おゆうぎ
少年は村のガキ大将だった。大人に何を言われようが自分の意志を貫き通す、幼いのに人情深い子どもだった。
いじめられていた少女を見つけると、すぐに助けて笑顔で「大丈夫だ」と言ってやった。雨に打たれる捨て猫がいたら、傘を差して一緒に雨に降られた。道に物騒なものが落ちていれば、誰も知らない場所に隠した。仲の良かったアンドロイドの暴走が始まれば、涙を流しながらとどめを刺した。首を吊って死んでいる青年がいれば、おろして、埋めて、墓を作ってやった。そんな少年だった。
子どもであれば誰でも、その少年のことを信じ、頼り、好いていた。
だから、大人はそれを利用した。
ある日突然その少年がいなくなったかと思えば、翌日に帰ってきた。しかし、何かが違っていた。
少年は、周りの子どもたちに武器を配った。戦い方を教えた。どうしたら戦場で生き残れるか説いた。大人の言うことを聞くようにと、子どもたちに言い聞かせた。少年の瞳は戦いを求め、赤く光っていた。
村の外から攻めてくる敵を前に、武器を構える。少年の叫びを合図に、子どもたちは無謀にもその敵へと突っ込んでいく。子どもたちの倍以上もある大きさの敵に向かって、走って行くのだ。発砲しながら、剣を振り回しながら、爆弾を投げながら。
背後で大人が楽しそうに見ていることにも気付かずに、子どもたちは命を落とす。戦の中で死んでいく。
その少年は、涙を流しながら、敵兵の中心へと駆け出す。右手に持ったボタンを押す。身体に巻かれたそれが、爆ぜる。悔いなどひとつもなかった。
だって大人に命令されたから。
お題「支配された少年」
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