よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft

ヒロインだぁ?悪役令嬢だろ?アタイは!

短編って難しいですね。

息抜きで書いた短編が完結しなくて、連載小説を後回しで書くハメになりましたorz



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ジュエリー王国には四大公爵家が存在していた。

東西南北を守護する王家の血筋が大小なりとも通っている大貴族家である。


その中に、アメジスト公爵家があった。四大公爵家でも、筆頭を担ってきた重要な公爵家である。


そして現在、問題を抱えていた。


直系の者が『私』のお母様しかいなく、親戚は多くいたが、直系の血が薄くと『ある理由』でお母様と年の近い人物が私の父親しか居なかった事から、泣く泣く出来の悪い父親を婿養子に招き入れて、私が出来たって訳だ。


因みに、双子の弟もいるぜっ?

おっと、言葉が悪いか?

双子の弟もいますわ♪おほほほ………


アタイ………私はこの世界では『シオン・アメジスト』って名付けられたの。

ここまで言えばわかるよな?


そう転生者だ。

中身は40近くのおばさんだぜ。JKとかじゃなくて悪いな!


前世では山○組の分家でブイブイ(死語)言わせていたんだ。任侠だけじゃメシは食えねぇからな。


どうしてアタイがこんな異世界に生まれ変わったのかは知らねーけど、せっかくの2度目の人生を楽しもうじゃねぇか!



この世界では、おしとやかに生きていこうと思っていたんだが…………


流石に、アタイを産んでくれた優しい母親が『毒』を飲まされて寝たきりになったら切れても良いよな?


あれはアタイが4歳になり、ようやく屋敷内を動き廻れるようになった時だった。アタイはこの世界の知識を学ぼうと、公爵にあった書斎に入り浸るようになった。

神様にあった記憶はないが、多分チートの効果で、この世界の言葉と文字が読めた。

ラッキーだったぜ!


そして、その頃にはアタイの母親は寝たきりになっていた。

元々、身体の強い人では無かったらしい。

それでも、ベットで身体を起こして領主としての仕事をしていたのには驚愕した。


アタイは、思わず聞いてしまった。


「お母様、体調が悪いのですから安静にしてないとダメです!」


慣れねぇな!

子供らしい言葉?と口調で母親をいたわった。


「ふふふ、シオンは優しいわね。お母さん嬉しいわ。でもね?領主の仕事が滞ってしまうと、領民が困ってしまうから、お母さんが頑張らないとね」


「それならお父様にお願いしてみては………」


そう言うとお母様は目を伏せて悲しい顔をした。


「あの人は義務を果たしたからと、働かないのよ」


義務と言うのはアタイと弟のルークを産んだことだろう。

ってか、病弱なお母様を放って置いて、遊び廻るってどんだけクズなんだよ!


アタイは母親の負担を減らすべく、書類を読んで、少しずつ仕事を手伝っていった。


お母様、アタイは………いや、ここからは貴族令嬢として丁寧な言葉でいう。

私は感動したよ!自分の事より他人の為に頑張るお母様………私は、こんな健気な人間に弱いんだ。


最初は戸惑うお母様も、私がある程度仕事の内容を理解しているとわかると驚いて、少しずつ仕事を任せていった。


そして1年が過ぎて5歳になった。


そんな時だった。お母様の食事に『微量の毒』が仕込まれているのがわかったのは。


前世の知識から、お母様がベットから録に立ち上がれない事に疑問を持っていた。

意外とお母様は食事をガッツリ食べていたからだ。掛かり付けの医者も、病気の特定は出来ておらず、栄養材など処方しているだけと聞いたのは驚いた。


おいおい!どうなっていやがる!?

そこでアタ……私は気付いてしまった。

前世の知識で、これは盛られているのでは………と。


そこで、暫くの間お母様の食事を私が運んで一緒に食べると、みるみるお母様は元気になっていった。まぁ、書斎で解毒作用のある薬草やハーブを調べて、コックに頼んで食事に混ぜて作ってもらったのが良かった。


いや、マジでコックが敵じゃなくて良かったぜ!


