詩「青春のさかな」
有原野分
青春のさかな
青空に泳ぐさかな
釣り竿片手に
昔の私が
和煙草の銘柄を
叫ぶように
今の私を呼んでいる
チン と
温まった赤ワインに
幼いあなたの唇を想像上のベッドに閉じ込め
て
今年も色を塗るしかないのか
嘘っぱちで
やけっぱちの
いかにも安物といった感じの
下卑た性欲に
裏切者
そうだ 俺は裏切者だった
真夜中がやってくるたびに
仲のいい人順から縁を切っていった
手探りで拾い集めた
生活の知恵をドブに捨てるように
友と名のつくものを捨てていった
おかげで
無数に広がった希望とかいうやつの
ただ眺めているような
くだらない概念を忘れることができたよ
今年もまたすぐに終わるさ
渇いた笑い、自己中心的、無政府主義、圧縮
された期待、明け方の不透明な投資、徘徊す
る柔軟性、不老不死の悲しい欲情…
ようやくだ
水が聞こえる
煙草の煙に泳ぐさかな
青い世界をうねうねと渡っていく
唇が赤く染まっていく
ああ 風船が飛んでいった
詩「青春のさかな」 有原野分 @yujiarihara
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