第2話
「そのためにも、まずは世界を知らなきゃな。ここがどこだかわかるか?」
「んーさすがにこの平原からどの辺かなんてわからないよ」
「まずはシステム干渉してスキルをゲットするか」
システム干渉、ケイト達が世界を渡る際にもらえるユニークスキルとでも言えばわかりやすいだろうか。
転生モノだとよくある転生時に特殊能力を得る、という共通認識を利用して、世界に穴を開けて毎回世界を渡る際に取得するスキルだ。
ケイトたちの世界の神様がその世界に干渉して色々やるらしいが、彼ら自身もどうやっているかは知らない。
「ワールドアナライズ」
ケイトの言葉とともに目の前にウィンドウが現れ、取得可能なスキル一覧、書き換え可能なパラメータが表示される。
システム干渉というスキルはわかりやすく言うとチートだ。
ただ、修復という作業を行うためのスキルであるため、世界に唯一人が持つような特殊なスキルや、超人的な筋力といった桁外れた身体能力は取得できない。
あくまで、一般人が持っていてもおかしくはない、といったスキルに限定される。
そしてそれらは、ゲームに馴染んだ彼らが使いやすいように、数値化されウィンドウとして表示されている。
「うーん、衛兵や門番といった職業スキルをLv3ぐらい、パラメータ30程度が一般的な成人男性か。そして一般的なパラメータ50が上限と。それに対してパラメータ上限が9999、えぐいぐらい上下の差が激しいな」
「そりゃそうよ、乙女ゲームといえばかっこいい王子様が活躍するんだもの、そこらへんのモブなんて人権もないわよ」
「うへぇ、この世界のモブにだけは絶対に生まれたくないな」
推し以外が活躍するなんてこの世界を構成する人たちは望んでいないのだろう、そう考えればこの差は納得できる。
そして、これすら修復のヒントだ、そう考えケイトは気を引き締める。
「だが、そうなると困ったな」
「何が?」
何もわからない、といった顔でエリナが尋ねる。
「考えても見ろ、俺達の能力はこの世界の一般的な人たちを基準に世界を壊さない範囲に制限される。つまり、全パラメータ30前後でこの世界を変えていかなきゃならないんだぞ」
「なるほど。あと言い忘れたけど、私達魔力もないはずだよ?」
「は?」
正直ケイトはこの世界の攻略法、即ち修復の鍵はこの世界でも認められている
だがそれも否定された。
「だって、エタニティラバーにおいて魔法は貴族の特権だもの。たまに平民で魔法を使える人も現れるけど、それはヒロインの聖女のような選ばれた人だけだよ」
「なるほどな、じゃああれか。また前みたいに一般人並みのパラメータで魔法も使えず、コツコツ成り上がって地道に数百年かけて世界を変えていくのか……」
以前彼らは建国シミュレーションがベースの世界に修復に向かったことがある。
修復のための最終目標は世界平和だった。
そこでは人々はユニットでしかないため固定パラメータと人数だけの設定しかなく、スキルも何もあったものではない。
まず小国でコツコツ何十年も勤め上げ、クーデターを起こして国を分割、さらに小さくなった国で王になった後、何世代もかけて経済、文化、戦争によって世界を統一していった。
その間に、宇宙ロケットの発射や世界的な民族の象徴の建造など、色々絡め手も試したが、全て徒労に終わり、一番地味で面倒な方法で修復を成し遂げたのであった。
余談だが神の力で世界を渡る彼らにこの世界における寿命は存在せず、老化、転生も思いのままである。
実際自分がいくつなのかはもちろん彼らも把握していない。
諦め半分でウィンドウを覗いていたケイトはとあることに気がつく。
「ん? なんかコモンスキルが異常に多くないか?」
「え? うそ? 総スキル数5万?」
ウィンドウに表示された取得可能スキル数は5万以上、今までこんな世界はなかった。
剣術Lv1と剣術Lv2のように、上位スキル、下位スキル、みたいな関係のものもあったので、取得できる中で最上位スキルのみにしてもまだ1万ぐらいは残った。
これだけのスキルがあることも異常の原因の1つなのだろうか?
だがケイトにはこれが異常に繋がる理由、もしくは結果を思いつかなかった。
「これだけあれば何か使えるスキルはあるんじゃないか?」
一旦原因調査は諦め、何か使えそうなスキルがないか考える。
「配達人のLv3スキルの無限持久力、これがあればひとまず疲れることなく走り続けられるな。奴隷のスキルの熱耐性、冷気耐性があれば暑い地域寒い地域に対応できるし、空腹軽減なんかも食料を持っていない今なら有用だな」
「あとマップが見れるような奴があればいいんだけど」
「マップか、商人のスキルに土地勘ってのがあるぞ。これがあれば今いるおおまかな地域がわかるらしい」
一旦パラメータを一般上限の50に設定し、先程選んだ使えそうなスキルをセットする。
その瞬間、頭にルーデル領バハラマ平原という地名が浮かんできた。
「なるほど、ここはヴァルス聖王国のルーデル公爵が治める地域なのか。んで、王都はあっち、と」
顔を太陽からそむけるように、山々が連なる連峰に向けた。
その連峰の向こうに王都が存在する中央区が存在するはずだ。
というのが、コンパスを使わずともなんとなくわかった。
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