コンタクト怖い

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

カラコン怖い

「いやああ。コスプレはしたいけどカラコンはしたくないいい」


 わたしは、友人のマヤに頼まれて悪魔っ子のコスプレをした。

 設定だと、多くの魔物を従えるゴスロリ魔王である。

 ゴスロリが似合うアラサーってのも、問題がありそうだけれど。


「35にもなってコンタクトできないとか!」

「年齢は関係ないよぉ。アラフォーでも痛いものは痛いの!」


 後は赤目のカラーコンタクトを目に入れるだけ。

 なのだが、土壇場になってわたしは躊躇してしまった。


「じっとしなさいよ暁美! 入らないでしょ?」


 わたしにズイッと顔を近づけて、マヤはどうにかコンタクトをわたしの目に入れようとしている。

 マヤの瞳には、色違いのカラコンが入っている。ちなみに、緑と青のオッドアイだ。

 わたしがクラシカルな悪魔コスなのに対し、彼女はサイボーグの力で悪魔を退治するハンターという設定である。

 服装もライダースーツのような、ぴっちりボディスーツだ。

 胸がデカ過ぎて、谷間のチャックが上がらないのも素晴らしい。


「目になにか入れたくないいいい。痛いもおおん!」


 頭をブンブンと振って、わたしは抵抗した。


「あんた、目薬もさせないもんねぇ」


 呆れながら、マヤはなおもあきめない。


「ほら、あたしがやってあげるからおとなしくする! 抵抗すると余計に痛いよ?」


「ううううう」


 コンタクトとともに、マヤの顔も近づいてきた。


 うわあ、これはキッスの距離じゃん。

 やばいやばい。これはアカンやつだ。マヤ本気じゃん!


「ままま待った! 別の方法を考えようよ!」

「えーっ? もう時間ないよ」


 マヤは夕方から、撮影に行かないといけない。


「別の手段があるはずだよ! もっと普通に赤目になる方法が!」


 わたしはスマホを操作して、マヤのアルバムを開く。


「あった、これだ!」


 一番古い写真を発見し、わたしは歓喜する。



 後日、わたしの赤目悪魔っ子は、無事にアップできた。


 この間と同じ、マヤの部屋で祝杯を上げる。


「よく思いついたわね。使い捨てカメラで撮影とか」


 わたしたちが昔から使っていたインスタントカメラや、スマホになると、「赤目防止機能」が備わっている。


 その点、使い捨てカメラならそんな便利機能はない。

 正面からフラッシュを炊けば、見事に「赤目」として撮影できるのだ!


「伊達に長生きはしてないから!」


「ふーん、じゃあさ、そんなに長生きしているなら」


 フフン、とマヤが頬杖をついた。


「あたしの気持ちにも気づいているはずだよね?」


 コンタクトを持っていないのに、マヤの顔が近づいてきた……。




 翌朝、わたしたちはふたりともベッドで目が充血していた。

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コンタクト怖い 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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