第2話

  昨日はかなり酒を飲んだ、頭が痛い。宴会がなかなか長引いた。バレットが作る飯は見た目は美味しそうなのだが、全く美味しくなかった。ほとんどの具材は特に調理されることなく生、肉に関しては焼きすぎて黒くなっており固くて食えない。総括すると大変酷かった。どうして調理していないご飯がここまでおいしそうに見えるかは本当に謎だ。


「あら、おはよう。朝は苦手?」


あさイチからのバレットの顔面はかなりキツイ。頭が余計に痛くなる。


「苦手じゃない、俺はお前の方が苦手だ」


 きつく言ったはずが少し喜んでいるようにも見える。


「もう、ツンデレね。そんな事は置いといて、朝食を済ませて次の作戦について話すわよ」


俺はバレットのご飯で昨日散々な目にあったので町のお店で軽く朝食を済ませた。


研究所に戻り作戦会議が始まった。この研究所の職員はバレット以外知らない。なので目立つことなく俺はその場で空気になって話を聞いていた。


「次はこの資料にのっていた、封印されている禁術魔法の書かれた本を探すわ」


「そんな禁術魔法なんか居なくても俺がいるだろ」


と、つい思ったことが口にでていたみたいだ。


「あら、嫉妬なんかしなくていいのよ。でもね私たちの持っている戦力では限界なの。悪魔のつけ方すら分からない状態って言ったでしょ、禁術をみにつければ大きな戦力になるはずよ」


「もちろん場所の目星はついているんだろうな」


「もちろん、じゃなきゃこんなことで人集めないもの」


そりゃそうだ。バレットは近くにいた研究員に指示し地図とペンを持ってこさせた。


「これはラウールベルクの地図か?」


「そうよ、この国の地下に封印されてると思うの。あなたリンドバーグ家でしょなにか噂とか聞いてないのかしら」


「特には。実際そんな秘密を知ってるとしても、王や魔道士長とかじゃなきゃ知らないんじゃないか?俺はただの学生だ」


「でも俺が5歳だった頃。城のどこかに入ったときかなりきつく怒られた記憶はある。もしかしたらそこかもな」


 それを聞いたバレットは少し唸り、全員に指示をだした。


「それはかなり大きな情報ね、3日後新月の日の夜中に作戦を実行するわ。それまでみんなは予定通り準備を始めて」


「はい!!」


全員大きな声で返事をする。バレットはこの研究所のまとめ役らしい。俺は作戦の前に自分の能力について知る必要があるのだろうけど、どうやって使うのかわからん。とりあえず悪魔本人に聞いてみるか


赤黒い精神世界へと入る。


「おい、サタン。能力について教えもらおうか」


「我の能力が知りたいというのか」


 悪魔は胡坐をかいて腕を組み少し考えたあと一言


「すまないが我にも分からない」

 

は!?嘘だろ?契約のとき力は保証したやると言ってたじゃないか。あんなに自信満々に豪語していたくせに分からないとかありえないだろ。と、心の中で叫ぶ。


「今まで契約してた人がいないから分からない。『憤怒』ということくらいしか分からないのでな」


 やや申し訳なさそうに話す無能に呆れた俺はここにいる意味も無くなったので俺は精神世界を立ち去る。


 次の作戦悪魔の力で何があっても割と何とかなると思ってたが、力が使えない可能性も考えると失敗する可能性があるな。バレットに相談しとくか。


「バレット、俺は次の作戦あまり役にたたないと思う。だから作戦から俺を外してくれ」


「もう、ホントに困ったっ子ね。しょうがないわね、あんたに特別に装備を作ってあげるわ」


 かなり時間がかかりそうだったので部屋で待つことにした。弟のニコラスとアリシアは今頃、何をしているのだろうか。




◇◇◇




 兄さんがドルクマに行ってから二日経った。国で発行している新聞では兄さんのことを名家の落ちこぼれとして叩かれていて、家で引き篭もっていることになっている。町にでかけるのも問題が起きるかもしれないからと、外出を禁止されている。学校にも行けず暇にしていたら、アリシアさんが家に遊びにくることになった。


