第3話 おっさん冒険者のダンジョン暮らし

「うわぁ綺麗な石ですね」

「でしょ兵長ダイヤって言うんですよ」

「えー、これがあの」


 現在第一階層の奥で、俺とユイカさんは兵長ダイヤの探索を行なっている。

 俺はユイカさんをダンジョンから早く出してあげようと思い、第二層にすぐに行って槍豚を狩る事を提案したが、ユイカさんがそれでは迷惑をかけると言って俺の仕事を手伝うと言い出したので、今こうして2人で兵長ダイヤの探索をしている次第だ。

 ユイカさんは加工前の兵長ダイヤを見るのは初めてだったらしく、新鮮味のある良い顔をしている。

 もはや金集めのためだけの卑しい俺の顔とは違うな……。

 おっといけない、余計な事を考えてしまっていた、これだと作業効率に影響するしなるべく集中して取り組もう。


「さぁユイカさん、どんどん集めますよ」

「はい!」


 一応、ユイカさんにも鉱石メガネを着けてもらっているので収集スピードは悪くない、むしろ早いくらいだ。

 このペースでいけばあと1時間ほどで集まる。

 あ、そういえばあと1時間経てばちょうど夕飯時だな、仕方ないユイカさんを連れて隠れ家に行くとしよう。


「ふぅ、お疲れ様ですとりあえずノルマの量は確保できたのでもう終わりでいいですよ」

「え?これだけでいいんですか、まだ探せば集まるのでは……」

「いやいいんです、こういうものは取り過ぎると何かしらに影響が出るものなんです、適度な分量を取ったらもう終わりです」

「そうなんですか、なんかちょっと探すの面白かったからちょっとムキになっちゃいました、すいません」

「いえいえ、そのくらいが丁度いいですよ」


 なるほど面白いときたか、いちいち反応が若くて自分がおじさんに感じるな、いやまぁおじさんなんだけどね。


「それではユイカさん、いい時間ですので私の隠れ家に案内しましょう」

「隠れ家があるんですかダンジョンに?」

「ま、まぁここにはよく来るし長くいるのであるとなにかと便利なんですよね」


 年に3回、一回につきだいたい3日から5日は滞在するので俺はこのダンジョンに隠れ家を作っている。

 本当は良くない事なのだが、こんなダンジョン他に誰が来るわけでもないし、思い切って作ってしまった。

 隠れ家は第一階層の奥のにある、普段はミノムシ風呂敷というユニークアイテムで見えなくしているので、詳細な場所のわからないものでは見つけられないようになっている。


「ここです」

「え、どこです?」


 困惑するユイカさんを横目に俺は見えない風呂敷を思いっきり引っ張った。


「わぁ、そんなところに小さな小屋が……ってこれトイレくらいの大きさしかありませんが」

「あぁたしかに外はそうですね、でも中は結構広いですよ」

「え?」


 ユニークアイテム、拡張ハウスレベルA。

 見た目は小さい小屋だが、中は長めの廊下の先一番奥に8畳のリビングがあり、その隣に6畳の寝室と5畳ほどの物置、そして廊下の途中に台所とトイレと簡単な湯浴み施設がある。

 この小屋は便利アイテムの一つで、買うと結構な値段がするが俺はとあるクエストの報酬のサービスで頂いたのでほぼ無料で手に入れている。

 

「凄い!中は広いですね」

「ええまぁ、そこに椅子があるんで適当にくつろいでてください」

「え、タツベイさんは休まないんですか?」

「私は夕飯の支度をします」

「それなら私も手伝います!」

「いや大丈夫です、それにユイカさん慣れないダンジョンで色々疲れたでしょ、簡単ですが廊下の途中にあるところで湯浴みもできますんでそれして休んでてください」

「いやでも……」

「大丈夫、この部屋にはモンスターは入って来ませんので安心していいですよ」

「そ、そこまでいうならお任せします」


 そういってユイカさんは申し訳なさそうにしながら湯浴み処へ向かった。

 一応この小屋には魔除けの加護を施しているので、低級や中級程度のモンスターは入って来れないようになっている。

 そのためここなら安心して寝食をする事ができる。

 ユイカさん疲れてそうだし今晩はちょっと豪勢にしたいな。

 普段1人で飯を作り1人で食べてるため、誰かとご飯を食べるなんていつぶりだろう、そう思うとなんだかやる気が出てきた。

 さぁて美味しいダンジョン料理作ろうかな。

 



 


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