遠回りの思い

れんたろう

第1話 幼馴染

田舎に住む男女の遠回りな恋愛物語。


俺の名前は田中幸人。

「おい、ブス」いつも俺はそう呼んでいた。

ブスと呼んでいる子の名前は月島葵。もちろん彼女でもない。家も近所で幼稚園からの付き合い。世間では、いわゆる幼馴染と言われる存在だ。

彼女とはお互いに悪口を言い合う仲で、とても恋人とは程遠い存在。周りからは「仲良しだね」、「お前ら付き合えばいいじゃん」などと言われるがそんなつもりはさらさらなかった。

私は、月島葵。

「おい、お前」いつも私はそう呼んでいた。

私が、お前と呼んでいたのは田中幸人。家から200mほどのところに住んでいる幼馴染だ。

私たちは幼馴染だけど、なぜかお互いに名前では呼び合わない。小学校の時から、学校での席は50音順で決められていた。彼は田中、私は月島、席は前後。その関係が小学4年生から中学1年生の今まで続いている。


幸人は昔からサッカーをしていた。サッカー少年だ。サッカーをしていた分、運動神経もよく足も速い。勉強面はイマイチだが、面白くて男女からの人気者。常にクラスの中心にいた。

葵は特にスポーツをしているわけではないが、男女ともに友達が多い。誰にでも優しければ面白い。葵のことを好きな男子は沢山いる。性格がいい上に似た目も可愛い。アイドルのような存在。

幸人と葵は2人ともクラスの人気者で誰とでも仲良くできる。しかしお互いにだけは仲良くできない。それは嫌いとは違う。お互いに心の底では他の誰よりも仲良しとわかっている。授業中も先生からはよく2人セットで怒られる。「蒼!幸人!お前たちはいつまで喋っているんだ。」と先生に怒られる。

幸人「先生、俺じゃなくて、あのブスが喋りかけてくるんだ」

蒼「は!?なに言ってるの!?お前じゃん」

周りから見ればすごく仲良しで微笑ましい。

そのやりとりはすごく楽しい。

給食の時間になれば野菜嫌いの幸人と肉嫌いの蒼は先生にバレないようにお互いの嫌いなものを交換し合う。

2人は口には出さないがお互いにすごくわかり合っている。最も近しい存在。学校で毎日会える。登下校も時間が重なればすごく楽しい、家が近いのでばったり会うこともある。とても身近で当たり前の存在になっていた。

中学1年生になってもクラスは同じでもちろん、席は前後。先生からもセットで怒られる。幸人はいつまでもこの関係が続くと思っていた。

ある日、葵は告白された。相手は小学校から同じの横内康平。彼は野球少年で、あまり前に出るタイプではない。しかし幸人とは仲がいい。みんなと仲が良かった葵は康平から好意を持たれていたのだ。

葵と康平は仲が悪いことはないが話しているところは頻繁には見ない。

突然、「好きです。付き合ってください」康平は放課後の部活前に顔を赤くしながら伝えた。

想いを伝えられた葵は、、、、、、、

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