第二章 フランスパンは魔剣?

第1話『特製オニオングラタンスープ』

 フランツと名付けた、僕だけの……僕だけが扱える、 知性のある武器インテリジェンス・ウェポンのフランスパンの魔剣。


 多分、彼?? のお陰で僕は生きながらえたし……これからも冒険者を続けられるようになった。彼の分身であるパンでお腹いっぱいになったんだもん。出来る事なら、恩返し?? 的なことはしてあげたい。


 とりあえず、久しぶりにお腹いっぱい食べたお陰で眠くなり……フランツが見張り番をしてくれることになって、僕は久しぶりにぐっすり寝れた。


 寝起きもスッキリ! やっぱり、ご飯って大事だ。


 だ・け・ど!



「……良い匂い!」



 起きたら起きたで、また良い匂いがした。



【おー? マスター、おはようさん】



 フランツが、何かしていた。


 火は昨夜、僕が魔除けも兼ねてそのままにしていた焚き火の前で……言うか、上??


 何か炊き出しのようなことをしていた。


 フランツには手足がない代わりに、思念体という特殊な技能スキルを使って目に見えない手足を装備しているらしい。僕には、僕の装備者としてのレベルが上がれば見えるそうだ。今はまだ2なんだって。



「おはよう、フランツ……良い匂いだけど」


【おん。朝からフランスパンは、ちょぉ、あんさんの胃袋に刺激強い思ってな? 代わりと言っちゃなんやけど、スープ作ってん】


「す、スープ?? 材料とかは??」


【安心しぃ? マスターの所持品をちょぉ、失敬した以外は森ん中の食材使ってん】


「そ……そうなんだ??」



 たしかに、昨夜フランツからは炊事担当するから持っている食材を使わせて欲しいと言われたような……。お腹いっぱいで寝ぼけてたから、適当な返事したかもだけど。


 鍋の中身を見ると、茶色のスープに何か野菜が入っていた。野草とかじゃなくて、薄く切った柔らかそうな何か。



【フランツ特製、オニオンスープや。これに、昨夜残したパンとチーズを】



 思念体の手を使い、またパンにチーズを乗せたものを火で炙る。それをくれるかなと思いきや……マグカップに入れたスープの中に沈めた!!?



「フランツ!? せっかくのパンが!!?」


【騙されたと思って食ってみぃ? 美味いで??】


「……これも、異世界の知識??」


【おん。オニオングラタンスープ言うんや】



 びっくりしたけど、こう言う料理みたい。まだ一品しか食べていないけど、フランツのご飯は美味しいから……ゆっくりと、一緒に渡されたスプーンでスープをすくう。口に入れる。


 途端、物凄い美味しい味が口いっぱいに広がっていった!!?



「……お……おいひい!!?」



 スープは少しとろっとしてて。野菜の正体は玉ねぎだった。適当に余ったものを魔法鞄マジックバックに入れてたから、腐ってなかったもんなぁ。それがシャキシャキどころか、とろっと甘くて香ばしくて……。


 夢中で飲んでたら、上のパンとチーズがスープに混ざる感じになっていた。スプーンを使うと、グチャッとなるが……スープの美味しさを吸ったパンが美味しそうに見えた。


 迷わず口に入れると……パンなのに、パンの味もスープの味も濃い!! それにチーズが加わると……トロトロ部分が高まった気がした!!



【美味いやろ? ワイのパンがちょいちょい使われる、人気の洋食なんや!】


「……よーしょく??」


【他国の料理とかいろんな意味があるんや。ワイにインプットされとる知識にはそーあんねん】


「そうなんだ?」


【材料集まったら、もっと栄養あるもの食わせたる!!】


「お願いします!!」



 ということで、僕のお腹が満足したら一緒に片付けしながら、これからの打ち合わせだ。



【まず、当面の資金やけどそれはなんとかなる】


「なんで??」


【マスターが、あのダンジョンでワイを振るったやろ? 金目のもんになるアイテムとかはこっそりワイが異空間収納で、吸収しとったんや】



 ほい、ってフランツは僕の上に空間の切れ目を作り、そこから大量のアイテムを落としてきた。



「こ、これ全部!?」


【あのアホンダラ連中に持ってかれるよか、ええやろ? マスターの装備品っぽいもんにするんなら……これとこれとかは取っといて。あとはギルドで換金してもらおうや】


「う……うん」



 売る方のアイテム達は……僕の魔法鞄マジックバックとフランツの収納魔法の一部を繋げることで出し入れは決まった。


 片付けが終わってからは、僕はアイテムのひとつにあった緑の外套を羽織り、フランツも背負うことにした。



【ほな、いくで! マスターの冒険者としてのスタートや!!】


「うん!!」



 一番近いギルドまで、半日はかかるはずだったんだけど。


 気力も体力も回復してきた僕は……数時間で街に到着してしまったのだった。

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