第38話

そんなことを思い出しながら、ユンファが用意してくれた食事をいただく。

うん、美味い!


食後に風呂もいただき、風呂でユンファもいただく。

今日も強敵ユンファさん。

だが、負けぬぅっ!


聖術に磨きを掛けたようで、体力回復著しく手強い。

だがな、だがぁっ!こちらも魔那取り込みにてパワーアップしており、負けてはいない!


今夜も俺が制してくれよう!


てなことがあったんだが…そのな、体内魔那が増えた影響か、それがユンファにも影響したのかは分からんのだが…2人して非常に、非常にぃ、元気でな。

朝から滾ってだなぁ…朝からチュンチュンの朝チュンでした。


いやぁ~朝から良い汗掻いたわい。

なのに2人とも疲れず、元気、元気で爽やかです。

ユンファなんざぁ肌艶よろしく、ルンルンにて教会へ。


仕事も楽しいってか?

俺の方は、次のミッションまで休暇だしなぁ。

飯はユンファが作ってくれたのを食ったばっかしだし…


取り敢えず珈琲でも飲んで、なにするかを考えるかね。


喫茶ウイユ・ドゥ・シャ。

俺のアパート近くにある喫茶店でな、仕事を斡旋仲介してくれる仲介所でもある。


喫茶店や食事処に酒場などは人が集まり易いためなのか、仕事の斡旋や仲介することが多いようだ。

っても、傭兵稼業を営むフリーランサー専用って感じだがな。


一般的には、国の行政機関が営むネクスト・ワンか、各領にて営む機関にて仕事を探すんだ。

ここの職業斡旋所は、たしか…そう、ハッピーワーク、略してハピワクてぇ巫山戯た名だった筈だ。


まぁ、俺は利用せんけどな。


そんなことを思い出しながら喫茶店へと。

しかし…浮浪者が増えたなぁ。

ハピワクへ行けば、取り敢えず仕事はあるはずだ。

選り好みしなければ、だがな。


技能が無ければ、キツい仕事へ就くしかあるまい。

嫌ならば、職業訓練所へでも行き、技能を修得すれば良い。

借金して学ぶか、ボランティア扱いで寝床と飯の補助のみで給料なしにて学ぶか…

なにもしないよりは良いだろうに。


喫茶店へ入り珈琲を。

マスターが珍しく奨めるので、お奨めを。


「ほぅ、凄いな。

 この香りだけでも、頼んだ甲斐がありそうだ」

「香りだけでないと、保証しますよ」

「それは楽しみだ」


煎れ立てで馥郁たる芳醇な深い薫りが香り、思わず陶然となりそうにな。


目の前で薫る品が冷める前に口へと。

これは…凄い、な。


酸味、苦味、深み…仄かな豆の甘さが密やかに。

バランス、そう、絶妙なバランスが素晴らしいんだ。

この絶妙なバランスを保つ妙技。

味だけでなく、香りでさえ、この組み合わされたバランスの上に成り立っている。


「美味い…」

口に出すのは、これだけで良い。


蘊蓄染みた言葉は、この場に不要であろう。

蛇足は感動を薄め、害とも言えるからな。


ただ、ただ、美味い珈琲を染々と。

マスターも解っているようで、静かにグラスを拭く。


したらな。

「え~っとぉ、結局、美味しかったの?」って、ウエイトレスのサユミがな。


台無しまではいかんが…間違いなく場は崩れたな。

これだから、お子さまは…


俺はサユミを無視してマスターへ。


「素晴らしかったが…どけで、これを?

 これだけの出物が、この値段で良いのか?」


安過ぎる気がな。


「最近、この領へエルフ族の方々が移民されましてな。

 3日ほど離れた森へ、ご領主様が斡旋されてのことと。


 その方々が森にて自生していた珈琲の木を見付けられ、その木の豆と、持ち込まれた豆をブレンドされ、試供品として流されたのですよ。


 持ち込まれた珈琲豆が生る木も、苗木で持って来られてましてな。

 精霊魔術で苗木を定着させてから成木まで育て上げたそうで。


 まあなんですなぁ、魔術とは凄いものとは聞き及んでおりましたが、まるでお伽噺のような話でございますなぁ」


魔術の平和的な使い方で、結構なことだ。

しかし…また隣国かい。

ろくなことをせんな、まったく…


「しかし…そのような木が生えた森などあったか?

 この周辺の森は、粗方探査が終わっている筈だがなぁ?」


どこだ?


「それが…ゾンガの森でして」

「はぁ?

 いや、あそこって…マユガカが潜む危険地帯だろ?

 ゴブリンやコボルトにオークとかオーガを放置してっし、ダメだろ、それ」


マユガカの餌として、通常は討伐するモンスターを放置してんだよなぁ。

マユガカが群れて危険だが、森奥から出て来ないから見張り立てて放置していた筈。

そんな所へ移民させたてぇのか?

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