第2話 借金が増えました
「ごめん、お金貸して!」
アリスが謝罪のポーズをしながら斜め45度に頭を下げる。
「で、今度は何をやらかしたの?」
ため息混じりに問い掛ける僕に、アリスはテヘッと片目を
「……うん、また殴っちゃ、っていきなりなに!? びっくりなんですけど!」
僕の繰り出したボディブローが
「『いきなりなに?』はこっちのセリフだよ! ムカツいたら取り敢えず殴るクセ止めるって、この前約束したばかりでしょ」
「だ、だって、何回断ってもしつこくナンパしてきて、とってもとーってもウザかったの! 今度ばかりは仕方がないと思うのよ」
「仕方なくないよ! それで前回借金を
アリスの
ごしごしと目を
「またお貴族さま殴っちゃったの!?」
「大丈夫! 今度は貴族じゃないの、セイシュー屋のボンボンよ」
ぜんぜん大丈夫じゃないし。
セイシュー屋は王都を中心に商売をしている国内でも有数の大手商会だ。そこのボンボンこと一人息子のカロルド(40)は、前からアリスにご執心でちょっかいを掛けていた。
アリスは黙っていればとんでもないレベルの美少女だから気持ちは分かる。その上スライムパッドで常に胸を盛っているから、見た目上は美少女+ごっくんボディという夢のコラボレーションな存在に見えてしまうのだ。あ、ちなみにスライムパッドは『5→7《ゴーヘブン》』オリジナル商品で、王家御用達印も貰った定番商品です。
「カロルド殴ったくらいで5,000万なんていくワケないでしょ!」
「えっ、そうなの?」
キョトンとした顔のアリスを見て再びのため息。
何だかんだ言っても、僕はアリスを信頼している。コイツはどんなに怒っていようが、一般人に取り返しのつかない暴力は振るわないヤツだ。
まあ、信頼と信用はまったく別物なんだけどね。
「どうせあいつの割れアゴ折ったくらいなんでしょ? カロルドは平民だから治療費入れても200万がせいぜいだよ」
「な、なんで分かるの? 驚きなんですけど……って、私騙されたの? どうしよう、払いますってサインしてきちゃった!」
解らいでか。アリス、カロルドにしつこく言い寄られるたびに『あの割れアゴを四分割にしてやりたい』って言ってたじゃない。
というかサインしちゃったのかー。
「お金関係で困ったら、何かする前に絶対相談してって言ってたのに」
「だって……ソーヤはお店で忙しいでしょ? だから心配掛けたくないなって」
うん、気持ちは嬉しいんだけどそうじゃない。請求書の無効を訴えたり何だりとか超面倒なんだけど……。はぁ。
「次からは絶対にサインする前に僕に相談すること。というか、絡まれてもポンポン人を殴らない。いいね!」
「わ、解りました。ソーヤ、ごめんなさい」
色々と問題ばっかりなアリスだけど、自分の間違いは素直に謝ってくれるから嫌いになれない。フレッドもマーチスも。これで皆んなが慎重ささえ身に付けてくれれば言うこと無いんだけど。
美形揃いのエルフやハーフエルフは、騙されて借金奴隷にされることが多いから普通はもっと用心深いはずなんだけど、僕のパーティメンバーは皆んな揃って超能天気だ。
ほんと仕方がない。いつものことだと諦めて、今回も何とかなるよう頑張りますか。
「セイシュー屋とは僕が話し合ってくるよ。というかお金貸してって言ってたけど、僕が5,000万エルなんて大金持ってないの知ってるでしょ」
「あ、それは私が頑張って払おうと思っていたの。セイシュー屋でミスリルの鎧がびっくりするほど高く買い取って貰えたから。
お店の人も『もうちょっと頑張ればきっとすぐに返せますよ』って言ってくれたの。
だけど持っていたお金も全部渡してきちゃったから、ソーヤにはこれからの生活費をちょっとだけ貸して欲しいなーって」
申し訳無さそうに笑うアリスが言った言葉に、僕は嫌な汗が止まらなくなる。それ、借用書の金額おかしくても、一部でも支払っちゃえば払う意思ありって認められちゃうヤツなんじゃ……。
詐欺だけど詐欺じゃなくなっちゃうケースで、知識の無い女の子を借金奴隷にする手口だから気をつけましょうって、王都タイムズに注意勧告が掲載されていた——あっ、これ何とかならないかも。
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キャラクターの口調は今後調整入れていくかもしれません。
思い付きで始めてしまった連載なので、色々後手後手で済みません(汗)
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それではまた次話で。
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