SS7-1、女婬夢族ジブリールの居場所
カズトの料理を食べるだけ食べ、カズトの誘いを蹴ったジブリールは、そのままレストラン〝カズト〟から出て去って行った。
自分の故郷である魔族領に戻ろうとも、魔王様は既にカズト達の手によってもういない。つまり、魔人領にも居場所がないのだ。
力が全ての魔族領では、魔王様亡き今戻っても抵抗出来ずに殺されるか、奴隷みたくコキ使われて惨めに生きるか、知らない魔族の男の児を成すだけの機械と化すか、どれか一つしかない。
「居場所がないなら、私がその場所になろうか?」
「はっ?あんた誰よ」
古都から離れた街道を歩いていると、暗闇から突然人間?の少女が現れた。
赤髪で腰程あり、ジブリールよりも頭一つ分低い。
それにヒラヒラが着いた黒いドレスを着込んでいる。まるで何処かの貴族のご令嬢みたいだ。
その少女だけかと思いきや、いつの間にかもう二人程人間現れた。気配が全く感じなかった。
その女を挟む形で左側が長身の女で、美人というよりイケメン風な少し怖いお姉さんだ。
それに対して右側が紳士風な老人なのだが、武の達人みたく全く隙が見当たらない。三人とも人間?のはずなのだが、魔族である我にも強いと肌で感じる。
「我に何か用なの?真ん中の女は、勇者の気配がするし、意味分かんない」
「ふん、かろうじても魔族の端くれか……………いや、
「そうでないと困る。また探すのは面倒ですから」
この暗闇で上手く認識出来なかったが勇者らしき女の左腕を良く良く見ると、少女には似合わない
「わ、我の質問に答えなさい」
「先ずは自己紹介を致しましょう。私は、皇花音……………カノンと呼んでも良いわ。盾の勇者にて魔神教会教祖という立場でもある」
盾の勇者!それに、聞き間違いでないとしたら、カノンと名乗った女は、魔神教会……………教祖と言ったのか?!
魔神教会は、文字通りに魔物と魔人の神・魔神を信仰する組織らしい。
信者数は、全国に及び数千から数万と言われている。魔神教会の信者がいない国はないと言われる程なのだ。
ただし、その全容は謎に包まれており、どんな活動をしてるのか不明となっている。
犯罪にも手を染めているらしく、様々な犯罪ギルドにも精通してるとも言われる。
「儂は、魔神教会No0《
「ワタクシは、魔神教会No21《
「コイツは、あのNoに相応しいの。何度も説明したでしょ」
タロットナンバーズ!タロットは何の事か分からんが風の噂で聞いていた事がある。
本当に実在していなんて思いもしなかった!魔神教会の幹部じゃない。
そもそも胡散臭い組織で、噂程度しか聞いてなかったのに、それが我の前に現れるとは!
「自己紹介も済んだし、お主の質問に答えましょう。私達の仲間にならない?」
ニコリとカナンは微笑むが、その微笑が何とも気持ち悪い。
というよりは、その背後に悪魔が潜んでいるかの如く背筋が凍える感じがする。
「はん、何で我がそなた達の仲間にならんといけないの?」
敢えて強く見せようとするが、本当は早く逃げたくてしょうがない。どうにか逃げる算段を思案する。
我とて魔族のはしくれ。一人ならどうにでも逃げ仰せる自身はあるが、今回は部が悪い賭けになる。五分五分よりも低い確率だろう。
「……………復讐する気はないかしら。剣の勇者に………………その力をあなたに能えても良いわよ」
「復讐の力……………」
「あなたが敬う魔王とやらの復活も手助けしましょう」
「魔王様!本当にそんな事が!」
「ウソは言わないわ。私達は、そなたを利用し、そなたも私達を利用すれば良いだけのこと」
利用する、利用されるの関係か。魔族ぽい考えだ。魔族領から逃げたジブリールだけど、その考えには同意するよりは悦に浸る思いがある。
まぁ魔族に刷り込まれた本能といえよう。魔王様は例外だが、誰にも心を開かず、沸々と上へのしあがる隙を狙ってる。それが、魔族というものだ。
「……………良いでしょう。お前達の話に乗ってあげるわ」
逃げてばかりの人生だけど、久方ぶりに魔族として……………そして我の目的のために利用してあげるわ。精々、喉笛を噛みきられないよう注意する事ね。
「そう。良かったわ。断れたら、どうしようかと思ったもの。殺すしかないかと思っていたから」
その微笑みを止めろ!微笑んでるのに、怖くて鳥肌が立ってしょうがない。
「それで我はどうすれば、良いのかしら?」
「これを受け取るだけで良いの」
「これはカード?」
カナンから一枚のカード━━━━No6《
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