相方と散歩

シヨゥ

第1話

「散歩にでも行こうか」

 休日だというのにこもりっきりというのは心にも体にも悪影響だ。体がなまっていく。悪い考えが深堀されていく。やはり少しは外に出るのが正解だ。

「いいね。行こう行こう」

 持つべきものはノリのいい同居人だ。ひとりでは外に出るのにためらってしまうが、相方を持つとそれがない。誘った手前動かなければ噓になるというちょっとした思い。それが体を軽くする。

「行き先はとりあえず歩きながらで」

「そうしよう。ちょっと準備するから先に出ていて」

「分かった」

 ジャージから着替えぼくは先に家を出た。


「気になるパン屋があるんだ」

 歩きながら相方が言う。

「それじゃあそこへ行こう」

「休みかもしれないよ?」

「休みだったら休みだって知れたことが収穫だよ」

「それもそうか」

 ぼくらの散歩は極力地図を見ない。情報を調べない。気の向くままに近所を歩き回る。ちょっとした変化を見つけて楽しむのがぼくらのやり方なのだ。

「やっぱり休みだったよ」

 パン屋の入り口には定休日の文字。

「日、水定休なんだね。それじゃあ来週は土曜に来よう」

「そうだね。じゃあどこへ行こうか」

「この間オープンしたカフェはどう?」

「あそこかーちょっと遠いよ?」

「それでもぼくは行ってみたいんだ。お茶がおいしいって大家さんが言ってたし」

「あの大家さんが言うなら間違いないね。行こう行こう」


 帰ってくると相方はほんの数分で昼寝してしまった。それだけいい運動ができたということだろう。

 ぼくも少し眠い。疲れているのもあるけれど、きっと相方の寝息を聴いているせいだろう。

 こらえるのをやめて相方の隣で横になる。すると睡魔は一気に襲ってきた。

 相方と散歩をして昼寝をする。なんて理想的な休みの過ごし方だろうか。これをきっと幸せというのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

相方と散歩 シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る