そして、わざとお母様が元気になったと言って食事を運ぶのを止めた。すると、焦った敵は案の定、配膳の途中で毒を入れると踏んで、現場を押さえた。


そして詳しい話を聞くために一週間ほど閉じ込めて、その間にメイドの身辺調査を依頼した。


私は少し元気になったとはいえ、まだまだ元気に動き廻れないお母様には内緒で、屋敷で働いている執事やメイド達を大広間に集めた。

公爵家であるので、パーティーを開く大きな部屋があるのだ。


大勢の使用人の目の前には猿ぐつわをされ、身体を縛られているメイドがいた。

そう、お母様に毒を盛ったメイドだ。


そして、私の側には金で雇った私個人の私兵が完全武装で10人ほど控えていた。


「………最初に言っておきます。私をただの5歳の子供だと思わないことね!」


私の怒りに満ちた声とガンを見た使用人には、5歳の少女に恐怖を覚えた。

そもそも、たかだか5歳の子供が公爵夫人の仕事を手伝っているのは知られていた。


故に、ただの子供ではないと使用人達は認識していた。


「ここにいるメイドが長年に渡り、微量の毒をお母様に与えていました」


!?


「なっ──」

「そんなっ!?」


使用人達から戸惑いの声が上がった。


「事実です。私は不思議に思っていたのよ。医者も病気の特定ができず、日に日に弱っていくお母様に。だから食事に毒が入れられているのではと思い、暫く私が運びました。そしたらみんなも知っての通り、お母様は元気になりました。だから運ぶのを止めれば、また毒を盛るだろうと、泳がせたのよ」


使用人達は畏怖した。僅か5歳の少女がそんな事を考えていたとは!?


「今からこのメイドを殺します」


!?


シオンの言葉に、長年仕えていた老人の執事が問い掛けた。


「シオンお嬢様?今、なんと………?」

「聞こえなかった?このメイドを殺すと言ったのよ。『公爵家の当主』を毒殺しようとしたのよ?当然でしょう?」

「いくら何でもやり過ぎです!然るべき場所に送り、司法の手で裁かねば罪になりますよ!」


シオンはバカにしたような顔で言い返した。


「長年仕えているのに、貴方の忠誠心はそんなものなの?領民想いのお母様が長年に渡り毒を盛られていたのよ!許せる訳ないでしょう!?そこは自分が代わりに殺しますと言うぐらいしなさい!」


シーン…………


シオンの余りの怒号に執事は何も言えなくなった。


そしてシオンは特注で作らせた、拷問用の短い鞭を取り出した。


「お、お嬢様?何を……?」


誰かの声を無視して、鞭が振り落とされた。


猿ぐつわから、声にならない悲鳴が上がった。


「言ったでしょう?このメイドを殺すって!でも、お母様の敵がこいつ1人だとは限らないでしょう?だから拷問して吐かせるのよ!」


2度3度と鞭が降ろされる度に、悲鳴が上がった。服が裂け背中に赤い後が何十も付いた。


気を失うと水を掛けて無理矢理起こした。


「ねぇ?猿ぐつわを外してちょうだい」

「よろしいのですか?」


「ええ、手足は縛ってあるから大丈夫よ。それより、これ(鞭)を作った者に礼を言わないとね。非力な私でも十分に威力がでるわ」


使用人達はシオンの不敵な笑みに心底恐怖した。


「た、助けて……ください!もう、許して……」


息も絶え絶えに懇願するメイドにシオンは絶望を与えた。


「許すわけないでしょう?公爵家の当主の命を………お母様の命を狙ったのだから。ああ、あのクズ父親ならいくらでも殺していいわよ♪」


絶望に涙を流しながら命乞いをするメイドにシオンは言った。


「他の仲間の情報を吐けば、楽に殺してあげるわ」

「それは知りません!前にも言ったじゃないですか………」

「それじゃ、雇い主は?」


「依頼人とは……会ってませ…ん。仲介者を通しての……やり取りだったので……」


シオンはため息を付いた。


「それも定番ね。確かにバレてこんな目に会う可能性もあるからね」


シオンは鞭を地面に叩いた。


「もういいわよ。貴女が口を割らない理由もわかっているから」


!?


