第7話 逃走の道で
少年達は、自分達が先程来た道を遡るように、坂道を必死に走っていた。
「大丈夫?ルナ」
「私は平気。それよりソールこそ……」
「僕も大丈夫だよ」
走りながらも二人は会話を続けた。
「上手くいって良かった……!ごめんルナ。巻き込んじゃって」
「それ言いっ子無しだよ。ソールだって、なりたくてこうなった訳じゃないでしょ?それに、こうしてあそこから逃げられたのはソールのお陰なんだし」
「……敵わないな、ルナには」
ソールはそう言いながら、胸を撫で下ろした。
「ねぇ……、さっきの力って」
「うん?」
「ソール、何か知ってる……よね」
「……」
彼女の疑問に対して後ろめたさがあるのか、少年の足取りが鈍くなる。
「もしかして、私には言えないこと?」
(……言った方がいい。でも……言ったら、巻き込むことになる……)
「……ごめん、今はまだ言えない」
「……そっか」
少女は納得してはいないものの、彼女なりに少年の気持ちを汲み取ろうとしていた。
「……じゃあ、今はいいよ。こんな時に変なこと聞いちゃったよね」
「……そんなことは」
「その時が来たら……!」
ソールが言おうとするが、ルナはそれを遮るかのように
「その時が来たら、教えてよね」
(ダメダメだな、僕は……)
「……うん、約束する」
一瞬の逡巡があったが、ソールは何かを覚悟するように頷いた。
(僕にもっと、勇気があったら……)
そうしている間も、二人は足を止めずに道を下って行った。
「……ここまで来れば大丈夫、かな?」
暫く走って行き、気が付くと二人は街中まで戻って来た。先程までの賑わいは何処へ行ったのか、大通りの人だかりはすっかり収まっており、人混みに紛れてやり過ごそうにもそれが叶わず、二人は困惑していた。その中で身を隠せる場所を探していると、大通りから外れた所に裏路地を見つけ、そこに身を潜めることにしたのだった。
荒んだ息を整えるため、暫しの間お互いに何も口に出さなかったが、
「これからどうしよっか……」
月夜に続く不穏な静寂の中、ルナが口火を切った。
「……」
それに対し、ソールは沈黙をした。彼自身の中にも、その問いへの答えが見つけられずにいたからだ。
「……あのね」
ソールの胸中を察したか否か、ルナが続けた。
「今日は、宿屋で過ごさない?」
突然の提案に、ソールは少し戸惑った。しかしすぐに、
「……確かに、どこまで僕のことを向こうが知っているか分からないもんね。部屋には戻らない方がいいか。……うん、その方がいいね」
自分の中で彼女の言葉と自分自身の思考を咀嚼しながら、彼は答えた。
「じゃあ決まりね。気を付けて行こ」
「うん」
これからの行動の方針が決まった二人は、月が照らす街路へと足を踏み出した。
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