 「ニコ、遊びに来たわよ」


 アリシアさんがリビングで呼んでいる。自室から出て向かうと、笑顔の彼女と目が合った。笑顔はどこか不自然で無理しているようにも見えた。


 「最近外に出れてないらしいから、遊びに来ちゃった。ノアは部屋にいるの?籠ってるって聞いたから励ましに来たんだけど」


 アリシアさんはあたりを見渡し兄さんを探す。


 「兄さんはいないよ。この国にすら」


 「え?いないってどうゆうこと?」


 ひどく動揺したアリシアさんにことの経緯を説明した。兄さんが血のつながっていない家族であること、ドルクマに移ることになったこと、全てを話した。


 「ノアはもうこの家にはいないのね」


 アリシアさんの声には力がなかった。


 「きっと兄さんは楽しんでるよ、他所の国に行ってみたいって言ってたし」


 「それも、そうね。あいつなら楽しんでるかもね。でもそれなら一言、私に声かけてくれてもいいのに」


 アリシアさんも少し元気になったようで愚痴をこぼす。アリシアさんは、小さい頃から、僕と話すときの話題は兄さんのことばかりで、兄さんのこと好きだって気づいてるのかな。二人が仲良さそうに話しているところを見るのが好きだし、微笑ましいと思っている。正直じれったい。


 アリシアさんが文句言ってたぞって、兄さんに手紙でも書こうかな。



◇◇◇



 バレットを待っていたら、つい寝てしまっていた。時間を見ると一時間経っていたので一度様子を見に行くことにした。


 扉を開けるとそこにバレットが立っていた。


 「あら、完成したからちょうど呼びに行くところだったの。タイミングばっちりね」


 と言い、ウィンクする。寒気が立った。


 バレットに連れられ広いところに出た。


 「ここは、実験場よ。新しい兵器を試したりする場所なのよ。特に何かあるわけではないけどね。ただの広い空き地ってかんじね。ちょっと待ってて武器もってくるから」


 バレットは来た道を戻り武器を取りにいった。どんなものなのか楽しみだ。


 5分程でバレットは帰ってきた。手に持っているのは剣だろうか。


 「これはね、三つの形態に変化する剣よ。剣と銃に変形して戦い方に合わせて変えていくの。もう一つの形態は携帯用モードよ。このベルトと一緒になったケースに入れて持ち運ぶの。いいでしょ」


 さらに説明が続く。


 「銃の状態では魔法弾が撃てるの。火、水、雷の属性が撃てるわ。まだ、土と風は撃てないの、研究中だから待っててね。魔法弾について、説明するわね。この国では術式を用いて魔法を使用するの。武器などに施すことで使うことができるの。その術式を発動し魔法の弾丸を作り、発射できるの」


 ここで俺は口をはさむ。


 「つまり、術式を刻んでいるから魔力の限界も関係なく、リロードも無しに球を撃ち放題ってことだな」


 「そういうことよ、理解が早くて助かるわ。精霊を介して魔法を使ってるわけではないから比べると威力は落ちるけど。武器としては十分な威力よ。変形に慣れたら、属性を切り替えるのももちろん、銃と剣を切り替えるのもほとんどノータイムでできるようになるわ。少し撃ってみなさい」


 そう言われて弾を撃ってみた。目標の鉄板を貫通して撃ち抜いている。なかなかの威力だ。この形態変化に慣れないと実践では扱えないと思った。使うと分かるが、人が使いやすいように丁寧な仕事がしてあると分かる。ドルクマの人は手先が器用で素晴らしい技術者が多いと聞いていたが。実際にものを見たことが無かったので非常に驚いた。


 「気に入った。3日後の作戦までには実践レベルに使えるようにしておくよ」


 「気にいってもらってありがたいわ。次の作戦に絶対あなたの力が必要だわ。期待してるわね」


 バレットは実験場を出ていった。


 俺は魔法のない世界を造るんだ。そのためだったらなんでもする。争いのない平和な世界にするための一歩として次の作戦は絶対成功させる。


 俺は一人、闘志を燃やした。


 

 



 



 


 




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