メイドは驚いた顔をしてシオンを見た。

シオンは側にいた護衛に

目配りをして説明するよう促した。


「お嬢様に言われてこのメイドの身辺調査をしたところ、実家の家族の所に行きましたが、少し前に…………あの、言っても?」

「いいわよ。言ってやりなさい」


護衛は言い難そうに、一呼吸置いてから言った。


「少し前に不審火で全員が焼死していました」


「嘘よ!!!?」

メイドは弱っているのに大声で叫んだ!


「これが貴女の選んだ末路よ。家族を脅されて言う事を聞いていたんでしょうけど、あなたは間違えたのよ」

「ま、間違え………た?」


「そう、あなたがこっそりで良いので、お母様に手紙でも良いから助けを求めれば、優しいお母様なら、全力で貴女の家族を助けたでしょうに。それを貴女は言いなりになって、その唯一助けてくれる可能性のあったお母様に毒を盛って殺そうとしたのよ!」


!?


「あ、あぁぁ……………」


メイドは心が折れたようで、静かに泣くだけだった。


「これでもう依頼人に遠慮する意味はないわ。貴女を脅して命令した者と、仲間の事を言いなさい!」


メイドは虚ろな目で答えた。


「………わたし……に命令……したのは……あなたの父親……ゲイル公爵……よ」


シオンは腕を組んでやっぱりねと頷いた。


「まだ証拠が足りないわね。こいつの証言だけじゃ弱い。いっその事、逆に毒殺しようかしら?」

「お嬢様、そういう事は思っていても大勢の前では言わないように」


護衛に注意され、シオンも無駄話を止めた。


「それで?仲間は?」


メイドは2人の仲間の名前を言ったが、その場にいた2人は必死に違うと弁解した。


「まぁ、良いわ。こいつが嘘を付いているのかをそれとも騙されているのかは、調べればわかるから」


名前を言われた二人は拘束され、暫く部屋で軟禁される事となった。


「もう、思い残すことはない?」

「………ないわ。殺して……ごめんなさい」


シオンは護衛から剣を取り出すとメイドに突き付けた。


「せめて、苦しまないように死なせてあげる」


シオンは助走してからメイドに剣を突き刺した。周囲から悲鳴が上がった。


「これは私の罪よ。そして覚悟の証!」


血塗れになりながらシオンは、この場にいた使用人達を見渡した。


「私の家族はお母様と弟の二人だけよ!私の家族に手を出した者は許さない!」


とても5歳の子供とは思えない気迫に、使用人達は自然と片膝を付いて、忠誠を誓ったのだった。


「先に言っておきます!お母様は何年も微量の毒を摂取していたせいで、長くは生きられないわ」


使用人達はハッと顔を上げた。


「もって数年の命らしいわ。だから私は悔いの無いようにお母様と弟のルークとの時間を大切にしたいの。お母様が死んだら、次期当主は弟になるのだけれど、弟が成人するまでは私が代理人を務めます!あのクズ父親にはいずれこの報いを受けてもらいます!だからみんな付いてきて!」


