魔法エリート一家の魔法が使えない俺が世界統一する話。
千葉 雛
第1話
ここは魔法大国ラウールベルク。魔法を発見、発明した魔導士セシル・テイラーにより200年前に興された国だ。人口2000万人の大国で、豊かな自然と歴史を感じる建物らはこの国を象徴する。最近では隣国の技術を取り入れ、術式を書いて魔法を込めて便利になった物や家具が生まれてきている。
ラウールベルクのリンドバーグ家は代々、魔導士長を排出するエリート一家だ。魔導士長は国民の憧れの対象であり、リンドバーグ家は数多くの特別待遇を受ける。俺はそんな家で生まれた。家族構成は現魔導士長の父ウォルター、一級魔導士の兄ヒューゴ、弟のニコラス、そして俺、ノア。母はいない。俺がまだ言葉も理解できない頃病気で亡くなったという。親父に聞いても茶を濁すようばかりで詳しくは教えてくれなかった。兄のヒューゴは昔から俺を目の敵にしていて、隙を見せるとすぐに突っかかってくる。あまり好きではない。
この家で俺は幼い頃から質の高い教育を受けさせられた。国でも評価の高い魔導士に勉学や剣術を学び、5歳には四級魔導士相手に魔法無しで倒したという話は一部で有名になった。
俺はエーデルシュタイン魔法学園の3年生で今年卒業し、いずれ最強の魔導士として名を馳せる…
そう思っていた。
---1か月前---
「いまから第105回エーデルシュタイン魔法学園、精霊契約式を始める」
学園長の挨拶で整列している学生らに緊張が走る。それもそうだ、契約する精霊の属性や種類によって魔導士の能力のほとんどは決まる。この日で魔導士としての人生が決まるといっても過言ではない。
毎年卒業式の前に行われる精霊契約式は国を守る魔導士の誕生に全国民が注目するイベントだ。会場には3000人位いるだろう。
そんな中俺は精霊契約なんぞに全く心配していなかった。
突然トントンと背中を叩かれ、声をかけられた。
「とっても緊張するね。どんな精霊が契約してくれるかな。可愛い精霊さんがいいなぁー」
振り返るとそこには女の子がいた。彼女はアリシア・ローレンス。彼女は魔法一家ローレンス家の長女で俺の幼馴染だ。緑の瞳で肩くらいの長さの金髪で前髪を眉毛あたりの長さに切って整えている。まず美人と言って間違いない。
「まぁ、俺は緊張しないな。自分に自信があれば緊張なんてしないはずだ」
「ほんと感じ悪い言い方するね」
彼女は微笑み皮肉をこぼす。俺は自分の家の関係から普段は猫を被っているので素を出すことをあまりしない。俺にとって彼女は気を遣わずに接することができる数少ない友人だ。
「もっと私以外と接する時みたいにいい子ちゃんぶってくれればいいのに。ほんと可愛くない」
彼女の冷たい視線がささる。
「案外疲れるもんだよ、自分が天才だって分かってるのにわざわざ謙遜してさ。角が立たないように生きるなんて大変だよ」
「自分で天才とか言っちゃう?でも本当になんでもできて天才なんだから余計腹立つ」
彼女が頬をぷくりと膨らませる。
「アリシアもいつも成績上位なんだからそんな気にすることもないと思うぞ」
純粋に褒めたつもりだったのだが、また皮肉が返ってくる。
「はいはい、分かってるわよ。でもあんたももう少しニコみたいな優しさが少しでもあればいいのにね」
「うるさい、余計なお世話だ」
ニコは俺の弟で成績優秀で武術や剣術、何事にも類まれな才能を発揮する天才で、温厚で優しく他者からの信頼もあつい。来年飛び級をして3年生になるらしい。俺の大事な自慢の弟だ。
2人で話していると、とうとう1人目の契約が始まった。精霊には火、水、雷、土、風の基本の5つの属性がある。多くの人が1人につき1属性というのが普通である。極めて稀に複数の精霊と契約したり、基本の5つの属性ではない精霊と契約する人もいる。基本属性に入っていない属性を無属性といい、後に調べられ特有の名前が付くらしい。過去の文献を見ても基本属性ではない精霊と契約した人は60年前にいたと授業で聞いた。本当にそんな奴が存在してたかどうかすら怪しい。もはや伝説でしかない。
