第81話

里へと辿り着き、俺はロンダルトさん宅へと、お邪魔することに。


先王様が里長より俺を招きたい旨の言伝てを伝えてきたが、断った。

正直、昨日の対応について、俺は良い感情は持っていない。


先王様も困ったように伝えてきたため、俺の気持ちは察しているみたいだな。

だいたい戦士団へ里長の身内が1人もいないのが気に入らない。


まぁ、鎧や武具が引き継がれてないのかと思っていたのだが…


「ロンダルト。

 今の里長は、やはり降りて貰い、分家のお前が皆を率いた方が良くないか?」との声がさ。


「よせ。

 特に今は里の者以外にも人が居るのだから、里の問題を口にするんじゃない」

静かにロンダルトさんが叱責を。


「ぬぅ、分かった、悪かったよ。

 だがな、我らより優れた鎧を持っている里長たちが、なにもしない…

 正直、みなの不満が溜まっていることだけは、知っていてくれ」


そう告げた男が、ロンダルトさんから離れて行く。


戦う術がないのかと思ったのだが、あったのか…

そう言えば…燐国にて攻められた際に、里長と嫡男は妻たちに護衛されていたってたな。


なんで護衛?

いや、指揮官を護衛する者が居るのは当然だが、妻が護衛って…


待てよ?

攻められた時に里長と嫡男が、呪われて倒れたんだよな。

じゃぁ、その後の指揮は誰が執ったんだ?


っと、今、ここで聞くのは拙いだろう。

帰ってから尋ねてみるかね。


戦士団が解散し、去って行く。

先王様たちは里長の…


「のうダリル。

 妾とレンドレンは、そちらで世話になれんかや?」ってなことを。


したらな教会騎士隊長が慌てて。

「教皇様、それでは角が立ちますゆえ、どうかご一考を」ってね。


なんか知らんが…

「なにがあったか知らんが…里長へ言っといてくれ。


 俺の連れに無礼を働くなら、里の民へ、里長が無礼ゆえ討伐中止にて引き上げるし、卵採取も断るって、告げてから帰るってたてさ。


 俺は使節団に混じって来てるが、完全に個人だ。

 フリーランサーにて、何処にも属してないからな。


 当然だが、言ったことを行っても、何も問題ないかんな。


 あと、俺には全ての毒は効かんし、睡眠中であろうが近付く者を察することが可能だ。

 そして俺は、ディサピィルトーカー。

 この意味を、よく考えろって言っといてくれや」


なにが有ったかは聞かないが、何かあったのだろう。

教皇様が、にんまりってな。


先王様が、俺を悪戯坊主みたいに見て苦笑いをな。

だが知らん!

ハッキリ言って、かなり気に入らんかんな、アヤツ。


ロンダルトさんは会話に参加せずに知らん顔。


騎士隊長が困ったようにさ。

「正直、ダリル殿がロンダルト殿の所で世話になっていることに対し、苦言をですな」


「知らん!


 俺は卵採取を請け負ったが、それ以外は契約外だ。

 むろん違約金は貰う。


 まぁ、討伐報酬はロンダルトさんより、鎧と武具および持て成しにて請け負ったが、里長からは一切受け取ってない。


 部外者は引っ込んでろっとけ」


敵対するならば、それでも良い。

排除するまでだ。

伊達に最前線を、駆けずり回ってる訳じゃねぇかんな。


喧嘩売るなら、チップは己の命。

覚悟があろうかなからうが、それが最前線で生きる者の習いだ。


むろん、じゃれ合い程度ならば、命の遣り取りにはならんが、1線を越えたら別だ。


この度は、越えてはならぬ1線を、遊びのように彷徨いてんだが…バカか?

可燃物や油の前で、火遊びしてるようなものなんだがな。

大火傷で済めば良いがね。


俺の雰囲気が剣呑になり、完全に最前線にて死線を潜った戦士のものに変わったことで、騎士隊長も俺が激昂していると覚ったようだ。


っか、この騎士隊長…鈍くね?


それからは皆と別れロンダルト邸へと。


ああ、そうそう、使節団からの討伐参加は禁止っといた。

完全に足で纏いだし、あの装備では死にに行くようなものだからな。


ロンダルトさんと並んで家路へと。

したらロンダルトさんが苦笑いしつつな。


「ダリル、やってくれたな」ってね。

だからさ。

「なんのことだ?」って惚けたよ。


「あの里人の往来が多い場所で、堂々と里長への苦言を弄すれば、直ぐ様、里中に広まるだろうに」


そんなことを言うからさ。


「あらら?

 そうだったんだな。

 気付かなかったわ」って惚けておいた。


困ったヤツっう感じで苦笑いされたが、少しは灸を据えねば懲りんだろうしな。


なんで馬鹿ってさ、蔓延るんだろね?

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