03:沙樹視点(1-2話)
僕がしずくちゃんの秘密を知ってしまった後、家へと帰る僕の足取りは重く、家に着く頃には今にも泣きそうになっていた。
「ただいま⋯⋯」
「あら、沙樹ちゃんおかえりなさい。
どうしたの、そんな悲しそうな顔をして」
「ううん、何でもないよ」
「絶対嘘、お父さんにはわかるんですからね!」
家に到着するとお父さんが心配そうに言った。
お父さんみたいに可愛い見た目になったら⋯⋯チャンスあったりしないかな?
「⋯⋯お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」
「どうかしたの?」
「どうやったらお父さんみたいになれるかな」
「えっ」
「僕も可愛くなりたい」
「⋯⋯ど、どうしちゃったの沙樹ちゃん!?
あ、あんなに男らしくなりたいって言ってたのに!?」
「男らしくなったらしずくちゃんと⋯⋯って思ってたけど、しずくちゃんは可愛い子が好きらしいから⋯⋯」
「なるほど、だから⋯⋯
それならお父さんに任せなさい!」
胸を張りながらそう言ったお父さんは、お父さんの部屋から何かを取ってきた。
それは大きなサイズのカバンのようなもので、お父さんはそのカバンのような物を開けると中から何かを取り出した。
「やっぱり、最初はお化粧からがいいかしらね⋯⋯」
そこからぶつぶつと何かを喋りながら僕の顔を触るお父さん。
お父さんにされるがままにメイクを受ける事数十分、お父さんは満足気な顔をしながら僕に鏡を見せてきた。
「えっ⋯⋯これが⋯⋯僕⋯⋯?」
そこにいたのは美少女と言ってもおかしくない自分の姿が。
「そうよ!やっぱり沙樹ちゃんは可愛いわね!」
「す、凄く複雑な気分なんだけど⋯⋯」
「流石私とお母さんの子、素材が段違いね!」
「そ、そんなに似合ってる?」
「もう、最高よ! 帰って来たらお母さんにも見せてあげないとね♪」
エプロンをはためかせながらお父さんはルンルン気分で言うと何かを思い出したような顔をした。
「あっ、そうだ! 折角だから、服も変えちゃいましょう!」
「えっ」
「シンプルにワンピース⋯⋯いやでも似合いそうなのあったかな⋯⋯」
「⋯⋯お父さん?」
「とりあえず、これ似合うと思うから着てみてくれる?」
「う、うん⋯⋯」
そう言ってお父さんに渡されたのは白いワンピースで、少しセーラー服のような青いラインとリボンが付いている。
「ど、どうやって着るんだろ⋯⋯?」
流石にお父さんの前で着替えるのは恥ずかしいから自分なりに着方を考えてなんとか着ることが出来た。
これがドレスとかだったら無理だったかも⋯⋯ワンピースは作りが簡単で助かったよ。
「どんな感じ⋯⋯かな」
「こ、これが僕⋯⋯?」
「か、可愛い⋯⋯かも」
ワンピースを着た僕は想像以上に似合っていた。
「しずくちゃんの好みに合うかはわからないけど⋯⋯そう言えば明日しずくちゃんの誕生日だし⋯⋯これ着て遊んだら喜んでくれるかな?」
だけど、流石にこれを着て外に出る勇気は無い。
「明日はうちに来てもらおう⋯⋯」
だから僕はそう決めた。
♢
「ただいま」
お母さんが家に帰ってきた。
「
「ありがとう凪、今日もお疲れさま」
「お母さんおかえりなさい⋯⋯」
「沙樹もありが」
お母さんは僕を見てフリーズしてしまった。
「凪、これは?」
「沙樹ちゃんとずっと仲の良いしずくちゃん、女の子が好きなんだって」
「あぁ⋯⋯ボクと同じタイプなんだね」
「そう言う事」
「それにしても⋯⋯凄く似合っているね」
「でしょう! 明日早速見せるって沙樹ちゃんが言っていたから、私はりきりすぎて大変なの!」
「うん、本当に似合ってる」
「ふっふーん!」
お父さんが胸を張りながら得意気にしていると
「あっ、そうだ。
どうせだから、今週の土曜日沙樹の着る服でも買いに行こうか」
「行きましょう!」
「えっ?」
「もっと可愛い格好をしている沙樹を見たいしね」
「それにボクも眼福だし⋯⋯
凪に沙樹、両手に華になっちゃうね」
「もう、宥さんってば!」
「はは、それくらい二人とも似合っているよ」
「お母さん、ありがと」
僕は笑顔でお母さんにお礼を言うと⋯⋯
「ぐふぅ⋯⋯」
「宥さん!?宥さーん!?」
「我が息子ながら、破壊力が⋯⋯ガクッ」
「お、お母さああああああん!?」
何故かお母さんが倒れてしまった。
♢
次の日になり、学校が終わった後、しずくちゃんを説得した僕は家にしずくちゃんを呼ぶ事に成功した。
「お父さん、お願い」
「今日はパパッと終わらせちゃうからね」
「うん」
「それじゃ始めるわよ?」
「うん!」
それからお母さんにメイクをしてもらった僕は昨日着たワンピースを着てしずくちゃんのいる部屋へと向かった。
それからはしずくちゃんは凄く驚いていて誕生日プレゼントに何でもしてあげると言ったら膝枕しながらの耳掃除をお願いされた。
「はい、終わったよ⋯⋯って寝ちゃってる」
「⋯⋯寝てるよね?」
「うん、大丈夫そう。
このままずっとこの時間が続けばいいのにな⋯⋯」
僕はしずくちゃんの頭を撫でながらそう呟いた。
「しずくちゃん、大好きだよ」
早くこの想いが、面と向かって伝えられるようになると良いんだけど⋯⋯
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