「1人目のやつは土属性の精霊だな。あれくらいなら3級魔導士くらいじゃないか?」
俺は小馬鹿にしながら言った。
「精霊と契約するとこ生で初めて見た!いつもテレビで見てたから、実際に見ると迫力違うね!」
真剣に契約しているところを見ているアリシアに俺の声は聞こえてないようだった。彼女にとって魔導士としての階級は関心がないのだ。相変わらず能天気というか天然というか。
魔道士の階級は下から4級、3級、2級、1級となっており、その上に魔道士長というような仕組みになっている。 4級は精霊の年齢が若く威力の高い魔法は使えない。拳銃を持った相手にギリギリ勝てるかどうかの実力しかない。3級は魔法の威力もそこそこだが、範囲魔法を使えず、魔法を使える限度があるくらいの実力。2級はそれよりも強い魔導士を指す。1級は複数の属性持ちや、特別な無属性持ちの奴らのことを指す。階級によってその後の地位や人生が大きく変わる。
大体200人くらいの契約が済んだ、どれもこれも特にといった感じで、1級の魔導士は現れなかった。精霊契約式はエーデルシュタイン魔法学園の成績順で契約する順番を決めており、毎年成績の悪い人から契約していく。そろそろアリシアの番だ。
「アリシア・ローレンス!」
「はい!」
アリシアの名前が呼ばれ精霊を下ろす大樹の前に片膝をつけ両手を組み、精霊への敬意と忠誠を誓っている。すると大樹がいきなり光り輝く。観客が目の前で不思議な光景に反応が遅れていた。
大樹の前に大きな光を放った精霊が出てきた。基本の5属性の特徴が全くない。あれが無属性というやつなのか。見た目は神々しく光り輝き、慈愛に満ちた表情は優しさの他に自分の信念や強さというものを感じる。神にも近しい姿から誰も歓声をあげられなかった。
そして彼女は契約を結び大樹と学園長に一礼し俺の後ろに戻ってきた。
「なんだよあれ、凄かったな」
あまりの凄さに俺も語彙力を失う。
「びっくりしたよ!みんなから見えてないと思うけどずっと口空いてたからね」
彼女が嬉しそうに続ける。
「すっごい綺麗な顔立ちで、もう女神かと思ったもん」
彼女は目を大きく開いて興奮している。あまりのテンションの高さについていけない。
「あぁ、ありゃすごいな」
「そろそろ俺の番だからなラストのトリとしてお前よりすごい精霊と契約してやるよ」
俺は息巻いてやる気になる。
「うん、楽しみにしてるね!」
アリシアと話をしていると学園長から名前を呼ばれた。
「第105回エーデルシュタイン魔法学園首席、ノア・リンドバーグ」
「はい!」
いざ自分の番となると少し緊張してしまう。さっきした返事も少し声が裏返って変だったかもしれない。くだらないことを考えていると、あっという間に大樹の前へと着いた。そして膝をつき両手を組み、精霊を下ろす。
……ん?精霊が来ない。会場がざわつきはじめた。自分でも何が起こっているのか状況を掴めずにいた。いくら待っても大樹になんの変化も現れない。
首席の俺が精霊と契約出来ないなんてあってはならないと思い、組む手に一層力が入る。周りも固唾を飲んで様子を見ている。10分くらいだっただろうか。学園長が慌てた様子で気まずそうな俺を元の席に着くように言った。席に戻るときにアリシアと一瞬目が合ったがすぐに目を逸らされてしまった。あんなに啖呵を切ってしまったのが今更恥ずかしい。
契約式が終わったあと何もなかったように通常通り卒業式が行われた。俺は卒業式が終わると、気まずさから人知れず家に帰宅した。
家に帰ると兄であるヒューゴがいた。
「精霊契約式見てたぞ、お前精霊と契約できなかったみたいだな。お前みたいな秀才が恥ずかしいったらありゃしないな」
俺は沈黙を貫き、隠れるように自室へ逃げ込んだ。一体俺はこれからどうなるのだろうか。どんなに勉強ができたって魔法の才能がなきゃ意味ないじゃないか。地の底まで絶望した気分だ。俺は悔しさのあまり涙がこぼれる。俺は泣き疲れて気絶するように眠りについた。
コンコンとノックの音で起きる。
「兄さん、父上が呼んでます。書斎に来いと言ってました」
「わざわざすまないな、ニコ」
