第13話レイミヤ
「また男性ってどういうこと?」
ダンがつぶやいたことに疑問を覚えたアランがダンに質問した。
「あー、それがな襲われている人の割合が男性の方が多いんだよ。理由はわからないんだけどな。」
アランはダンに事件のことを聞いているうちに泊まる予定のブラウン亭についた。
「レナ、いるか?お客連れてきたぞー。」
ダンが扉を開け誰かを呼んだ。
「ダン、人を連れてきてくれるのはありがたいけど、ちゃんと仕事してよね。」
奥から、黒髪の腰エプロンをした女性が現れた。
「なんだよ、お兄ちゃんて呼んでくれないのかよ。」
ダンがそう言うとレナの顔が真っ赤になった。
どうやらダンとレナは兄妹のようだった。
「ば、バカ!!仕事中に呼ぶわけないでしょ、そんなこと。」
レナが腕を組み顔を横にそらした。
「お?仕事じゃなければ呼んでくれるということかな?
アランがにやにやしながらレナに言うと、レナが奥からダンの元へとやってきてダンの体を押して店の外へと追いやった。
「じゃあ、ゆっくりしてけよなアラン。」
扉が閉まりながらダンがそう言って仕事に戻っていった。
ダンを店の外に追いやったレナが戻ってきた。
「さてと改めて、いらっしゃいませようこそブラウン亭へごめんなさい家の兄が。」
ダンとレナの会話を見ていたアランはほほえましそうに見ていた。
「仲がいいんですね。」
アランが言うとレナはまた顔が赤くなった。
赤くなった顔を隠すためレナは後ろを振り返り大きく深呼吸した。
「そんなことないですよ。ええっと、お一人様ですか?」
レナがアランに聞くと
「はい、一人です。」
レナが、部屋の鍵を持ちアランを部屋へと案内した。
「部屋までご案内します。ついてきてください。この宿の料金は毎朝支払っています。お食事は注文制ですので必要な時に申してください。こちらが泊まるお部屋です。どうぞごゆっくりしてください。」
レナからカギをもらいアランは屋の中へと入りベッドに座り込んだ。
「なあ、フラウロス。男性を襲っていたあれは悪魔なのか?」
アランは右手にいるフラウロスに話しかけた。
「あれは、確かに悪魔だ。でも誰なのかまではわからなかったがな。」
フラウロスはアランに攻撃を止められたことにふてくされていた。
「なんだよ、ふてくされることはないだろ。お前が攻撃していたらあの人は助からなかっただろ。」
アランがフラウロスを説得していた。
「そうですよフラウロス様いつまでもしょげていないでください。」
「フラウロス様元気出してください。」
ハーゲンティ、アンドロマリウスに励まされる地獄の公爵とはいかがなものか、
と思うアランであった。
フラウロスのことを二人の悪魔に任せてアランは就寝した。
「少しくらいならもっと傷つけても大丈夫よね?」
ロウソクが光をともす部屋で、鋭くとがった爪がきらりと振り上げられた。
次の朝アランは宿を出てダンから教会へと向かった。
「ここが、ダンが言っていた聖女がいる教会か。」
教会は白い壁で塗られており窓はステンドグラスで神や天使が描かれていたようだが顔の部分が布で隠されていた。屋根には鐘があった。
中に入ってみると外見よりは細かくはないがしっかりと装飾が施されており、真ん中には祭壇まで一直線に続く道があり祭壇の後ろには大きな十字架が飾られていた。十字架の両端には神のステンドグラスがあったが顔の部分が割られていて無かった。
中には数人が椅子に座り十字架に向かって祈っていた。
「これが教会の中なのか。」
アランは初めて見る教会をぐるりと見ていた。
外からでは布がかけられて見えなかったステンドグラスだが、神と天使の顔の部分のステンドグラスが割られていた。
この教会は神と天使のステンドグラスの顔の部分だけが割られていた。
「なかなか、良い趣味だな。」
「ええ、実にそうですね。」
「見ごたえがあるやつがいるものだな。」
三人の悪魔には、顔がない天使と神に大絶賛だった。
何がいいのかわからないアランがあきれていると、背筋が凍るような悪寒が走った。
アランは、周囲を見渡し悪寒の正体を探していると、
「大丈夫ですか?」
アランの左肩に手を置き耳元で澄み切った綺麗な声が聞こえた。
アランは驚き勢いよく振り返った。
‐キャッ‐
アランが振り返ると声をかけてきた人が倒れてしまった。
その人は、修道服を着て綺麗な金色の髪をした言葉に表せないほど美しい女性が倒れていた。
でも、その人の顔を見ると目を黒い布で隠していて近くに杖が転がっていた。
「ごめんなさい、驚いてしまってつい。」
アランはすかさず手を伸ばしその女性を立たせ、杖を渡した。
「ありがとうございます。急に声をかけてしまい申し訳ございません。
私はレイミヤと申します。ここの教会で聖女をしています。」
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