人生は限りなくkoi、ao。

容原静

一景

一景


公園

至る所に人体模型

人体模型には赤い糸が絡まれておりそれを巻いていく野田須見

人体模型と女性はこの公園とは別の場所に存在している為、基本的に物語に干渉しない。ずっと彼らはいる


※世界観の説明

感染病で人類滅亡の危機になった際、80年以上生きられる身体を科学の力で改造して感染病にも耐えうる代わりに27歳程度で力尽きる身体とした。27歳以上生きると感染病に対する免疫がガタッと落ちるため、いつ病気にかかっても死ぬかわからない。また27以上になっても力尽きない方法がある。それは幸福であることだ。幸福は赤い糸となり身体の中で熟成される。幸福でなければ赤い糸が短くなる。27歳ごろまでは赤い糸を創成できるが、それを過ぎると出来なくなる。赤い糸が完全に消えると免疫力がガタッと落ちる。赤い糸は高額で取引されている。赤い糸を娘や息子に与えて死を選ぶ親もいる。



本棚があり本が置かれている。まるで野外の図書館

ベンチと机

太田健介と山田悠がいる

二人はそれぞれ別の場所で本棚をみている


健介 幸せか。

悠 幸せじゃん。

健介 そうだな。

悠 幸せじゃない?

健介 否定、しようか。

悠 なんで。

健介 生きていると時々考えちゃうんだ。いろんなこと。

悠 そりゃあそうでしょ。

健介 考えてしんどくなって、わけないじゃん。


悠、健介の手のひらに自分の手を重ねる


悠 あたたかい。やさしい。しずか。

健介 本当の幸いを僕たちはもう二度と離さない。

悠 ジョパンニ。カムパネルラ。

健介 本当の幸い。

悠 私たちならきっとうまくやれるよ。


健介、悠の手を離す


健介 カブトガニってさ、まだこの国で生きているんだって。

悠 いきなり、なに?

健介 興味深い話なんだ。黙って話させておくれよ。

悠 お好きにどうぞ。

健介 カブトガニは青い血を持っているから、人間にとって意味があるけど。あいつらは食えないし、見た目もゴツいし本当の昔は人類にとっていらない子だった。いらない奴は見ないだろ。絶滅したらいいんだ。

悠 何をいいたいん?

健介 まぁ、聞いておくれよ。あいつらはのんびりと静かな場所でしか生きられないんだ。でも古代から今までそうやって生きてきた。その事実って美しくねぇ?

悠 どうなんだろう。

健介 僕もそうやってのんびり穏やかに生きていきたい。

悠 やりたいことはないの?

健介 何もない。

悠 無欲なのね。

健介 そうなんだな。

悠 じゃあ。


悠、健介に近づく


健介 なに。

悠 なんもない。

健介 そうか。

悠 健介は将来どうするの。このまま生きていくの。

健介 生きていけたらいいけれどそううまくいくとは限らないから。

悠 私も生きていきたい。死ぬのは嫌だ。

健介 ネガティブはダメだよ。暗いこと考えると長生きできない。

悠 わかってるよ。でも考えちゃうよ。

健介 そんな時は読書だよ。のんびり、おだやか、落ち着いて。

悠 うん。


健介、立ち上がる


健介 さて。

悠 お仕事?

健介 そうさ。

悠 がんばって。

健介 もちろん。


健介、退場

悠、読書を始める

野田須見にスポットが当たる

ライトの工場へ変わる


須見 いとまきまき、いとまきまき、ひいてひいて、トントントン。いとまきまき、いとまきまき、ひいてひいて、トントントン。


公園へ戻る

公園は夜

悠は読書を続けている

チェンと竜介がやってくる


チェン こんなところがあるなんて。

竜介 都会のオアシスさ。

チェン うわー。古典ばっかり。ワーニャ伯父さん、罪と罰、銀河鉄道の夜。

竜介 この公園がいつからあったのか。誰も知らない。

チェン なんかホラーね。

竜介 高尚な人間たちによって建設されたんだと思う。この世界はドス黒いけれど、ドス黒い人たちの中の本当に美しい部分がこうやって集まって出来たんだと思う。

チェン それって美しい。

竜介 此処にいると涙が流れそうだ。

チェン 流れないんだ。

竜介 俺って泣けないんだ。

チェン 強がりなのね。

竜介 わからない。

チェン ピアノとかないのかしら。

竜介 ないね。

チェン ざんねん。


チェン、スマホでピアノを弾く。

ボレロ


竜介 何故,ボレロ。

チェン なんとなく。

竜介 チェンは何歳まで生きていきたい?

チェン 別に。生きられるところまで。

竜介 謙虚だ。

チェン 神様から決められた運命には逆らえない。でも、運命に負けたくない。竜介は。

竜介 願わくば延々と生き続けたい。

チェン 天国へいかないの。此処は苦しいよ。

竜介 苦しくていいんだ。僕は。

チェン それはよくないよ。

竜介 チェン。

チェン なに。

竜介 好きだ。

チェン なによ、いきなり。

竜介 言いたくなったからいった。

チェン それはどういたしまして。

竜介 チェンはどう?

チェン どうもクソもないわばかやろー。


チェン、急に立ち上がる


チェン 明日はいい日になるさ。そのはずだ。

竜介 幸福だ。幸福に生き抜かないと僕らは滅びてしまう。

チェン 長く長く愛し抜きましょう。

竜介 愛の果てに天国がある。

チェン 或いは地獄かも。


二人手をつなぎ合いながら退場

健介がやってくる


健介 まだいたのかい。

悠 あ。ども。

健介 何読んでるの。

悠 銀河鉄道の夜。お疲れ様。

健介 こちらこそ。早く帰らないと。もう夜だ。

悠 早いねぇ。ねぇ。

健介 なに。

悠 うん。ふふふ。

健介 なんだよ。

悠 しっらない。


悠、健介を押して退場する


健介 おい。なにすんだよ。

悠 まったねー。

健介 なんなんだよ。おい。待てよ。


健介,追いかける


暗転

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