妄想に耽ける
伊東銘
はじめの一歩すら。
此処じゃない何処かに行きたくて。
自分じゃない誰かになりたくて。
いつからかわからないけれど
ずっと昔から、キラキラした生活に憧れていた。
人の生活を支える仕事より、
健康で文化的な最低限度の生活の「文化的」な部分を担う人になりたかった。
誰かを幸せにする、誰かを笑顔にする、
人の気持ちを動かす人になりたい。
幸せの手伝いをしたい。
多分ディズニーが好きで、キャストさんに憧れたとこからはじまってる私の夢。
ずっと憧れていたし、何者かになれる気でいた。
なにか人とは違うものがあると信じていた。
現実は地元の工場の事務員。
小汚い会社に綺麗な服を着ていく気にはなれず、よれよれの服を毎日着てスニーカーで出勤。 ダサい制服を着て髪はひとつに結んでひたすらパソコンと電話とにらめっこ。
はー仕事辞めてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
初めはステージの上にあこがれた。
それは流石に顔と才能がついていかないなって思って中学生あたりで裏方にあこがれた。
高校生で将来を考えたけど、母子家庭の私には専門学校に行くためのお金ないな。って気づいた。
奨学金は借金だよ。ってサイトで見かけた。
本当にそこでつけた知識を使ってお金を返せる? 裏方を学んだ所で裏方で満足できる?
役者の学校に行って上手くいくなんて本気で思ってる?
サービス業は土日休みじゃないよ。友達とも休み合わないしイベントだって行けないんじゃない? 残業多いよ。プライベート無くなるよ。
そのマイナスの可能性に勝てるレベルの力、
私にはある?
うちが母子家庭じゃなければ。
顔が整っていれば。特徴的な声だったら。
スタイルが良ければ。踊りが上手ければ。
東京生まれだったら。親戚が都会にいれば。
親がなんでもとりあえずやってみろ!みたいな感じだったら。
頭が良ければ。劇団に入っていれば。昔から何かしらの秀でた才能があれば。音楽が身近だったら。約束された未来があれば。
どれか1つだってあれば。
いっその事、守りたい現状が無ければ。
こんな所で、こんな格好で、こんな気持ちで、
こんな生活送ってなんかいなかったのに。
ずっとそう考えてる。
考えてるだけ。
せめてそういうバイトしてみるとか、
ダイエット本気でするとか、上京してみるとか、そういう努力は何一つしてないし
SNSで自分をみせたりもしてない。
そう、お気づきかと思いますけど私、
はじめの一歩、数ミリすら、
歩めていないのです。
現状に文句言って、どうせ無理だと嘆いて、
現実的に考えてしまう自分の思考を止められない。
無我夢中で夢に突き進める少年漫画のヒーローって何食って生きてきたんだろうね。
羨ましい。
結局私は生まれてこの方18年間、
布団の中で見る夢を
起きてもなお見ていただけで、
夢を目標に変える強さが
かけらもなかったのだ。
まだ若い。なんて、多分気の所為。
私が憧れたような人物はもうとっくに動き出している。
少なくとも布団の中からは。
結局私って何がしたいんだろう。
誰かに見られる側になりたい。
都会に住んで、何かを成し遂げたい。
何かを始めたいんだよ。
でも今の現実は外出するだけでも咎められるし お金はないし 勇気もない。
何かのせいにするのやめたい。
とりあえず1歩、何から踏み出そう。
多分明日も明後日も、来週も翌月も来年も
同じことを考えながら よれよれの服を着て、
スニーカーで、ダサい制服着て、パソコンと
電話とにらめっこしてるんでしょうね。
最悪だよ。自分。
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