心身ともに疲れた重い体をやっとの思いで起こし、父の書斎へと向かった。何の話かは大体おおよそ見当がつく。今日の精霊契約式のことだろう。何を言われるのだろうか。
書斎につくと、ドアをノックしてから入る。そこには神妙な面持ちをした父がいた。
「お前に隠してたことがあるんだ…実はお前は俺の実の息子じゃないんだ」
「何言ってるんだ?父さん」
突然の告白に頭の理解が追いつかない。父は俺の慌ててる様子を無視して話し始める。
「お前は養子でな、竜人族の国ドラゴライトから来た旅人に託されたんだ」
「最初は断ろうと思ったんだが、私には出来なかった」
「今までこんな大事なことを隠しててすまない」
父の表情からこれが冗談なんかじゃないと分かった。今日という日は一体なんなんだ、いろんなことが起きすぎてよく分からない。
「いや、いいよ。俺をここまで育ててくれたから。でも今日の契約式で精霊と契約が結べなかったんだ。俺は親不孝者だよ」
気を使わせないように微笑むつもりだったが、うまくできない。
「その件だが、お前を友好国のドワーフの国ドルクマに移動してもらう」
急な決定に動揺する。
「どういうこと? 父さん」
「一応、お前はリンドバーグ家であって、才能もないやつは国の恥として殺すべきと会議で決まったのだ。だから、ドルクマに避難してそっちで平和な生活をしてほしい」
「父さん……」
実の息子ではない俺を思う。父さんの気持ちに思わず涙がこぼれる。
「分かった。どうせここにいても辛かっただけだったし。ありがとう」
「本当にすまない」
俺は父の書斎を後にした。すぐに部屋に戻り、必要な荷物を整理することにした。何気なく暮らしていたが、ここを去るとなるとどこか感慨深い。いままでの思い出が蘇ってくる。浸っているところにノックと共に部屋にニコラスが入ってきた。
「兄さん、今日の契約式見たよ」
「情けない姿見しちまったな。父さんからの推薦で俺はこの国を出ることになった」
ニコは驚いた表情になる。
「え、兄さんこの国からいなくなるの?」
「あぁ、今まで世話になったな」
「父さんから、血の繋がりがないことも聞いた」
これにはほとんど動揺をみせない。前から知ってたみたいだ。
「え…でも、兄さんは兄さんだよ。僕にとって憧れの対象で」
ニコラスの言葉を遮るように俺は言った。
「でも魔法が使えない!」
「・・・・」
急に声を荒げたので驚いたのか、沈黙が続く。間が辛くなって口火を切る。俺はニコラスの腕を引っ張って部屋から無理やり追い出そうとする。
「ニコ、アリシアと気まずくなっちまったんだ。俺がいなくなったらよろしく伝えといてくれ」
必死にニコは俺のつかんだ腕を離そうとする。
「兄さん!兄さん!」
俺はそんなニコラスの抵抗を気にせず部屋から追い出し眠りについた。
翌日、指定の場所に手配されている馬車に乗る。
初めて自分の国から出るので少し胸が高鳴る。ドルクマに行けば立場や地位、魔法も関係ない新しい人生を歩める。少し気がかりなのはニコとアリシアだな。アリシアにはこの国を出ることを言っていない。最後にきちんと話しておきたかったな。
30分弱でドルクマに着いた。馬車を運転していた老人が道案内をした。ラウールベルクとは違い、ほとんどが機械仕掛けで、自然や歴史的な建物は見当たらない。ドルクマは他国に比べ機械産業が有名で、ラウールベルクと共に魔法機械兵の研究をしてると聞いたことがある。
街並みは、よく分からない歯車や機械が動いており、工場が多く、そこから出ている排気ガスで空気がよどんでいる。所々から出ている配線やパイプはごちゃついていて、何がどこにつながっているのか全く分からない。
道なりに進むとある施設に連れてかれた。ドルクマにある魔法研究所だそうだ。老人はここで進行役をそこにいた若人に代わった。
若人は体格がいい。筋肉もかなりのものだが、仕草がどこか女性らしさがある。
「皆さんはこの施設に売られた奴隷として来てもらったわ。ぜひこの国のために命尽きるまで働いてもらうわよ」
一体なんのことだ?奴隷…何か間違ってないか。
