美しいとはこういうことさ

ジュン

第1話

「君の好きな絵画作品はなんだい?」

柳田はきいた。

「絵ですか?」

「そう」

「一番好きなのは、フェルメールの絵かなあ」

宮沢はそう答えた。

「フェルメールか」

柳田は続けて言った。

「ルネサンス絵画は本当に素晴らしいけど……」

「けど、何ですか?」

「ラスコーやアルタミラの洞窟壁画はもっと感動する。そう思わないかい?」

「そうですね。圧倒的でしょうね……」

「だろう。まあ、もっとも、紅葉や一面の菜の花のような大自然の美しさを前にしたら、人間の『美術』なんてものは勝ち目はないんだけどさ」

「そうですね……」

柳田は、しばらくの沈黙の後、こう言った。

「小学生の娘が描いた『パパの似顔絵』が、僕にとっては一番の絵なんだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美しいとはこういうことさ ジュン @mizukubo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