使用人の中にはシオンの存在がとても大きく見えた。中には涙を流している者もいた。


「………このメイドはお母様に毒を盛った重罪人だけど、丁寧に埋葬してあげて」


護衛の数人はあらかじめ用意してあった棺に遺体を入れて連れて行った。


「これで私は人殺しです。公爵家の汚れ仕事は私が請け負います。あなた達の待遇も不満があれば言って下さい。できる限り改善に務めます。でも──」


一呼吸置いてから言った。


「私の家族に手を出したら地獄を見せるから、肝に命じなさい!」


はいっ!と、大きな声で答えた使用人達は、誰が主なのと悟ったのだった。



それからはあっという間だった。

お母様は3年間、必死に生きて私達が8歳の時に他界した。

お母様の死に顔は安らかであった。全てを私に託して安心して逝った。弟のルークにも、お母様の事を覚悟をするように言っていたので、そこまで大泣きはしなかった。グスンッ



そして、お母様が亡くなって一週間経ったある日──


クズ父親が愛人と愛人の子供を連れてやってきた。


「まぁ♪ここが新しいお家になるのね!」

「うわぁ~大きいです!」

「わっははは!!!そうだろう!そうだろう!」


はぁ~、こいつ自分の妻であるお母様の葬儀にもでないで、公爵家の別荘で愛人と一緒に暮らしていたんだよね。

そして、本館であるここで暮らしたいからお母様に毒を盛って『殺した』んだよね?


シオンはあらかじめ、準備していた事を実行に移した。


「衛兵!衛兵!不審者が入り込んでいるわよ!早く捕まえなさい!」


あっという間にクズ父親と愛人と娘は捕まった。


「貴様!私を誰だと思っている!さっさと放せ!私はアメジスト公爵家の当主だぞ!」


わめきたてるクズに、衛兵は笑いながら言った。


「こいつ頭がおかしいみたいですよ。アメジスト公爵家の当主様ならあそこにいらっしゃる」


衛兵はシオンに腕を伸ばして言った。


「あらあら、私は弟のルークが成人するまでの代理人ですわ。アメジスト公爵家の当主はルークですのよ?」

「はっ!申し訳ございません!」


衛兵は敬礼をして頭を下げた。


「バカを言うな!私が当主だ!」

「はぁ~、って言うか?あなたはどこの誰なのですか?」


シオンは心底バカにした顔で言った。


「貴様!父親の顔を忘れたと言うのか!」

「あら?そうでしたの?父親なら、お母様の葬儀に出席するはずですし、仕事もしますわよね?うちに穀潰しはいらないですわ」


親父は、ななっ!?と口をパクパクさせて戸惑っていた。


「そうそう、1つ良いことを教えて上げますわ。お母様の葬儀の後、アメジスト公爵家の当主の葬儀にも顔も出さないゲイル・アメジストは、親族会議で満場一致で貴族籍を抜き、平民とする事が決まりましたわ」


「なっ!?バカな!!!」

「その効果が実行されるのは、愛人とこの屋敷に足を踏み入れると効力を発揮するそうですよ?ぷっ、あははははっ!!!!」


シオンは大笑いをした。


「こんなバカな条件を満たして、貴族から平民に落とされるなんて、きっと一生このジュエリー王国に語り継がれるでしょう!あははは!!!」


シオンの笑い声が響き渡り、使用人達が集まってきた。


「貴様!殺してやる!!!おい、誰でもいい!私を助けろ!!!」


ゲイルは叫ぶが誰も動かなかった。


「何故だ!何故誰も助けない!クビにされたいのか!?」


使用人達もクスクスと嗤った。


「平民にさしずされる覚えはありません」

「だいたい、仕事もせず公爵家の財産を食い潰すだけの穀潰しが何を言っているのか?」

「ここでの使用人は貴族が大半で平民に命令されるいわれはありません」


使用人達の声はクズ父親にも聞こえていて、真っ赤になって震えていた。


「さてと、平民になったことでようやく裁けるわね?」


シオンはあの時の鞭を取り出した。


「な、何をする気だ!」

「何って、罪人の断罪ですわ!」


シオンが鞭を振るい、ゲイルの悲鳴が上がった。愛人とその娘は何が起きているのかわからず震えていた。


「こ、こんな事、許されるはずがない!……うぎゃ!」


何度も何度も鞭を振るった。気を失った所で、『塩水』を掛けて目を覚まさせた。

汚い悲鳴が上がる。


「貴様、許さないと言ったな?それはこちらのセリフだ!メイドを脅してお母様に毒を盛らせたな!その報いを受けろ!」


!?


