第85話 お客様の印象って変わりがち

まえがき

まだまだ暑い日が続きますので、お身体に気をつけて仕事や勉強等頑張っていきましょう。私も更新を頑張っていく所存であります。





昼食休憩が終わり、可憐さんは同級生たちのもとへ向かっていった。

その後、午後のプログラムも恙無く進行し、無事に体育祭は終了を迎えた。

ちなみに午後は、可憐さんは同級生たちと仲良く会話したりプログラムを見ながら応援したりと、こちらにやってくることはなかった。こう言うと、可憐さんをガン見していたように思われるかもしれないが、決して可憐さんをストーカーの如くガン見していたわけではない。偶然視界に入っていただけである。



「それじゃあ帰りますか。お姉さんはどうやって来たんですか?」


保護者たちの流れに従って校門へと向かう。


「電車と徒歩だよ。それと、帰るのはちょっとだけ待ってもらっていい?可憐が校門から出てくるのを見てから帰ろう」


校門を出て、帰り道の方向へと向かわずに、真正面向かって歩き出したお姉さんに従って歩く。


「え?多分同級生と一緒に帰るか、一人で帰るんじゃ」


「まぁまぁ、とりあえずスタンバイしとこう」


そう言って、校門から少し離れた道の角に隠れさせ、流れるように校門付近を眺めるこの状況だけならば完全にストーカーみたいで通報されたら負ける。しかし、今回はお姉さんと一緒であり、そのときは共犯となるのでセーフだ。…セーフじゃないな。



「お、出てきたよ」


現場を抑えられた場合の、否定の文言を考えていると、お姉さんに軽く肩をたたかれた。

定まっていなかった視線を校門に向けると可憐さんが出てきた。


「一人ですね」


「辺りを見渡してるね」


遠目からでも分かるレベルで、その場を一回転…二回転…三回転してから固まった。

その様にお姉さんはクスッと声を漏らした。


「可憐、私たちを探してるんだよ」


「なぜです?」


「一緒に帰るためだよ」


「俺は全然大丈夫ですけど、クラスメイトの子たちも一緒に帰りたいんじゃ」


「可憐はお姉ちゃん子だからね。クラスメイトよりもと帰りたいんだよ」


「じゃあ、俺はお先に失礼します」


そう言って立ちあがろうとする。


「ごめんごめん、可憐は私たちと帰りたいんだよ」



そう言われて、ガシッと右腕を掴まれその場に留まることを強制される。


「見て、遠目からでも分かるくらい落ち込んでるよ」


「みたいですね。その様を隠れて覗きながらはしゃいでるお姉さんは、可憐さんの立場からしたら中々最悪なのでは」



校門から出てきた生徒たちとの比較すると、あからさまに歩くペースが遅かった。

頭も下がってるように見え、隠れて眺めていることを申し訳なく思う。


「それじゃあ、後ろからこっそり抱きしめてあげようか。下げてたから上げると、より可愛い可憐が見られるからね」


そういうと、人混みを盾にしながら歩き出した。

楽しそうに可憐さんを追う姿は、夏の夜にカブトムシを捕まえようとする子どもみたいだ。

それと同時に、仲のいい姉妹っていいなと二人の後ろ姿を見ながら思う。





「きゃっ…お姉ちゃん…と亮さん。…てっきり帰ったとばかり」



徐々に声のトーンが上がっていく可憐さんを見て俺とお姉さんがピクピクと肩を震わせる。


「二人して何で笑ってるんですか?!私に何かついてますか?」


そう言って自身の体を見て触ってと確認する可憐さん。

声のトーンについて自覚がないらしい。



「「何もおかしなところはないよ」」


「絶対ありますよね?!」


俺とお姉さんの発言が見事に被ったため、可憐さんは怪訝そうに突っ込んだ。







「あの、お姉ちゃんも亮さんも、この後何もなければ家で食事でも」


「私はそのつもりで今日の夕飯を作り置きしなかったよ」


「それ、もともと作ってなかったんじゃないですか?…俺も大丈夫だよ」


声高らかに、自慢顔で発言したお姉さんにツッコミを入れつつ返答する。









というわけで、可憐さん宅へ寄る前に買い出しを済ませにスーパーへ。


以前この三人でスーパーに来た日のことが、昨日のことのように思える。


あの頃の雰囲気と比べたら、可憐さんも一般市民感出てきたよな。

見た目とかは変わらないのに、雰囲気が変わったのか?それとも、内面を知ったことによる印象の変化のせいだろうか。



3割引きの肉や野菜をカゴに入れてる可憐さんを見ながらそんなことを思う。

それを見て関心するお姉さん。お姉さんは会った時から一般市民感がちょっと出てたっけ。最初に学生時代のお姉さんに会ってたら印象も違ったかもしれないが、今のお姉さんが親しみやすいのでありがたい。それに、もし学生時代に出会っていたら仲良くなんてなれなかっただろう。きっとアウトオブ眼中っていうやつだっただろう。








「可憐さん疲れただろうし休んでていいのに」


「いえいえ、お呼びしたのは私ですから」


「今日くらい料理は私に任せてくれてもいいんだよ?」


「お姉ちゃんはちょっと心配だから座ってて」



買い物を済ませてマンションに到着し、食材をキッチンに並べた後。

三人ともが自我を出し合った結果、三人ともがキッチンに。


というわけで、渋々作業を分担することになったのだが、主食であるお米をお姉さんが炊くことは多数決により決定した。

最初は納得いかないようだったが、ということを強調したら納得したみたいだった。…少しばかりチョロい気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る