第35話 遥の本音

第35話


澪さんの話をすると、落ち込む様に膝を着く義弟くん。


そんなにショックなのか…


むしろ、柊より下だと思われてた事がショックだよ!


「…まぁ、あの人は良いです。」

「良いんだ…」

「でも、どうやってお姉ちゃんを兄ちゃんから奪ったんですか!」

「どうやっても何もなぁ…」


やっぱり、間男扱いかよ…


ていうか、奪ったって言い方が酷くないか?


まぁ、アイツ視点からだとNTR物のクソ野郎みたいな感じなんだろうけどさ…


「遥輝!」

「えっ、何、お姉ちゃん?」

「よく聞いてね…」

「う、うん…」


遥のこういう所、怖いよね…


うんうん、気持ちだけは解るよ義弟くん。


普段は我慢する癖に、爆発すると一気に連鎖するからね…


まぁ、同情はしないけど…


「私は!柊の事が!大嫌いなの!」

「えっ…」

「あらあら、そうだったのね…」


思いっきりショックを受けた顔をする義弟くんと、サラッと受け止めるお義母さん。


お義母さん、もしかして…かなりの天然さん?


ある意味、気が付かなさそうな人だな…


「えっ、いつから…」

「最初からよ!貴方は遊んでくれるから感謝してるだろうけど、私はずっと止めて欲しかった!」

「そ、そんな…」


今度こそ、絶望した様な顔を見せる。


だが、直ぐに振り払う様に首を振り、泣きそうになりながらも俺を見てくる。


「すみません、もしかして、俺のしてきた事は…」

「まぁ、そうだな…」

「そう…ですか……」


今度こそ本当に黙ってしまう。


まぁ、かなりのショックだろうな。


頑張って結べようとしていた事が、完全に余計なお世話だったのは…


それに、自分が懐いていた柊の事が、大好きな遥が否定していたのもデカいだろうが…


「義弟くん…」

「くっ、勝手にそう呼ばないでください!」

「すまん…」

「…いや、謝るべきは俺の方です。」


涙を拭いながらも、俺を真っ直ぐ見据える。


その目は揺れながらも、俺だけを見ていた。


「まず、失礼な態度を取ってすみませんでした…」

「いいよ、気にしてない。」

「そうですか、ありがとうございます。」


良かった。


意外とチョロかったな、後はお義父さんに認めて貰えば…


「ですが…」

「ん?」

「まだ、認めてはいませんからね!」

「ええ…」

「だから、お姉ちゃんに相応しい男なのか、ずっと見させて貰いますからね!」


うわぁ、面倒だな…


まぁ、嫌われてるよりはマシか…


「これから、短い間になるかもしれませんが、宜しくお願いしますね、刃さん。」

「此方こそ、宜しく頼むぜ、義弟くん。」

「そう呼ばないでください!」

「すまん…」


和解は出来たが、味方には出来なかった。


まぁ、これからキチンと攻略していくとしよう。


折角、遥が覚悟を決めたのだから。


続く

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