分かつ友情
シヨゥ
第1話
「君がそちらの道を行くのなら、ぼくはこちらの道を行こう」
ぼくは彼と袂を分かつ決断をした。
「なぜだ。なぜ違う道を選ぶんだ。今まで一緒に歩いてきたじゃないか。これからもずっとボクと一緒に歩いて行こうじゃないか」
ぼくがそんなことを言う性格じゃないことを把握している彼からしたらぼくの言葉は寝耳に水だ。その動揺は声を震わせ、顔が青白くさせるほどに多きもののようだ。
「なに。ただの思いつきだ」
「思いつきでボクと別の道を選ぶのか!」
「落ち着いて聞いてほしい。今まで2人で1つの道を信じて歩いてきた」
「そうだ。これからもボクはそうしたい」
「ぼくもこれまではそう思っていた。ただぼくはずっと思っていたんだ。2人で1つの道を歩むというのはあまりにも視野が狭かったんじゃないかと。もう1つのあったであろう現実を蔑ろにしてきたんじゃなかと」
「それは……そうかもしれないが」
「だから1度試しに違う選択をしてみようじゃないかと。そう思ったんだ。
互いに別々の経験をして、違う視野の広げ方をして、再会する。
そうすることで第3の選択肢が表れて、ぼくらはまた1つ賢くなれるんじゃないだろうか」
ただの思いつき。もう一度否定されたら今回は引き下がるつもりだ。
「分かった。今回はそうしよう」
だが受け入れられたのならとことんまでやろう。
「もし何もないようだったら、その時はまた同じ道を歩もう」
「そうしよう。それじゃあぼくはこちらの道を」
「ボクはこちらの道を行く」
「さよならは言わない」
「そうだ。さよならじゃない。ボクらが交わす言葉はきっと」
頷きあい、
「「また会おう」」
声を掛け合い歩き出す。次に会うときのことを夢見て一歩ずつしっかりと。今はひとつでも彼と違う収穫を得られることを願って1歩ずつしっかりと。足跡を刻むのだ。
分かつ友情 シヨゥ @Shiyoxu
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