第76話 少女の受難
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
思わず、ルナが叫び声を上げる。
「何、何なの!?」
何が起こったのか分からないといった様子で、ルナは慌てふためいた。一方、
「……」
コハルは慣れているような落ち着きを見せていた。その姿が、ソールには異様な感じに見えた。
「これは……」
ソールが床を見ると、どうやら外から石が投げ込まれたらしいことが分かった。
「一体誰が?」
急いで家の外に出て、割れた窓の方へと走ったソール。しかし、そこには人影は既に確認出来なかった。
「……」
ソールは周囲を見渡した。辺りには人の姿は何も見られない。それが、ソールの中で違和感を覚えさせた。
(何だ……?何かがおかしい……そうか!)
ソールは違和感の正体に気付くと、再びコハルの家の中に戻って行く。
「二人とも大丈夫?怪我はない?」
急いで戻ったソールは駆け付け様に二人の無事を確認した。
「大丈夫、怪我はしてないよ。でも……」
ルナが答えたが、その声には普段の元気な様子は見られなかった。ルナはただ、立ち尽くすコハルの方をじっと見ていた。
「……平気よ。よくあることだから」
そう言うコハルの顔には、感情が見られない無機質な表情が浮かんでいた。
「よくあることって……」
ルナが思わず呟く。
「きっと、本当によくあることなんだと思うよ。でなきゃ、今頃周りは騒ぎになってるはずだから」
ソールは悲し気に言った。
(あんなに怪奇現象に敏感な町の人が、今の物音に反応しないはずはないんだ。つまり、今さっきみたいなこの子に対する嫌がらせは日常茶飯事だってことか……)
ソールは胸に込み上げる物を感じ、拳をグッと握り締めた。
(このままこの子が『魔導』を使った悪戯を止めたとしても、この子が救われたことにはならないんだ。周囲からの嫌がらせが続き、またこの子は孤独に生きることになってしまう……。何とかして、この呪縛から解放してあげる方法は無いのか……!?)
そこまで考えに至った時、ソールはあることを思い付く。
「そうだ、そうだよ。コハルちゃん……!」
ソールがコハルの名を呼んだ時だった。
「……っ!」
ばたりと、コハルがふらふらと揺れ、そして床に倒れてしまった。
「コハルちゃん!?」
ルナとソールは突然のことに驚きながらも、コハルに駆け寄った。その少女の顔は酷く青ざめていた。
「一体、どうして急に……!?」
その時だった。カランカラン、とドアの方から開く音がした。
「……やっぱり、起きたのね」
そう言って顔を見せたのは、先程ヴァーノと姿を消したはずの魔導士ウォルだった。
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