69食目、二人になったカズトとレイラ

 カズトが双児宮の聖剣ジェミニの技術スキルによって二人になった事でレイラ以外、口をアングリと開け呆けている。レイラはというと笑うのを必死で我慢してる。


「「「ふ、二人になっている!」」」


 やっと驚きの声が出たのは、カズトが二人になってから数分後のことであった。

 二人目のカズトが唯一オリジナルと違う箇所は左手の甲に星座のジェミニを表すマークが刻まれてるって事だけだ。

 それ以外は姿だけではなく、声・仕草・癖………どれをとってもオリジナルと見分けがつかない程ソックリである。


「ぷっくすすす、私も最初見た時は驚いたわ」

「そっくりな人形ではないのですか?」


 この世界には、人間と瓜二つな人形を作製し使役する人形使役族ドールマスターという種族が存在する。

 でも、人形使いが作製した人形は関節がスムーズではなく、表情が変化しないので注意深く観察すれば人形とバレてしまう。

 だが、双児宮の聖剣ジェミニの技術スキルで生まれたもう一人のカズトは動きがスムーズで表情をオリジナルと同じく変化する。


「こいつも俺だよ?技術スキルを解除しない限り消えないし、遠距離に離れても活動出来る」

「「「そんな技術スキル………チート過ぎる」」」


 そんなにチートかな?


 自分を含めて二人しか分身を作れないけど………まぁ話してない双児宮の聖剣ジェミニの力はあるにはある。それは後で分かる事だ。


「二人目の俺はここに残り仕事をしてくれ。それとレイラはちょっとこちらに………」

「あっ………」


 カズトのオリジナルは聖剣エックスカリバーの片割れを鞘に納め右手をレイラの頭に置き、瞳を閉じる。そして、左手を何もない宙へ静止させ集中する。


「………よし、いくぞ!【完璧たる模倣人形パーフェクトドール】」


 カズトの左手にはレイラの瓜二つである人物の頭に触れている。

 間違いなく、レイラは二人になったのである。

 ただ、違うのは二人目のカズトと同じく左手の甲にジェミニのマークが描かれてるくらいだ。


「ほ、他の者も二人出来るとは凄まじい」

「まっ要は力の使い方だな。これも使い所を間違えば窮地に陥る事もあるからな」


 何もなくこんな技術スキルを使える訳ではない。ちゃんと双児宮の聖剣ジェミニにもリスクや制限がある。


 一つ目、技術スキル使用中は他の黄道十二宮シリーズは使用不可能になる。

 二つ目、片方が受けるダメージはもう片方も受ける。ただし、致死になるダメージは受けない。

 三つ目、技術スキル解除後のダメージは解除前のダメージの倍になる。

 ただし、解除前に回復を施せば問題はない。

 暗殺回避に使えると最初は思っていたが、二つ目のリスクにより断念してる。


「二人目のレイラには残って貰って、それで何時出発なんだ?」

「はい、先ずは城に戻り準備出来次第に出発となります」


 ここから城までだと、普通なら馬車で二日間程掛かる。

 ただし、王様には扉転移ドアープを付与してる魔道具を渡してるから一瞬で城へ行ける。


「王様、あの魔道具を使えば一瞬で戻れますが?」

「ふむ、そうじゃな………ビィト、馬車を城へ戻す者以外はここへ集合をさせろ。一瞬で城へ戻るぞ」


 王様は瞬時にカズトの提案が如何に有効か理解し、青龍隊隊長ビィトに指示を出した。

 地球と違い飛行機や自動車に電車等の物流が発展してないため、早く移動出来るならそれに越した事はない。時間は有限なんだから。


「陛下、隊員全員集まりました」


 隊列と敬礼をし王様の命令を待つ。無駄が無いキレイな隊列で、それだけで過酷な訓練………実践を経験してきてると伺える。


「よし、全員城へ帰還だ。準備出来次第にマーリンへ向かう。魔道具アーティファクト起動」


 王様が御守り型魔道具を起動させると個室の扉が光り直ぐに収束する。

 王様が先ず扉のノブを回し開けると、そこは城の玉座の間であった。

 全員扉を潜ると扉は閉まり、再び開くと城の広々とした廊下だ。

 魔道具が凄いと言うべきか、これを作製したミミが凄いと言うべきか?まぁ後者であろう。


「陛下、ただいま準備を致しますので少々お待ちを」


 ビィト率いる隊員達は準備するため玉座の間を退出する。おそらく2~3時間は掛かるだろうだから、今の内にアイテムボックスの整理や道具の整備をする。

 レイラはというと店の制服のまま来たせいで、自分の部屋へ着替えと二週間分の服を取りに行っている。女性はそういう準備には時間が掛かると聞くから気長に待ちますか。


「王様と王妃様は準備大丈夫ですか?」

「儂らは何時でも行けるよう準備をしてるもんじゃ」


 地球の各首相や王族・皇族が公務で各地に行くみたいなもんか?良くニュースで見たりしたが、けして顔には出さないが忙しくしておられたのを覚えている。


「カズトぉぉ~、どう似合ってるかしら?」

「………もちろん似合ってるよ」


 レイラが着替えから戻って来た。カズトはレイラを見た瞬間に目を奪われた。

 だって、レイラが着替えたドレスはチャイナドレスとはまた違う美しさがあるからだ。

 勇者冒険時に着用していたビキニアーマーより全然露出は控え目だ。

 胸の谷間は強調してるが、それだけだ。後は王族らしく所々に宝石や刺繍が散らばっている。

 ビキニアーマーの印象が強いせいかたまにレイラを王族と忘れる事がある。

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