俺は説明している若人に聞く。
「奴隷って何だ?俺はこの国に移住しに来ただけだぞ」
若人は腕を組み頬杖をつく。
「あら、ぼうや間違って乗ってきた感じね」
「良かった、じゃあ俺はここから出てもいいですよね」
「うん、そうね。じゃあないのよ。ダメに決まってるでしょ」
俺は身の危険を感じてその場を立ち去ろうとするが若人に肩を掴まれ止められた。
「貴方がつけてるペンダント…」
俺の首につけているペンダントを手に取り凝視する。
「これラウールベルクのリンドバーグ家のペンダントじゃないかしら」
そういえば外しておけって父親も言ってたっけ。やらかしたな。
「いい素材を見つけたわ。あんた達、そこの坊やを拘束しなさい」
屈強な男が数人で俺を取り押さえる。後ろから抑えた男が持つ睡眠薬を含んだ布で口を塞がれて気を失った。
目が覚めると手足を縛られていた。紐を解こうにも固く結ばれており、解けそうにない。
「あら、目が覚めた?あなたはこれから実験のお手伝いをするのよ」
「この研究所では魔法に対応しうる、人間兵器の研究をしているのよ」
「あんまり説明しても分かんないよね、だから実際に薬投与するわよ〜」
楽しそうに話す彼に力で抑えられ無理やり薬を投与される。急激に強い眠気に襲われる。気を失ってはダメだと思い力を入れるが、抵抗できず気を失った。
◇◇◇◇
気がつくと見知らぬ天井があった。机に手足が金具で拘束されており、逃げ出せそうにない。部屋は薄暗く、何に使うのか分からない機械や、器具が沢山あり、少し血腥い。まだ薬の効果なのか少し視界がぼやけている。何なんだ、あの日から人生が狂い始めた。俺が魔法を使えればこんなことにはならなかった。悔しさが込み上げてくる。そんななか部屋に入ってきた男に声をかけられた。
「あら、目覚めた?無理やり連れてきてごめんね」
「謝るくらいならこの拘束取ってくれませんかね」
「それはダメよ、今から実験するんだから」
ダメもとで聞いてみたが軽く却下される。
すると彼は、近くにあった注射器に薬を入れ俺に投与しようとする。
「一体何の薬なんだ!?お前たちは何の目的でこんな実験をしているんだ」
「どうせ死ぬかもしれないし教えてあげるわ、私たちはね、悪魔の力を継がせる人間の器をつくろうとしているの。力に対抗できるようにするための人体改造薬みたいなものかしら。あなたでも今までの実験体の中で1番の上物よ。顔もほんとにタイプだわ」
「悪魔?いったい何のことだ?」
俺の質問を無視して、 注射の針を中指で叩くと躊躇なく俺の腕に薬を入れようとする。
「じゃ、教えたしそろそろ入れるわよ。もし起きたらまたお話ししましょうね」
「や、やめろぉぉぉおおお!!」
薬を入れられた瞬間この世のものとは思えない痛みが電気のように全身を走る。頭も痛い、気持ち悪い、全ての苦しみがいっぺんに来たようなそんな痛みだ。10分ほどたっただろうか、痛みが消え視界が赤黒いモヤモヤに包まれる。
「よくぞ来たな、我が精神世界に」
巨大な黒い影が話しかけてきた。
「お前は誰なんだ…?」
「我は[憤怒]の悪魔サタン。この精神世界に来れる人間は今までいなかったもんで自己紹介することもなくてやり方を忘れてしまったな。最後に会ったのは200年前に1人。それ以来だな」
角が生えた巨体な人型で、黒いモヤモヤに包まれて実体が見えない。
「望みを言え」
悪魔は余裕をひけらかし、顎を突き出し、俺を見下す構えをしている。
「望みなどない。俺をここから帰らせてくれ」
思っていた回答と違ったのかサタンは口を大きく開いて腹を抱えて大笑いする。
「悪魔を前に望みなどない。か、お前は変わっていて面白い。そしてお前からは深い絶望を感じる。お前にとても興味がわいた」
その通りだ。俺は深い絶望の渦中にいる。リンドバーグ家の人間として優遇され何不自由なく生きてきた。それは後に国を守る優秀な魔導士を生むことがある程度保障されているからだ。学園を首席で卒業し、恵まれた環境の中で自分が世界の中心であるかのように俺は自惚れていた。魔法の使えない俺は父に奴隷として売られていた。もう何もかもどうでもよくなってきた。
