SS6-1、赤薔薇隊隊長ライラのスローライフ
退職の手続きは、すんなり通り翌日にレストラン〝カズト〟へとんぼ返りのはずだったが、何故か王様と王妃様までもが着いて来る事に。
王様と王妃様の護衛という名目で、私ライラと青龍隊という風魔法を得意とする騎士隊も一緒にお姉様ユニに着いて行く事になった。
けして、口に出さないが……………また、あの食事と温泉を味わえるなんて、ライラにとって正直ラッキーの何物でもない。内心ヨッシャーとガッツポーズをしている。
道中、盗賊や
夜営中も特に目立った魔物モンスターは出現せず、出ても角ウサギやスライム位でスルーしてる。
夜営中の食事は、基本的に干し肉や黒パンに薄味のスープが中心だ。
どれも味より保存が利くものばかり、それが普通の夜営や遠征中の食事となる。
レストラン〝カズト〟に着くまでの辛抱だと思えば、我慢出来るというものだ。
「隊長、目的地に到着致しました」
「分かった。馬車を邪魔にならないよう脇道に停めろ」
馬と馬車を従者に任せ、ユニとライラに青龍隊一同は王様王妃様と一緒にレストラン〝カズト〟に雪崩れ込んだ。
昼過ぎという事もあり、客は其ほど多くなく赤薔薇隊や王様王妃様に気付く者は、客の中にはいなかった。
ただし、カズトを含めた従業員全員気づいている。まぁ何度も来てるし、その威厳によって入店した途端に気付いた訳だ。
「お父様、お母様!いらっしゃいませ」
「我が愛しき娘、レイラよ。出迎えご苦労である。ちと、人数が多い故、部屋を用意してくれぬか」
王様王妃様は、レイラに個室へと案内された。部下達もそれに続くように着いて行き、お姉様ユニ はレストラン〝カズト〟の制服であるチャイナドレスへと着替えるため別室にと言ってたが、あれはカズトに会いに行ったに違いない。
私は、その間に温泉へと浸かるため先払いをし、先日の記憶を頼りに向かった。
「確かここよね」
何処の文字なのか読めはしないが、日本語の漢字で女と書いてある赤い暖簾が掛かってる部屋にたどり着いた。
暖簾を潜ると、そこは記憶違いでなければ脱衣場だ。まだ昼過ぎで温泉に浸かるのに早い時間帯だからか、着衣を入れる籠はほとんどうまっておらず、見た限り私以外だと二人の先客がいるみたいだ。
「私以外にも温泉へ入りに来てる人がいるんですね。それに、また温泉に入れるなんてラッキーです」
ガラガラとガラス戸を開けると、湯気が立ち上ぼり温泉独特の硫黄臭が鼻に付く。
チャプンと湯船に浸かり、護衛の疲れを思う存分取ろうと、足を伸ばしリラックスしていた。
ライラが浸かってる箇所から数m先に湯気に紛れて人影が二人分見える。おそらく、先客の人だろう。
あちらもライラに気付いたようで、こちらに近寄って来る。
視認出来る範囲まで近寄って来て初めて相手が人間でない事が分かった。
人間であるなら絶対にあってはいけないもの。額に角らしき物体が生えていた。
「強き者が入って来たと思えば、人間であったか。のぉ、そこの人間、妾と一騎討ちせぬか?」
「姫様、いきなり一騎討ちと申されても、相手方に迷惑です。強き者が現れる度に戦おうとするクセ…………どうにかなりませんか?」
今は、湯船の中で丸腰だ。アイテムボックスに武器防具一式揃ってるが、ここでは何故か上手く発動しない。
勇者カズト様には無かった、姫様と呼ばれる人間ならざる者から放たれる威圧感によって、ガクガクブルブルと震えている。
私の本能が『早く逃げろ』と訴え掛けて来てる。
ただし、私のプライドがそれを許さない。騎士たる者、いくら相手が強者でも一歩も引いてならぬと。
「良いでないか。
「それは昔の事です。今でも本能的に好戦的な者はいますが、姫様程ではありません」
「それは何か?妾が戦闘狂であるというのか?」
「そうでありませんか。そのお陰で、私が何度尻拭いをしたことか。でもまぁ、
「まぁの。ここの飯は美味しいし、温泉は最高じゃし……………それに、戦う前から絶対に敵わぬと感じたからの」
「姫様がそこまで言うなんて、流石は
目の前の二人が話してる内に、プライドを殴り捨て音を立てずに逃げようとするが………………。
「そこの人間、一騎討ちは後にして今は温泉を一緒に楽しもうぞ」
腕を捕まれ少女とは、思えない程の腕力で抗う術はなく、引き戻された。
いくら、ライラが人間であっても赤薔薇隊隊長なのだ。
いくら種族の力量差があっても、ここまでの差があるとはライラ自身思いたくない。
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