「し、知らん!そんな事は知らんぞ!」

「見苦しい。すでに調べは付いている!貴様が雇ったゴロツキも、殺人と放火の疑いで処刑されている。貴様だけは、腐っても公爵家の一員と言うことで、なかなか断罪出来なかったが平民になった今、安心して殺せるわ」


シオンの言葉に、ここにきて初めて心底恐怖した。


「き、貴様!実の父親を殺すと言うのか!?」

「お前こそ、お母様を殺しただろうが!」


うぐっと口を閉ざす。


「さて、どんな死がお望みか?」


使用人に台車を用意させ、その上には様々な刃物が置かれていた。


「ねぇ?これなんてどうかしら?小さい刃だから、たくさん切り刻まなければ死なないわよ♪」

「ま、待て!許してくれ!!!?」


ようやく命乞いをしてきたが、シオンは許す気は無かった。


「はぁ?許す訳ないでしょう?お母様に毒を盛って、メイドを脅迫してその家族まで殺した『外道』な貴様を許すつもりはない!」


シオンは激情に駆られて大きな刃物を振りかぶった。


「待って!姉さん!!!」


振り替えると弟のルークがいた。


「ルーク!部屋に居なさいと言ったでしょう!」


ゲイルはようやく助けがきたと勘違いして、懇願した。


「おおっ!我が息子よ!助けてくれ!?このままでは娘に殺される!」


しかしルークは動かなかった。


「な、何故助けない!?」

「はぁ?何を勘違いしている?優しいお母様を殺した貴様を助ける訳ないだろう!」


!?


ゲイルは小さく呻くばかりだった。


「部屋に戻ってなさい。ルークはこのような汚れた物を見る必要はないわ」

「いいえ、姉さんだけに辛い思いをして欲しくありません。僕にも姉さんの重荷を背負わせて下さい!」


シオンは弟の成長を嬉しく思った。


「それに、お母様の仇は僕も討ちたいので」


ルークもゲイルを睨み付けた。


「うぁ………頼む……許してくれ」


すでに叫ぶ力もなく懇願するが──


「ルークには余りこういう事は、知って欲しくなかったのだけれどね。いいわ、ルークが成長したお祝いにひとおもいに殺して上げる」


シオンとルークは細身の剣を選んだ。

そして一緒に握ってゲイルの心臓に突き立てた!


短い悲鳴と共に動かなくなった。


「ごめんねルーク、ありがとう」

「ううん、いつも守ってくれてありがとう姉さん。これからは僕が姉さんを守るから」


二人は恋人のように見詰め合って微笑んだ。

そして思い出したように、まだ転がっている愛人とその娘に目を向けた。


「そうだったわ。貴女達が残っていたわね?」


ひぃっ!?


二人は小さな悲鳴を上げた。


「さて、クズ親父に取り入ってずいぶんと散財してくれたわね?どうやって返済してくれるのかしら?1番確実な返済方法は娼館に売ることだけど…………どうする?」


ガクガク

ブルブル


二人は震えるばかりだった。


「返事がないわね?それともバラバラにして臓器を売る方がお望みかしら?」


震えながらも、愛人の方が娘を庇うように動いて頭を下げた。


「も、申し訳ございませんでした。私が何年掛かっても、今まで使ったお金をお返し致します!せめて娘は御許し下さい!」

「お母様!?」


あら?意外でしたわ。醜く自分だけ助けて欲しいと罵り合うと思ったのですが…………


まだ、更正できるかしら?


