DESIRE of DIMENTION-mod.x-

漲木つかさ

第0話 [古ぼけた書籍の断片より]

広大な土地、豊かな資源、これらの環境と人類の知恵より生まれた至高の技術によって生み出された「キューブ」、9人の統率者による善悪両側の保たれた均衡。それらが全て揃った世界「バース」で何不自由無く全人類が過ごせる完成された環境の中、突如上空に出現した黒雲より降下した球体状の未知の乗り物から人々の前に姿を現したのは異世界「ソイル」から結成された組織【ZERO】の人々であった。 


身体的な特徴は無いものの突然現れた彼らに対して多少の驚きをみせたがバースの住民は友好的な態度で接し、彼らを受け入れた。 


バースより異なる世界から来た彼らもまた、快く迎え入れてくれた住民に対して感謝の証として自身の住む世界【ソイル】での至高の技術「エニグマ」を伝える。


照明や燃料の代わりに、汚水の浄化に、果ては医療といったライフラインにも使用され、もはや日常生活で欠かせない技術であるキューブの力をさらに引き出すのがエニグマだった。


世界全体から全員一致で声が上がった

「これはもはや魔法だ」と。


バースの住民とソイルのZEROは互いの技術や知識を高め合う内に親密な関係になり、やがて互いの世界に協定を結ぶ事になる。そうして組織だけではなく、ソイルの住民もバースの世界へ来訪する事になる。


─バースに存在する属性でその根源「火、水、風、土、金、雷、光、闇、時」の9つの内、ソイルもそれらの根源が存在するがエニグマによって過剰に引き出された結果、属性エネルギーが枯渇寸前になっていた。


──友好関係を結んだのは表の顔だった。


ZERO及びソイルの目的は自身の世界で作られた禁忌の技術であり世界から属性根源を引き出す3つの鍵、サイファーを使用してバースの属性根源を全て引きずり出してソイルに持ち帰るものだった。


9人の統率者の中で最も高い位に身を置く【時の統率者】はやがてソイル及びその組織であるZEROの不審な動きに気付き、自らの力でバースの属性根源を守る4つの鍵「アンチサイファー」を秘密裏に作成して他の統率者等と協力し、地獄の蓋に埋め込んだ。 しかし属性根源を根こそぎにするその計画に関して「時の統率者」以外は当時、半信半疑であった。


長い時を経てバースの地中の深くに存在する隠された万物の根源「地獄の蓋」に目をつけたZEROが計画を着々と進める中で大地に起こる異常な変化を薄々感じていた【時を除く8人の統率者】も半信半疑だったその計画は確信に変わる。


地獄の蓋へ到達するには9つの属性を使用して進まねばならず、自身の住む世界で枯渇した属性根源「水、土、雷、闇、時」をバースから過剰に使用した為、秘密裏に行われたその計画は各属性の統率者に露呈してしまったのである。


地獄の蓋自体はその世界に属性根源があれば必ず存在する。必要な分の属性エネルギーがまるでジワリ、ジワリと染み渡るように必要なぶんだけ行き届く仕組みだ。 本来の生活ではまず枯渇することはないのだがエニグマにより過剰に引き出された結果、本来使用する以上のその力のせいで枯渇、もしくは枯渇寸前に至るのは如何に使用したエニグマ自体が強力だという事に関しては言うまでもない。


ソイルはバースと違い、各種の属性根源はそこまで豊富なエネルギーはなかった事、バースによる時のエニグマによって計画がすでに露呈した事、長い年月によって溜まりに溜まった様々な感情からある日、ソイルの統率者であるダクテンはバースの住民と言い争いになり、エニグマを使用して殺害してしまう。

これをきっかけに自身の心の奥底に秘めていた支配欲を開放し、他から見たら自暴自棄と見える行動に出る。そう、統率者は一人でいい。自身こそが世界に存在する絶対者だと。


そしてダクテンはZEROの幹部8人を引き連れ、9人のバース統率者に宣戦布告し、対峙する。



長きに渡る戦いの末に地獄の蓋が開いて世界崩壊を招いてしまう。かつてあった豊かな世界は文字通りバラバラに分かれ、荒廃した世界になってしまう。統率者らが死に際に使ったエニグマによって世界がつなぎ合わされたが元通りとは程遠く、まるで無理矢理島国を衝突させて大きな大陸にみせているようだった。この9人のバース統率者対ダクテンを含めた9人の異世界人の対立から両世界全体を巻き込んで起きた世界大戦こそ後世に伝わる「グラウンドゼロ事件」である。


---古書店にあったバース歴史本から抜粋

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