第2話 ほぼコンビニバイト
「いらっしゃいませー」
「いつもごめんね…ウチ人手が足りなくて
申し訳なさそうに声をかけてきたオーナー。
そんなオーナーと現在レジにて2人きりである。
「いえいえ生活費稼がせて頂いてる立場ですので」
「他の子には内緒で時給上げとくから」
ボソッと私にだけ聞こえるように伝えられた言葉に反応する。
「ホントですか?!流石オーナー店…やっぱりオーナー店しか勝たん」
コンビニバイト、これが現在の私の仕事と言っても差し支えない。
バイトは職歴ではない、しかし、かといって今の私が所属している事務所はお世辞にも弱小事務所というどころか、超が消えない弱小事務所なのだ。Yah〇〇で調べても出てこないので実質コンビニバイトとしか言えない。
つまりは底辺アイドルと言うしかない。
「もう一度聞きたいんだけど四月一日さんウチの正社員になってくれたりは…」
「それはありがたいんですけど…もうちょっと考えさせてもらっても」
「そうかぁ…まぁ気が変わったらいつでも正社員になってくれていいからね」
お前も正社員にならないか?というプレッシャーを感じなくもないオーナーの視線を何とか躱す。
そんなオーナーに曖昧な表情で言葉を返すが、正直正社員というのは魅力的な話ではある。私の現在の年齢は24歳…大学を卒業してから2年が経過した。もう新卒という最強のカードは手札から没収され、職歴無しというバッドステータスだけを抱えてしまった。…いや、正確には卒業から3年は新卒扱いになるはずなのだが、気持ちの面で新卒として就活に挑むのは厳しいことを受け入れてしまっているのだ。
そんな大きな犠牲をかけながらもその間アイドルとしての活動は皆無に等しい。私の収入はコンビニバイトから供養されている。地味に大学時代からここでやっているのでもう5年ほどになる。お客さんのほとんどは顔見知りになっている。話すことはないが、何となく私に会釈していくお客さんも多い。もうここに永久就職してもいいんじゃないかなって。
でも、そんなときにふと脳裏に浮かぶのである。
…あの日実の母に対して土下座したことが。
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