プロローグ

プロローグ

 「おぃ、ゴンタそんなに走るなよ、コラッ、言う事を聞け!」


手綱に精一杯の力を込めて、自分に手繰り寄せようとする。


それでも、なお、前に進もうとする犬(ゴンタ ♂ 3才)は首に食い込む首輪のせいで、


盛大にむせていた。


「ゴホッ、ゲホゲホ、ゲホッ」


「ほら、言わんこっちゃない」


立ち止まって咳き込む飼い犬に、手綱を緩めて近づく少年。


ゴンタの目は


「しめた!」


とばかりに一瞬にして輝きを取り戻す。


よっしゃぁ!行ったるわ!と言わんばかりに、


ゴンタは猛ダッシュを決め込んだ。


「あっ」


手綱は手元からすり抜け、ゴンタは道に踊り出る。


「ゴンタ!」


少年は考える暇すらなかった。


その体は無意識に最愛のペットに向かっている。


普段の行いは良いはずだった。


ただ、その日は……


運が味方に付いてくれなかった。


キキッーーーー!


道に飛び出した犬にトラックが急ブレーキをかける。


少年は最愛のペットを抱えると、渾身の力で向かいの歩道に目掛けて投げ飛ばした。


せめて、ゴンタだけでも助けたい。


ドン……


少年はきれいに宙を舞い。


その意識は深い深い場所へと誘われていった。


こうして、少年の短くも儚い人生は幕を閉じたのであった。




 少年が目を覚ますと、どこかの家の中にいた。


周りは薄暗く、目の前には暖炉の光だけが辺りを灯している。


暖炉の目の前には、揺り椅子がゆらゆらと揺れている。


揺り椅子には、白髪頭で白のローブで身を包んだ老人らしき人物が座っている。


少年は声をかけるか迷った。


なぜなら、老人らしき人物の頭には、光り輝く輪っかが浮かんでいたからだ。

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