバスの体に浮き上がった。


「いったいどうなっているんだ!!」


フラウロスの顔がオロバスの体の真ん中に浮き上がった。


「オロバス、まだ死にたくない。」


「私もあなたの体の一部に。」


「まだ生きたい。」


浮き上がった顔がしゃべり始めた。


「これはあいつらの怨念か!?よ、よせ!!私の体から出て行け!!」


オロバスは浮き上がった顔を剣で切り落とした。


オロバスは自分の体を切り落とすのに躊躇はしなかった。


切り落とした顔は床に落ちるとただの肉片になった。


するとまた別のところから顔が浮き上がり始めた。


「なんなんだ貴様らは!!!」


オロバスはまた顔を切り落とした。


だがまた顔が浮き上がり切り落とすオロバスは永遠とそれを繰り返した。


自分の体が動かなくなるまで。




オロバスは幻覚を見ていた。


アランを突き刺したのは自分の脚だった。


オロバスはひとりでに話したり自分の体を斬ったりしていた。


「何やってるんだあいつは。」


なんとか立ち上がったフラウロスがオロバスの奇行を見ていた。


「さあな、恐らくあの薬のせいだろう。」


ドーボの薬を飲んだ後オロバスはおかしくなった。


だがしかしアラン達は全員満身創痍だった。


「かの者の傷を癒したまへ、クルーラ。」


聞きなれた声が聞こえ体の傷が消えていった。


「レイミヤ!!」


レイミヤがアランの傷を癒した。


「でもいったいどうして!?」


「あの斬撃をナイフで防いだ時無我夢中でした。それで全身に魔力を纏った時ネックレスが光り始めたのです。ネックレスが光ると斬撃は消えましたが衝撃で私は吹き飛び気絶してしまってました。」


レイミヤがつけていたネックレスあれは「攻撃無効」の力がついていたネックレスだった。


全身に魔力を纏った時にネックレスに魔力が宿り、効果が発動した。


武器屋の時に何の反応もなかったのは誰にも攻撃されていなかったから何も起こらなかった。


レイミヤは悪魔三人の傷を癒した。


フラウロス、アンドロマリウス、ハーゲンティの傷は瞬く間に癒えていき三人は復活した。


「オロバス!!いったいどうしたの!!早く何とかしないと!!」


アトがおかしくなったオロバスに近づき正気に戻そうとした。


「おお、アトそこにいたか。探したぞ!」


オロバスは幻覚と現実がごちゃ混ぜになっていた。


「よかった正気に戻ったのね!」


「もう私はだめだ。」


オロバスは自分の体を傷つけボロボロの体になっていた。


「そんな、私にできることは何でもするから。早くあいつらを何とかして!!」


「お前はそう言うと思っていたよ。」


オロバスはアトの体を押さえつけ、自分の体に押し付けた。


するとアトの体がオロバスの中に入っていった。


「オロバスこれは!?」


「お前は何でもすると言った。ならお前の体を取り込み私は生きながらえる。」


「そんな私はどうなるの!!」


「安心しろ、お前は私の中で永遠と生き続けるのだ。」


「そ、そんな、いやよそんなのいや――!!!」


オロバスはアトの体を摂り込み傷を治した。


「ぐぅ、体がおかしい。アト速く私と一つになれ。私を拒むな。」


オロバスの体は徐々に変化を始めた。


一本角が生え始め、体は大きくなり始め、筋肉が膨れあがっていた。


「小僧今しかない。あいつは今人間の体を摂り込むのに必死になってやがる。もし完全に摂り込んだらもう勝ち目がない。そして奴はまだ正気になっていない。チャンスは今しかない!!!」


フラウロス、アンドロマリウス、ハーゲンティ、アランは集まり一斉に飛び掛かった。


「貴様らまだ生きていたか!!今度こそとどめを刺してやる!!」


ハーゲンティが突進をするとオロバスは両手で角を抑えハーゲンティを抑え込んだ。


「そんな攻撃今の私には!!」


体に蛇が噛みつき大量の毒が流れ込んだ。


「グァア!!いい加減にしろ貴様ら!!」


掴んだハーゲンティを持ち上げアンドロマリウスにぶつけ蛇を引きはがした。


毒が効きオロバスは姿勢を崩した。


「なぜだ、先が見えない。これもアトのせいなのか?」


「行くぞ小僧!!俺の炎を受け取れ!!」


フラウロスはアランの持つ剣に炎をぶつけた。


剣は炎を纏い燃え上がった。


アランは剣を振り上げオロバスの右肩から左脇腹まで斬り開いた。


切り開いたオロバスの体内にアランは剣を放り投げ手を突っ込んだ。


「必ず助けてみせる!!」


アランはオロバスの体の中を探り何かを探していた。


指先に何かが当たった。


「見つけた!!」


アランはつかみオロバスの体内から引き抜こうとするがオロバスがそれを阻止するべくアランをつかもうとした。


「お前は動くんじゃあねえ!!」


フラウロスがアランをつかもうとする腕を炎で燃やした。


オロバスの腕は燃えアランをつかむことはできなかった。


アランは足に力を入れオロバスの体内から何かを引き抜いた。


引き抜かれたものはアトだった。


「やめろ――――!!!!」


アトが引き抜かれるとオロバスは倒れた。

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