第71話

非常に美味い晩餐を終え風呂へ。

んっ?

誰だっ!最後の晩餐ってんのわっ!

最高の晩餐だわいっ!

縁起でもないことを言うなやぁっ!


って、俺、誰に突っ込んでんだろ?

はて?


しかし昨日も入ったが、温泉は非常に良い。

疲れが取れリフレッシュするからな。


俺が特に気に入ったのが露天風呂。

っても、露天風呂も複数ある訳で…


スタンダードなのも、ゆるりと寛げるが、特殊なのも良い。

特に…


「ロンダルトさん。

 この風呂、やはり最高っす!」

思わず、グッジョブサインを。


あっと、昨日、グッジョブサインがフォリゾン・エルフでも同じ意味合いだと確認してるからな。


これって案外危険なのよ。

遠方部族にてグッジョブすると戦争になったそうな。


そら、その地域では無条件の宣戦布告を示すサインだからな。

男は虐殺、女子供は拐うぞってな。


これは極端な例だけど、ハンドサインは危険だから、知らない相手には気を付けて使わないとダメなんだわ。


まぁ、ロンダルトさんも微笑んで、グッジョブサイン返してるから良いんだけどさ。


「しかし…盛り込みましたねぇ」


「前から考えていたんだよ。

 以前の里では温泉が出なくて試せなかったのだが、幸いなことに、この地では湧いているからね」っと。


ロンダルトさんは、以前から露天風呂の温泉へ入るのが夢だったそうな。


それは叶った訳だが、以前からの薬草風呂も棄てがたい。


さらに泉質異なる源泉が5つあり、それぞれの露天風呂も用意したが…薬草湯と5つの温泉を合わせたら…


うん、この風呂やね。

炭酸泉も混ざり、さらに泡風呂と吹き出し湯の機能も存在。

弱電流が流れているから、少々ピリピリするが、もう弛緩、筋肉っか肉体が弛緩。


疲れが取れるっーか、ふにゃふにゃっす。


リフレッシュしての風呂上がり。

今日はミックスフルーツミルクにて風呂上がりの儀式をば。


んっぐんぐんぐぐぐっ。


美味い、ビールでもう1杯!

って思ったら、にこやかにビールを差し出すロンダルトさん。


分かってらっしゃる。

いざっ!


んっぐっんぐっんぐっぐっ。

ゴキュ、ゴキュっ、ゴキュキュキュ。

ぷっふぅわぁ~


「こら堪らんわい!

 もう1杯…いや、止めときます」

「そ、そう、そうだな。

 止めておこうか」


うん、ミーシャちゃん。

≪正座説教いりますか?≫っう看板を仕舞おうか。


ロンダルトさんと2人して青くなりましたとさ。


その晩は客室へ泊めていただき翌朝。

サマンサさんの朝食をいただいた後で、ロンダルト邸を出る。


ミーシャちゃんは、まだ寝てるから見送りはなしだ。

起きたら怒るかな?


「お世話になりました」ったらな。

「違うだろ」って、ロンダルトさん。


「そうね、帰って来るんですもの、行って来ます、よね」

確かに言われれば…


っかさぁ。

「2人とも、俺を受け入れすぎじゃね?」

思わずな。


「ふっ、それこそ、今更だな。

 私達には息子は居らんが、なんと言うか…」

「そうね、もう1人子供ができた気分かしら?」


2人がにこやかにさ。

なんで他人に、そこまで気を許せるかなぁ。


「いやなに、それだけ精霊に好かれる者が悪人である筈がなかろ」

「私達エルフは精霊との親和性が高いから、精霊の存在を感じられるのよ。

 そうねぇ…

 砂糖に群がる蟻のように、精霊が群がってるわよ、ダリル君」


いや、もっとマシな例えはないんかぁっ!


「そ、そうなんですね…」

顔が引き攣るのが分かる。

いや、精霊に群がられてるって…なに?


「まぁ害はあるまい。

 しかしマジックキャスターなれば絶大なメリットとなるのだが…いやはや、もったいないことだ」


まぁ、適正がないからな。

知らんけど。


なにせ適正を調べるにも金が要る。

この国へ来た当初は、サイガと彼女の部隊連中が持っていた小銭が、全財産だった。

適正を受ける金などある筈がないわな。


しばらくは狩人として暮らしたが、フリーランサーの制度を知ってからは斥候職兼務の狩人さまだ。


それで食え始めれば、いまさら適正を調べる必要もな。

それを告げると2人の顔色が変わる。


なんだか出掛けられなくなる予感がしたんでな。

「では、行って来ます!」って、気配を消して駆け出した俺は、悪くないはずだ。


「おい、こらっ!」

「ちょっと、ダリル君!」

聞こえませんったら、聞こえません。

いざ、マユガカ繁殖地へ!

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