一分後には誰かが死んだ

岳川汀

第一話

 ある電車の中に、無個性ながら顔の整った会社員の男がいる。

 彼は車いすやベビーカー用のスペースの隅っこから、外の景色を無表情で眺めている。そして、とても息苦しそうだ。

 電車はガタガタした荒いエリアを走っており、他の乗客はつり革や手すりをしっかりと握り、壁にもたれている人はより強く自身の身体を押し付けている。

 先ほどの会社員はよろよろしながらも、バランスを保ちながら、相変わらず外を眺めていた。

 しばらくすると荒いエリアを抜け、電車も乗客も落ち着いた。

 会社員は相変わらず外を眺めている。少しすると、電車は駅を通過し始めた。

 外を見ていた会社員の目には、鳥が映った。

 次の瞬間、鳥は電車に轢かれてしまい、駅のホームには魚が散らばった。鳥の羽は見当たらなかった。

 会社員の乗っている電車は少し騒然し、他の乗客は固まった。

 会社員はその一瞬の出来事を見ると、顔に希望が宿った。


 

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