4食目、プロローグ4

「ふう、王様が用意してくれた空き家ってここか?」


 地図を確認しながら旧都を歩く事30分、それらしき家屋が見えてきた。レンガ作りで煙突があり、台風がきても大丈夫そうな立派な作りだ。

 中に入ると、ずっとほったらかしになっていたのだろう。壊れた家具やらが散乱しており、ホコリやクモの巣がそこらじゅうにある悲惨な感じだ。


「ミミ先生、どうぞやっちゃってください」

「むぅ、めんどいけど……………」


 カズトの前にミミが出て杖を『こんっこん』とテンポ良く何回か空き家の床を叩いた。

 そうすると、不思議な出来事が起きたのだ。壊れた家具やヒビ割れた床や壁等が自我でも持ってるかのように自動で治り、ホコリやクモの巣は跡方もなくなくなり新築同然となっていた。

 ただ、それだけでは終わらないのが勇者ご一行である。キッチンを見渡すとアグドには絶対存在しない物が鎮座していた。

 それは…………オーブンレンジ、冷蔵庫、炊飯器等のキッチン家電があったのだ。アグドにも魔道具は存在するが魔法使いしか利用出来ず、それに加え効率が悪すぎるのだ。なので、勇者ご一行の旅では一度も利用した事がない。

 話は戻るが、このキッチン家電らはミミがカズトの記憶を読み取り、カズトが理想と感じる"店"へと作り変えたらしいのだ。その副産物としてキッチン家電が生成されたという訳だ。

 それに加え外から見た外見と内装の広さが違う。外見だとせいぜい二階なのだが、内装は一階から見ても明らかに広さが段違いである。

 それに、少し中を探検してみて分かった。階数は五階まででミミによると空間魔法の応用らしい。必要に応じてさらに増やせるとのこと、いや~凄すぎて言葉が出ません。

 そういや、ミミの事を詳しく紹介してなかった気がする。

 ミミの本名は…………ミミ・オキニス、勇者ご一行として旅を出る前は王都にある魔法研究所の所長をしていたんだそうだ。まぁ本人によると自分の研究をしていたらいつの間にか所長になっていたらしい。まぁ天才というのはミミみたいな者の事を言うのだろう。

 それなのに、自分の研究を放り投げる形で何故俺達と同行を選んだのかはどうしても話してくれないから分からず仕舞いだ。


「相変わらず、ミミの魔法は凄いわね」

「私は攻撃魔法なら得意なんですけど、こういう魔法はてんでダメでして」


 うん、それは分かってるからここで攻撃魔法は放たないでね。店が壊れるから。

 ドロシーは料理に関してはてんでダメで、前に作ろうとした時、屋外で点火する際に最下級火魔法である火の球ファイヤーボールを唱えればいいのに、上級火魔法である火炎扇風ファイヤートルネードを唱え、その辺りの森一帯を炎の海へと変えた事件がある。

 攻撃魔法に関してはエキスパートで知識に関しては全種類の魔法を網羅してるらしい。だが、攻撃魔法しか適性がないらしく使用出来ないみたいだ。宝の持ち腐れみたいで勿体ない気がする。

 次いでに、ドロシーの事を詳しく紹介しようと思う。

 本名はドロシー・オーロット、王都にある魔法学校を主席で卒業したところに勇者ご一行メンバーの白羽の矢が立ったらしい。

 そして、ドロシーにとっても他の所へ就職するよりも勇者と一緒に魔王討伐の旅に出る方が有意義であり名誉の事なのである。


「ここが私達の…………これから住む所であり働く場所なのね」


 キラキラしたような瞳で言うレイラを含めた計四人でここに住み働く事になる。

 ここにいる全員が城に残ると思っていたが、レイラの希望でカズトが開店するレストランに働く事を王様は渋々了承した次第である。レイラを溺愛してる王様は本当なら王城に居て欲しいと思っていたが、娘の願いを最優先した結果といえよう。

 ということで、まだ準備に時間は掛かるが勇者カズト、ミミ、ドロシー、レイラの四人でレストランを経営していく事になった。

 うん?一人足りないって?あぁ、勇者ご一行は全員で五人いる。最後の一人は…………もう一人の男であるゴン・アレキサンダーという暑苦しい戦闘バカてある。

 こいつは何というか一人で旅に出てしまって、今は何処にいるか不明なのだ。近くにきたら俺の店に顔を出すと言ってたけど、まぁゴンのタフさなら死なないだろうな。その内、俺の店に必ず来ると確信してる。

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