第20話 国王からご指名で魔獣討伐の依頼がきました

 ハンセンたちがプロキオンの街から追放されて、2ヶ月ほど経ったていた。カイトたちも謹慎期間が終わったあとは、魔獣討伐に精をだしてパーティーランクもどんどん上がっている。

 一方、ミリオンパーティーは相変わらずの状態だった。




「おい、聞いたか? カイトのパーティーもうAランクだってよ!」

「マジかよ!? え、ついこの前Bランクに上がらなかった?」

「やっぱりさ、SSSランクって本当なんじゃねえ?」

「そうだよな。だってさ、カイトが抜けた途端ミリオンパーティーがAランク落ちしたもんな」

「その情報古いよ。ミリオンたちは今Bランクだし」

「え、それって、今までカイトで持ってたってことじゃん」

「それなのに、あんな仕打ちしてたの?」

「えええ……それって……」




 ギルドの食堂ではこんな話がハンターたちの間で広まっていた。

 ミリオンたちはギルドに来たくはなかったが、討伐をこなさなければ食うにも困る状況だった。


 Sランクパーティーなら月に一度の討伐でも、遊んで暮らせるくらいの報酬がもらえる。それを見越して、あるだけ使ってきていたのだ。

 度重なる失敗で報酬はなく、薬草や素材を売っても値段がつかない。みるみるハンターカードの残額は減っていった。



「クソッ! さっさと依頼を受けて行くぞ!」


「わかってるわよ、いちいち怒鳴らないで!」


「朝っぱらから喧嘩してんじゃねぇよ、ウゼェな」


「チッ、こいつらと組んだのが失敗だったか……」



 ミリオンパーティーの空気はいつもギスギスしていてお互いにけなし合うばかりだ。討伐のために目的地についても口論ばかりで、結局魔獣は倒せず報酬ももらえない。


 反対にカイトたちには魔獣討伐も順調で、他のハンターたちもカイトに対する評価を見直している。そのことが余計にミリオンたちを苛立たせていた。



 クソッ! なんで俺たちが、こんな惨めな思いをしなきゃならないんだ! なんで! なんで!!

 全部アイツのせいだ……カイトとパーティーなんて組んだから、こんな事になったんだ!! カイトのせいだ!!



 ミリオンが足早に受付にむかおうとした時に、一枚のポスターが目に留まる。

 毎年この時期に来る、ハンター派遣の募集のポスターだった。国王によって執り行われる大規模な魔獣討伐に参加できるのだ。

 ここで国王に認められれば、国王軍所属のハンターになることも夢ではない。


「これだ……おい! これだよ!!」


「はぁ? 何だよ……て、ハンター派遣か?」


「チッ! こんなのボランティアみたいなもんじゃねぇか」


「えー、こんなの参加したくないわよ」


「ここで参加して、国王に認められれば国王軍に行けるんだぞ! 俺たちには、もうこれしかない!」


 全員このギルドでの居心地の悪さには嫌気がさしていた。街を出るにもまずは資金が必要だが、討伐は失敗続きでうまくいっていない。

 ここで国王に認められれば、一気に未来が開けるのだ。



「この討伐で、国王に認めてもらうんだ……!」


 ミリオンパーティーは、すがるような気持ちでハンター派遣に参加の申し込みをした。




     ***




 オレたちはこの日もギルドに来ていた。今日はどんな討伐依頼を受けようかと、リナと相談していると後ろから声をかけられた。



「カイトくんとリナさんって、君たちのことだよね?」



 声をかけてきたのは、ギルド長の次に強いSランクハンターのエリア・ガルディナだった。金髪に翡翠色の瞳でイケメン、なのに惚れた女には振られるという謎のスペックの持ち主だ。


「はい、そうですけど……」

 

「じゃぁ、はい、これ」


 一通の封書を渡される。宛名はたしかにプロキオンのギルド所属、カイト・シーモアとなっている。裏を見ると封蝋がされていて、その紋章に見覚えがあった。

 2本の剣がクロスして、さらに炎をまとっている。


「国王からの討伐への招待状だよ。断るっていう選択肢はないから、参加一択で頼むね」


「は? 国王? 討伐? 参加って?」


 あ、そうだ。この紋章、王家の紋章だ!! え、この手紙、マジで国王からなのか!?


