間話 おっさんとケルベロスの暮らし



「わんわん!」

「んあ、おはようケルベロス」


 朝、俺が寝ているとケルベロスが起こしにきた。

 

「なんだぁお腹減ってるのか?よし朝メシにするか」


 ダンジョンには空がない、故に一日中真っ暗である。

 そのためいつ朝がきて夜になるかがわからない。

 だが俺たちのいるこの小屋には異空間窓と呼ばれるユニークアイテムを付けているため、外の世界の日差しが窓を通して部屋に入ってくる仕組みになっている。

 その窓から入る朝日でケルベロスは目覚め、俺を起こしに来ているのだ。


「わんわーん!」

「どうした?今日はやけに機嫌がいいな、よーし、今日の探索にはお前も連れて行くとしよう」

「わん!」


 朝食はパンに苺味のジャ虫を塗ったものと、昨日の残りのスープを食べた。

 ケルベロスには保存食の槍豚の干し肉を与えた。


「さぁていくか!」

「わんわん!」


 俺のいるこの3級ダンジョンは別名鉱石のダンジョンと呼ばれている。

 そのため数多の鉱石がこのダンジョンには散りばめられている。

 青色に光る石や赤色に光る石などが歩く道を照らしてくれる。

 今日の目標は万能石レベル3以上をだいたい20個ほど集めることだ。

 この万能石は、剣や鎧だけでなくフライパンや包丁など様ざなものに応用が効く、そのためその価値は非常に高くレベル1の万能石でもそれなりの高値で取引される。

 レベル5となると一個で、俺の生活2ヶ月を賄えるほどである。

 

「えっと鉱石メガネをかけてっと、おーいケルベロス!迷子にならない程度に遊んでていいからなー」

「わん!」

「さてさて今回はどのくらい集まるかなぁ……お、結構あるなぁ、でも全部レベル1くらいのものしかないなぁ」


 万能石は月日と共に成長する、そのためレベル1は基本的に採らないのだ。


「ふぅ結構採ったな」


 だいたい2時間ほど探索してレベル5が2個、レベル4が5個、レベル3が10個集まった。

 まだ目標個数にはいってないが2時間で結構集まった。


「うんうん悪くないぞ、一旦戻って休憩するか」


 えっとケルベロスはどこ行ったんだ?


「わんわーん!」

「お、ケルベロス!」


 鳴き声のする方に目をやるとケルベロスが何かを咥えてこっちに近づいてきた。


「お前それ」


 ケルベロスは槍豚の足を咥えていた。


「お前、一人で槍豚仕留めたのか?」

「わん!」


 問いかけに返事をしたケルベロスを俺は抱きかかえた。


「えらいぞー、お前ももうそんなに強くなったんだな!」

「わんわん!」

「よーし、今日は槍豚を使って美味しいご飯作ってやるからな」

「わん!」


 そうして俺はそのままケルベロスを抱きかかえたまま小屋へと引き返した。

 小屋へ着くと、ケルベロスが持ってきた槍豚の足を台所へ置き、簡単な昼食の準備をする。

 今日の昼食は干し肉と水だ。

 ケルベロスにも干し肉を与えて、またダンジョンへと戻る。

 午後の予定は残りの鉱石集めとケルベロスの仕留めた槍豚の本体の回収だ。


「さてと、行くかケルベロス」

「わん!」


 若い冒険者や名のある勇者はこんな風にダンジョンで過ごすことはない。

 手早く深部まで行き、宝や目当ての物を手に入れたら素早くダンジョンから出る。

 それは間違いなく正解だと思う。

 でも俺みたいなおっさんはそんなに早く動けないし、それにそんなに危険なダンジョンにも行かない、そうこれくらいがちょうどいいのだ。

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