シオンは少し考えてから、周囲を見渡してから二人の処遇を伝えた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


あれから月日が流れました。

私とルークは19歳、愛人の娘であったライラは18歳となった。


あの時、シオンがくだした提案は皆が驚くものであった。


愛人であったリリエールを正式に『義母』として迎え入れると言うものであったからだ。


「貴女の事は調べたわ。元子爵令嬢で、没落した後は、貴族や裕福な商人の子供の家庭教師をしながら生計をたてていたのね。そして、不運にも酒場で、クズ親父と出会い大金を積まれて愛人となった……」


貴族令嬢が1人で苦労して生きているとき、しばらく遊んで暮らせるお金をポンッと出されると、誘惑には勝てないわよね。


「はい………苦労してお金を稼いでいたのに、何の苦労もしていないゲイル公爵から貢がれたお金を見たら、バカらしくなって………うぅぅ」


「そうね。元子爵令嬢だったのだから、貴族として公爵家の夫人としての業務を覚えて貰うわ。ここには穀潰しはいらないの。そして、私の妹になるライラだったわね?」

「は、はい!」


シオンは目を細めて言った。


「母親に免じて許して上げる。これから私の義妹として、公爵家の一員として恥ずかしくない教養を身に付けてもらいます。それさえ頑張れば、それなりに贅沢な暮らしを約束するわ。どうかしら?」


「お、お母様と離れなくてもいいの?」

「…………ええ、お母様が居なくなる辛さは知っているつもりよ」


ライラは7歳であるが聡い者であった。ゲイルのせいで、わがままになっていた所はあったが、自分の命を守る為にそれから必死に勉学に励んだ。


シオンとルークは、最初は信用していなかったが、勤勉に務めたライラを見ているうちに、次第に心を開いた。


シオンは教師を雇い、常識の範疇で厳しくも優しく教えた。母親が家庭教師をしていたこともあり、しっかりと勉学は教えていた事も良かった。



そして、社交界にデビューしたライラはシオンに向かって深く頭を下げた。


「あの時、私とお母様にお情けを与えて下さってありがとうございました。教育を受けて、あの時の自分がどれだけ愚かで、無知だったのか自覚しました。本当にありがとうございました」


綺麗にカーテシーをして御礼を言うライラは美しかった。母親も、愛人と言う影口に負けず、真面目に公爵夫人としての仕事をこなし、今では社交界で注目されていた。


「いいえ、今のこの幸せがあるのは、ライラ自身が頑張ったからよ。正直、貴女が頑張れるか心配だったけど、今は良かったと思っているわ。おめでとう!良い人を射止めたわね♪」


「お姉様…………」


ウルウルと涙を流した。ライラはこの国の第一王子である次期国王になる予定の王太子と婚約したのだった。


「今ならわかります。ルークお兄様がどうしてお姉様を守ろうとしているのか。………お姉様は良いのですか?」


うん?何の事を言っているのだろうか?


「お姉様には婚約者などいらっしゃらないのに、私だけ幸せになっていいのでしょうか?」


ああ、そういうことね。


コソッ

「良いのよ。私の手は汚れ過ぎているから…………生涯独身でいるわ。それに、今は商売が面白いからね♪」


最初は少し悲しそうな顔をしたが、今はそんな様子を見せずに話した。


「お姉様も幸せになって良いと思います!」


フンス!フンス!と、少し怒った様子でライラは言うのだった。


「あはは………まぁ、なるようになるでしょう」


シオンはそう言ったが、前世の知識を利用して新しい料理の開発や、大衆向けのオモチャの販売などで、膨大な利益を上げた。

その利益で大きな孤児院を作り、そこで勉学を学ばせて、成長した子供達がシオンに感謝して、『聖女』として名を残していくのは少し先の話であった。



本人は、商売をする上で絡んできた裏社会の組織を潰して、逆に乗っ取ってしまい、まっとうな用心棒として、任侠と人情を重んじる裏組織を作り、アメジスト公爵家は裏社会を牛耳ることになるのも、もう少し先の話です。



後から知った話ですが、アメジスト公爵には時々、不思議な力を持つ子供が産まれて、王国をより発展させる功績を出すことがあるそうです。だから血筋をより濃く残す為にお母様はクズ親父と結婚したのです。


そして、それが転生者かどうかわかりませんが本人はそれなりに幸せに暮らしたそうです。




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