「あれ? ギルド長から何も聞いてない? 君たちギルド長の推薦で、国王主催の討伐隊に強制参加になったんだよ。ほら、あのポスターのヤツ」


 そういってエリアさんが指さした先には、ハンター派遣の募集のポスターがあった。毎年恒例のヤツだ。

 報酬は出るものの、通常の依頼よりも少額なため参加者は少なかった。ただ経験を積みたいハンターや、国王に認めてほしいハンターが参加するものだ。


「え……アレに強制参加……ですか?」


「うん、そう。出発は明後日だから、準備しておいてね。よろしく」


 そういってエリアさんはヒラヒラと手を振りながら去っていった。


 強制参加って……リナもなのか!?


 慌てて手紙を開封してみる。

 読んでみると国王直筆の手紙らしく、今回の討伐には必ず参加してほしいことと、リナも一緒に来てほしいと書かれていた。



「リナ……特訓だ」


「えっ、特訓?」


「リナも強制参加だから、明日までに魔力のコントロールを完璧に覚えないとヤバい」


「ええっ! ちょっと待って、明日まで!?」


「そうだ、国王命令だからやるしかない」


「っ! うぅ、わかったよ。頑張る……」




     ***




『リナ! 何度いわせる! 魔力の開放をするときに気を抜くな!』


「はいぃ! ごめんなさいぃ!」


「よーし、カイト次行くぞー!」


「はいっ! ムルジムさん、お願い……します」



 ここはギルドの練習場だ。

 今は貸切でリナだけのつもりが、何故かオレも一緒に特訓させられている。

 ムルジムさんに特訓場所の相談したら、ギルド長に掛け合ってくれて快く貸切にしてくれたのだ。そこまではよかった。問題はそのあとだ。



「それなら、リュカオンの事をSランクハンターには周知しよう。それでカイトも一緒に特訓したらどうだい? 実践経験を積んだほうがいいだろう?」



 この鶴の一声で、オレまで死にそうになっている。リナの特訓ためには周りで魔法や魔力を使ってくれた方がいいんだ。

 しかも側にいるのはSランクハンターだから、ちょっとやそっと吸われたくらいではビクともしない。最高の特訓環境だ。


 それにオレがリュカオンと融合していると聞いても、みんなあっさり「そうなんだ。どうりでな」と受け入れてくれた。ミリオンとはえらい違いで、オレが驚いた。でも、すごく嬉しかった。


 いまこのギルドにいるSランクハンターは、エリアさん、ディーノさん、ムルジムさん、セシルさんの4人だった。

 他のSランクハンターの皆さんは、緊急性の高い魔獣の討伐などで留守にしている。

 エリアさんもつい2日前に戻ってきたばかりだそうだ。



「ムルジムばっかりズルいぞ。今度はオレも混ぜてくれ」


「エリアはさっき続けてやったばっかりだろ!」


「それなら次は私の番でしょう。前回のようにはいきませんよ」



 ディーノさんまで何故かヤル気になってる。何でだ!?

 セシルさんがリナの相手してくれてるからいくらかマシだけど、いつまでやるんですか? この特訓。



「と、いうわけで3人同時に攻撃するから、頑張って避けてね」


 と、エリアさんがキラキラした笑顔で、聖剣シリウスを構えた。エリアさんは珍しい聖魔法が使えてしかも聖剣の使い手だ。魔獣討伐経験も豊富で、魔力だけでは敵わない戦闘技術がある。

 その他にムルジムさんとディーノさんも加わるだって?


「ちょ、オレ、そん————」



一陣の刃ベンダバール

氷塊の槍アイシクル・ランス

「輝け、シリウス」



「うわっ! まっ! 青い衝撃ライトニング・ショック!!」



 この3人、まったく話を聞いてくれない。たしかに3人とも大先輩だし、すごい人たちだと思うけど。オレ、マジで死にそうです。これは……魔獣討伐の方がラクだ!! 絶対!!


 オレとリナが解放されたのは次の日の夜だった。



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