俺はドルクマ行の馬車へと向かう途中初めて城下町を出た。国境周辺の町はほとんどスラム街となっている。俺は気づいていなかった。いや、気づかないフリをしていただけだ。国の繁栄の裏には多大な犠牲が払われていることを。
誰かの犠牲によって成り立つ平和は俺は間違っている。絶望して自暴自棄になっている場合ではない。俺は力を手に入れ改革を起こす! そして全ての国を統一し誰もが笑って暮らせる世界を作る!! どんな汚い手を使っても。
考え込んでいた俺をサタンは不思議そうに見つめる。
「望みがある」
その一言にサタンは期待の目をこちらに向けている。
「俺は国を変える力が欲しい。魔法に支配された国を壊したい」
「いいだろう。その望み叶えてやろう」
サタンは考える間もなく即答した。つづけてサタンは条件を提示してきた。
「お前の望みを叶えてやろう。これは契約だ。契約料として寿命をもらう」
「どれくらいなんだ?」
「契約してから10年でお前は死ぬ。10年後以降のあるはずだった寿命をいただく」
「分かった」
俺が意外とすんなりと快諾したのでサタンは動揺している。
「おい、本当にいいのか。寿命だぞあと10年しか生きれないんだぞ」
「悪魔のくせに心配とかすんな。それより寿命やるのに大した力もなかったら許さねぇからな」
またサタンは大笑いしている。
「本当にお前のことが気に入った。力に関しては心配するな保証してやる。お前の野望とやらに付き合わせてもらおう。名前はなんと言うんだ」
「ノア・リンドバーグだ」
「ノア・リンドバーグこれによりお前と契約を結ぶ」
サタンの楽しそうな笑い声がだんだん薄れていき意識が消えた。
拘束台の上で目が覚めた。かなり寝ていたのか体が重い。
「あら、目覚めたの?死ぬかと思ってたのに。また会えるなんて嬉しいわ。やっぱり私の見立ては悪くなかったわね」
「悪魔との契約はできたの?まぁ聞かなくても眼球の色が赤黒くなるからわかるけど」
俺が口を挟む隙すら与えず、間髪入れずに彼は話す。
「これからも縁がありそうだし自己紹介しとくわね。あたしバレット・バーナー。一応言っておくけど男よ」
ウィンクしながらピースしてくる。
「お前を見て誰も女なんて思わねぇよ」
ボソッと言った。
「あら、酷いこと言うのね!でも顔がいいからなんでも許せそうだわ。嬉しくて抱きしめちゃおうかしら」
ばれないように言ったつもりだったが聞こえてたみたいだ。俺を包み込むように抱擁される。
「あんたのようなそんなガチムチに抱きつかれてもしたら骨を含めて内臓ごと潰されそうだわ。」
「そんなことより悪魔についての情報とお前らの目的を話せ」
すると笑顔だったバレット顔が急に真剣になる。バレットは昔話を始めた。
「十年前。ウォルター・リンドバーグが魔導士長になってから他の国に対して魔法による圧力をかけ始めたの。彼は魔法主義者で魔法の使用できない人間を差別して、虐殺におよんでいるの。私の父や弟もそれで死んでしまった。でも対抗するにも普通の銃や武器じゃかなわなくて..」
話しているバレットの目に涙が浮かぶ。
「それが悪魔だったってことか…」
「そうよ、悪魔の力は強大で対抗戦力として十分使えると思ったわ。でもね、悪魔をつかせる条件が分からなかったの」
「だから奴隷を買ってしらみ潰しに悪魔と契約させていったんだな」
「あなたほんと物分りがいいのね、かっこいいわぁ」
恍惚とした表情でこちらを見てくる。
「やめろそんなキモイ視線で見てくるな」
バレットに悪態をつく
「私たちはあなたの味方。あなたの命令なら聞くわ。もともと悪魔を信仰してた集団だったしね。でもね、魔法のない世界を作りたいの。協力して欲しいわ」
「あぁ、いいだろう。魔法のない世界は俺も目指してたんだ」
「じゃあみんなで悪魔がついたことと仲間が増えたことを祝って宴会でもしましょ」
そうして俺は魔法のない世界を目指すこととなった。
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