第6話絶望と決意

アランは、町の方へと向けて走って向かった。


「おい、フラウロスなんでまだ牛が生きているんだよ。」


アランは走りながら、フラウロスに質問した。


「牛じゃなくてハーゲンティな。別にお前に教えることではなかったからな。」


町の門が見え、町の外側には逃げてきた人が集まっていた。


人の集団を潜り抜け、町の様子を見るとロンの家の方から黒煙が上がっているのが見えた。


黒煙をみてアランの顔は青ざめた、考えるよりも先に足が動きロンの家の方へと向かっていた。


「頼む、ロン。無事でいてくれ。」


そう願って、アランは走った。


「そういえば、ハーゲンティが次に主にした人間だけど、」


フラウロスが何か話しているがアランの耳には聞こえていなかった。


角を曲がりロンの家が見えるとそこにいたのは


「なんて言ったけ?レン?ラン?あーそうそう


 ロンだ。」


ロンが崩れた家の瓦礫の上に立っていた。


アランは目の前の光景に驚きを隠せなかった。


「おい、ロンそこは危ないから早く非難しよぜ、な?」


震えた手をロンの肩へと伸ばしていくとロンがこちらを向きその手を弾いた。


「この私に気やすく触れるな人間風情が。」


聞こえた声はいつも聞いていたロンの声とは違く低い声が聞こえた。


「なんだよ、ロン。ふざけていないで早く非難するぞ。」


ロンは口元に手を当て何かを考えているようだった。


「あー、ロンというのはこの体のことか。そして貴様は、確か小僧の記憶の中ではアランといったかな?」


ロンは、まるで忘れていた記憶を思い出したかのような、何年もあっていなかったかのような反応で答えた。


「さっきから何言ってるんだよ、ロン。」


ロンは眉間にしわを寄せると


「ロン、ロンと先ほどから騒がしい。伏して聞くがよい、我が名は総裁ハーゲンティである。」


そういうとロンの体は宙に浮き、背中からは体長よりの二倍近くある翼を広げその頭には力強い角、目は赤く輝いていた。


あたりには禍々しい空気が漂っていた。


「あいつ、宿主と本契約を結びやがったな。」


フラウロスは半ば嬉しそうに答えた。


「おい、ロン。悪魔と何を契約したんだよ。」


アランは、ロンが悪魔に変わったことにまだ信じていなかった。信じたくなかった。


「我が名はハーゲンティと言ったであろう。まさか契約のことを聞いてくるとはな、これから殺すんだ


冥土の土産に教えてやろう。」


ハーゲンティは翼を折りたたみ地面に立つとロン近づいたところから喋り始めた。


「この子供に宿ったのは、前の宿主にしていた牛が死んだ後だ。なぜか知りませんが、気づいたら私の魂    が本に移動していました。


その本はこの子供の持ち物だったようで、この子供は知識を求めていました。


そこで私は、子供に知識を与える代わりに私を解放してくれるように契約を提示しましたところ、この子供は即座に答えてくれましよ。


契約すると。


そうして解放されると私は、即座にこの子供の体を奪ってやりました。」


アランの顔にはまるで生気がなかった。魂が抜けてしまったかのように。


「体を奪うとき、ロンと言いましたっけ?必死に助けを求めてましたよ。


助けて~アラン助けて~、と」


ハーゲンティは馬鹿にするように助けを求めるときだけロンの声をまねて見せた。


「とても滑稽でしたよ。ハッハッハ。」


ハーゲンティは、顔を空に向けて笑った。


するとアランは立ち上がり


「黙れ。」


そう小さな声で言った。


「うん?何か言ったか?」


笑みが残った顔を前に突き出した


「黙れといってるんだよ!!!」


アランはハーゲンティの顔に向かい拳を突き出し、顔にあたる瞬間


「アランやめて!!」


ハーゲンティはロンの声を使って拳を止めた。


「ロン?」


我に返ったアランは拳を止めると次の瞬間ハーゲンティに頬を殴られ数メートル体が吹き飛んだ。


吹き飛んだアランは、痛さで悶えた


「お困りなら力を貸してやろうか?」


フラウロスは、そう聞いてきた。


「お前の力なんか借りるもんか。」


アランはフラウロスの申し出を断った。


「あいつんか助けるんじゃなかったぜ。下手したらこいつが死んじまう。」


フラウロスはそうつぶやいた。


「あいつって誰だよ。」


アランは痛みを我慢しながら立ち上がると、フラウロスに聞いた。


「ハーゲンティのやつだよ。牛にあった魂をお前を助けに来たロンの持っていた本に移してやったのさ。」


残念そうにつぶやくフラウロスに怒りの目を向けるアラン


「お前がやったのか?!ロンに悪魔を送ったのはお前なのか?!」


「ああ、そうだとも。俺がやったんだよ。」


フラウロスは笑いをこらえながら言った。


 俺が、森なんかに行かなければハーゲンティに合わずに済んだかもしれない。


 俺が、フラウロスの言葉に耳を傾けなければ、家族が死ぬことがなかったかもしれない。


 俺が、フラウロスなんか見つけなければ、ロンが死ぬことは無かったかもしれない。


アランは心の中で自分のことを攻め続けた。


自分のせいでロンと家族を殺してしまったと。


「フラウロス、お前ら悪魔はどうして人間の体を欲しがる?」


「動ける快適な体が欲しいからな。」


「悪魔全員がそうするのか?」


「よほどのもの好きでない限り人の体を奪うだろうな。」


「人間についた悪魔を取り除くにはどうすればいい?」


「人間じゃないにしろ、悪魔を取り除くには悪魔が宿っているもの、俺だったら宝玉とかハーゲンティだったら本っだな。それを、別の人間に取りつかせるか、宿主を殺すかだな。」


アランとフラウロスは二人で一方的な質問をしていた。


ハーゲンティからはアラン一人で何かを喋っているように見えた。


「何を一人で喋っているんだ。吹き飛ばされて可笑しくなったかな。」


アランは自分の心の中で何かを決意した。


「フラウロス。」


アランは、顔を上げた


「あ?なんだよ」


アランは迷いがない真っすぐな信念を感じさせる目をしていた。


今までのアランなら、絶対出なかった一言が今回のロンの出来事を気に心を決めた


「俺と契約しろ!!」

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