命令するメイド「ドイメ」と他99の超短編

STキャナル

命令するメイド「ドイメ」

「さっさとやりなさいよ」

 家のソファーに寝そべりながら、メイドが健太(高2)を急かす。

 健太はメイドの冷たい圧力に押されつつ、必死でオムライスを作っていた。


 彼女はメイドのくせに住人に命令し、自分では何もしない「ドイメ」だったのだ。


「はい、できました」

 健太が出したオムライスは、実に普通ながらもおいしそうに整っていた。

 ドイメはスプーンを手に取り、一口味わう。

「うん、おいしいね」

 ドライな表情を変えずに、シンプルに感想を述べるだけだった。


「健太、このあともいろいろやってもらうことあるの、わかってるよね?」

 間髪入れずに出たドイメの言葉は、健太を辟易させた。


 彼はこのあとも洗濯、部屋の掃除、ドイメが連れてきた亀へのエサやりなど、家のことをいろいろやらされた。普通はメイドがやるはずなのに。

 それでも健太はこのあとのことを考えると、今の状況に黙して従うしかなかった。



「はい、今日のごほうび」

 仕事を終えた健太に、ドイメは1万円を渡した。

 つまりドイメは、この世界では公式のバイトで、健太にお金の稼ぎ方を学ばせるものだ。

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