無能扱いされたので美少女とスローライフ送ります

JoJo

第1話 勇者パーティ追放

 俺はエリック・ボネット。


 とは言っても俺は前世では日本という国では社会不適合社の烙印を押された落ちこぼれだ。


 異世界転生して少しでも変われるかと思って日々努力を積み重ね、勇者パーティでは魔法剣士までしていたのだが突然、勇者から呼び出しをくらったのだ。


 「なぁエリック。お前さぁ、何で呼ばれたか分かる?」


 勇者パーティの勇者でもあるアンソニーは俺を睨みながら問い詰める。


 「何って、長い髪を切ったからか?」


 「それだけなわけないだろ。このパーティに入ってからお前は全然何も変わってない上に足しか引っ張ってないじゃねぇかよ。魔法剣士だから少しは期待してたのに魔力も少なく剣の才能もからっきしない。そんな奴をいつまでもこの勇者パーティにいてもらうわけにもいかないのでな」


 突然そんなことを言われたことで状況が整理できずにいた。


 「アンソニー達が村を襲う魔物のボスを倒してるのに対して俺だって犠牲者が増えないよう村人を守ってたじゃないか!難癖つけるのも……」


 「黙れ、強姦魔!」


 俺はアンソニーに反論すると思わぬ言葉で怒鳴り散らされた。


 「何の話だよ!俺はそんなこと……」


 「この前アンバーが泣きながら俺の部屋に駆けつけてきたんだぞ!」


 アンバーとは俺の恋人であり、勇者アンソニーのパーティメンバーの一員だ。


 回復魔法を中心に担当している魔法使いで、攻撃魔法は俺が代わりに行なっており、アンバーから回復魔法を教わってはいるのだが、初級魔法程度しか習得できなかった。


 アンバーは誰にでも分け隔てなく優しく接してくれる聖女様のような存在だと思っていた。


 そんなアンソニーの横にはアンバーがいてゴミを見るかのような目で俺を睨みつける。当然、一緒にいた仲間達も同様だ。


 「昨日、エリックは酒に酔った勢いで私の服を不敵な笑みを浮かべながら脱がそうと……だから私は必死になってアンソニーの所へ行って助けを求めたの」


 これは何かの間違いだ。


 そもそも俺は昨日酒なんて飲んでいないしアンバーと食事すら取っていない。


 「そんなのデタラメだ!俺は昨日、1人で飯を食ってたし酒なんて飲んでない!嘘だと思うなら宿屋の店主にでも聞いて……」


 「強姦魔の言葉なんかに誰も耳は貸さないよ。何せ俺は勇者だからな」


 その時俺は悟った。


 アンソニーとアンバーは前からオレを陥れようと計画を立てていたのだろう。


 でも何故?俺はあの二人が不愉快になることをした覚えはない。


 俺が何をしたって言うんだ?恨まれる理由なんてない。


 日本にいた時からそうだ。


 社会に出れば上司からダメ出しを受ける毎日、ミスした理由を説明してもそんなの理由にならないと言われる。


 何で異世界転生してまでこんな思いをしなければならない?この世界で転生してからは日本にいた頃より努力もした。


 異世界では努力の結果、信頼だって勝ち取った。


 それが今日、ここで砕け散る。


 「というわけでエリック、お前を衛兵に突き出したくはない。勇者パーティに強姦魔が出たと知れ渡れば俺の評判もガタ落ちになるからな」


 俺はアンソニーから解雇通告をされた。


 「分かったよ……俺は自分から辞めた。それでいいんだろ?」


 追放者ではよくあるテンプレだ。


 それにまんまと引っかかる俺って本当に馬鹿だな。


 「物分かりが良くて助かるよ。それと、装備品は置いて行けよな。あれは国から勇者パーティの為にと支給された物だ。強姦魔には相応しくない」


 「いいさ、俺はどこか辺境の地でお前らが無様を晒すことを祈ってやるよ!」


 俺はそう吐き捨てながら勇者パーティを抜けた。


 とても悔しかった。


 恋人や仲間と思ってた人達からは裏切られ、装備品まで取り上げられる始末。


 日本にいた頃と同じだ。


 魔法剣士の役職まで上り詰めたのに冤罪を着せられパーティを追放され、無職になったんだから。


 どう頑張ってもいつも裏目に出て、ことごとく責められ、自尊心を失い働く意欲すらなくなってしまう。


 アンソニーからしたら負け犬の遠吠えにしか聞こえなかったのか俺の悪口なんか一向に気にならなかったのだろう。


 流石に丸腰で出ていくのは危ないと思った俺は武器屋で安い剣を購入し、街を出て行った。


 街の外に出ればいつ魔物や盗賊、魔人族に襲われたっておかしくはない。


 勇者パーティにいた頃、野宿をするにしても交代で見張りをしていたからそれなりに安全だったけど今は違う。


 自分で何もかもしなければいけないのだ。


 「俺にもっと力があれば……」


 そうだ、俺には勇者パーティで活躍するには実力が足りなかった。


 実力が足りなかったから俺は追い出されこんな生活を強いられるようになった。


 全部俺の所為だ。


 日本にいた頃から何も変わらない。


 人生はクソゲーであり、いつもハードモードを強いられる。


 まさか異世界に来てまでハードモードしか選択肢がないクソゲーだなんて誰が想像しただろうか。


 俺はひたすら荒野を彷徨い続けるだけだった。

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