SS7-3、女婬夢族ジブリールの居場所~魔神教会総本山~

 魔神教会教祖カノン、No0《愚者ザ・フール》、No21《世界ザ・ワールド》の三人に連れられ、転移魔法によって魔神教会の総本山に来ている。

 ここには出入り口は存在せず、転移魔法しか入る事が出来ないらしい。

 だから、総本山が何処にあるのか誰にも分からないらしい。

 場所を特定する探知魔法はあるが、総本山には探知魔法を無効化する反魔法の結界が張られ探知出来ないようになっている。

 総本山に来れるのは、教祖であるカノンと幹部に限られた信者だけという事だ。

 そして、当のジブリールも魔神教会の幹部になった事で、自動的に総本山へ来る転移魔法を、その身に宿した事になる。

 念じるだけで自由に総本山と転移するまでにいた箇所の転移が可能になる。


「ここは?一体?」

「ここが我ら魔神教会の総本山です。ここへ来る事が出来るのは、私と幹部》タロットナンバーズ》の者達だけ」

「ここが?いくら探しても今だに見付からなかったという」


 各国の冒険者ハンターギルドには、長年未達成の任務がある。

 そのどれもSランク以上で、もし達成したなら国から多額の報償金と男爵以上の爵位が陞爵される。

 その一つが、ここ魔神教会の総本山を探し出す事。

 日本でいうところの豊臣埋蔵金みたいなものだ。探しだせば、それだけで億万長者になれる。

 まさに冒険者ハンターぽい仕事といえよう。

 だけども、そう思うのは新人だけだ。神話に出てくるようなドラゴンとかエルダーウィッチとかの討伐よりは現実的な話だと思う者が多い。

 しかし、魔神教会の総本山の捜索もかなり現実離れと冒険者業を営んでいると、だんだんと理解してくる。


「まるで岩山をくり貫いて、その中に作ったような……………」


 見える範囲で見回る所々、岩肌が露出しており洞窟の中にいるような感覚だ。

 だけども、露出してる岩肌を良く見ると普通の岩ではない。

 魔法を使う者が見れば一目瞭然。この露出してる岩は、魔物モンスターの体の中にある魔石に似ている。というか、魔石そのものだ。

 だけど、こんなに大きい魔石なんてジブリールは聞いた事がないというか、全貌は分からないが……………これ程巨大な魔石を持っていた魔物モンスターがいたなら、世界そのものの驚異になっている。

 これ程巨大なら世界なんて簡単に壊せるはずだから。


「教祖である私もここがどうやって作られたのか、知らない。だけどね、これを倒したのは……………誰でも知ってる人よ。もちろん《恋人ラバーズ》も知ってるわよ」


 この魔石の持ち主である魔物モンスターを倒したのが誰でも知ってる人?

 それって一体誰なのか、ジブリールは考えるが思いつかない。


「これを倒したのは……………初代勇者」


 初代勇者………………この世界に最初に召還され英雄となった人物。

 名前や人物像等諸説あるが、明らかになってない。唯一分かってるのが、千年前に召還された実在の人物という事だけ。

 初代勇者によって、魔法や技術スキルの定義が定着され、勇者の召還システムを構築されたのだ。

 それに様々なギルドの基盤を作ったともされる。

 その多くの実績から長年語り継ぐられて来た。赤ん坊でさえ初代勇者の事を知ってると揶揄される程に。


「な!何で教祖様が知ってるのよ」

「本人から聞いたから」

「本人?ぷっはははは、そんな訳ないじゃない。初代勇者様は千年前の人間よ。もう生きてるはずないわ」


 人間が生きてられるのは、せいぜい百と十数年位だ。千年も生きられる種族なんて、森精族エルフ土精族ドワーフ、獣妖族の中の王達、樹精族ドライアド龍人族ドラゴノイド位だろうか。

 まぁ少数種族の中にもいるかもしれないが、それも挙げてはキリがない。


「実は生きていると言ったら?」

「そんな事あるわけ……………」


 教祖カノンの瞳に見詰められ、ジブリールもその瞳を覗いたら否定しようと言葉が出て来なくなった。

 一瞬でジブリールは悟った。この瞳はウソをついてないと。


「真の事ですな。初代勇者は生きておられます」


 教祖カノンの代わりに《愚者ザ・フール》が答えてくれた。


「何故知ってるのかって?それは我々の仲間なのですよ。そして我々と同じ幹部であやせられる」


 なに!初代勇者が魔神教会に所属しているだと!とんでもない事実が、世紀の大発見染みた真実が明らかになった。

 そういえば、初代勇者の活躍・実績は幼少の頃から伝え聞くが、初代勇者の引退後とか最後の時とかは誰も知らない。忽然と姿を消している。


「No8《正義ジャスティス》が、初代勇者の今現の立場になる」

「ほ、本当に初代勇者様が!」


 噂をしてると、あちらから本当に本人がやってきてしまった。

 国によって違うが、大抵貴族が住む街の中心地に初代勇者の黄金像が綺羅びらかに光り、凛々しく立っている。

 その黄金像とそっくりな姿で、まるで年を取ってない姿で、コツンコツンと歩いて来ると、教祖であるカノンの前で止まった。


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