仲の良い男の子に女の子好きだとバレたら次の日から女装してくるようになりました

二兎凛

01:私の趣味がバレました

 私、水城みなしろしずくには誰にも言えない秘密がある。

 それは女の子が好きだと言うこと。

 だけどこれを言ってしまえば皆から遠ざけられてしまうかもしれない。


 だから私はこの気持ちを抑える為に、周りにバレないために二次元に走った。


 二次元なら、どんな欲望でも受け止めてくれるから。


 だから私はまだ、大丈夫。



「しずくちゃんおはよー」

「沙樹くんもおはよう」

 私はいつも通り学校へと通い、幼馴染であり親友だと思っている白宮沙樹しろみやさきくんと一緒に登校するため、いつもの場所で合流した。


「⋯⋯」

「ん?しずくちゃんどうかした?」

 私が沙樹くんの顔をぼーっと見つめていると沙樹くんが何か感じたのか私にそう聞いてきた。


「ううん、なんでもない。

 ただ、沙樹くん今日も可愛いなって」

「もう!またそれじゃん!

 僕はカッコいい男になりたいの!」

「そのままでいいのに⋯⋯」

「僕が良く無いの!」

 そんないつも通りの会話をしながら学校へ向かう私達。


「ふぁぁ⋯⋯」

「しずくちゃん寝不足?」

「ちょっとね⋯⋯」

「大丈夫?ちゃんと寝ないとダメだよ?」

「大丈夫、今日だけだよ」

「本当?僕心配だなぁ」

「沙樹くんは私のお母さんかっ!」

 昨日勉強を遅くまでしていたせいで眠気がなかなか抜けずに欠伸をすると、沙樹くんが私の寝不足を指摘してきた。

 まるでお母さんのように言ってくる沙樹くんに思わずツッコミを入れてしまった。


「お、お母さんって⋯⋯あははっ」

「ふふふっ、沙樹くんがお母さんとかあり得ないか」

 お互い軽く笑い合いながら通学路を歩いて行くこと二十分ほど、私達は学校に到着した。


 実は私達は運が良いのか悪いのか、ずっと同じクラスになっていて、一度も離れた事が無かったりする。


 凄い偶然だよね。


 登校した後は授業を受けて、放課後になるとどちらかの家に遊びに行ってゲームをしたり勉強をするのが私達の日課。


「あっ、そういえば今日うちにお客さん来るらしくて今日はしずくちゃんの家でも大丈夫?」

「うん、大丈夫だよー」

 昨日寝る前に片付けはしておいたはずだから多分大丈夫だったはずだし。


 そのまま私は家に帰りぱぱっと着替えて沙樹くんがいつ来ても良いように準備する。


 私が着替え始めて五分もすると沙樹くんが家のインターホンを鳴らした。


「沙樹くん、上がっていいよー」

「おじゃましますー」

 そう言いながら家に上がる沙樹くんはいつも通り真っ直ぐに私の部屋にやってきた。


「今お茶持ってくるね」

「うん、ありがとうしずくちゃん」

 この瞬間、私は知らなかった。


 沙樹くんが座っているテーブルの下に私が昨日寝る前に読んでいたとある漫画があった事に。



 しずくちゃんがお茶を取りに行って少し手持ち無沙汰になった僕は、ふと自分の足元に本がある事に気が付いた。


「しずくちゃんが片付け忘れるなんて珍しい⋯⋯」

 そして僕はその本を手に取ると表紙が目に入った。


「夜ご飯のあとは百合の花?」

 タイトルだけでは良く分からなかった僕はその中身を見てしまった。


「な、なにこれ⋯⋯」

 その漫画は可愛い女の子が、可愛い女の子といちゃいちゃしているという内容の漫画だった。


「も、もしかして、僕、全く異性として見られてない⋯⋯?」

 僕がしずくちゃんを好きになったのは小学六年生の頃、それからそれとなくアピールしていたけれど、関係は友人としては深くなったと思う。


 だけど、僕はそんな関係で終わらせたくなかった。

 心地良いしずくちゃんの隣にずっと居たかった。


「でも流石に女の子になんてなれないよ⋯⋯」

 そんな事を思っていると突然ドアが開いた。


「おまたせ⋯⋯」

 僕の手にある漫画を見て顔を真っ青にさせたしずくちゃんは持っていたトレイに乗ったコップごと落としてしまった。


「さ、沙樹くん⋯⋯?

 そ、その漫画⋯⋯ど、どこから?」

「えっと、テーブルの下にあったけど⋯⋯」

「うゎぁぁぁぁぁぁぁぁ!!私のばかああああああああ!!」

「え、えっと、と、とりあえず床拭こ?ね?」

「うん⋯⋯」

 錯乱したしずくちゃんなんて初めて見た僕はなんだか新鮮だなと思ったけど、しずくちゃんが怪我をしなくて本当に良かった⋯⋯


 それから床を綺麗にした僕達はなんとも言えない雰囲気に包まれた。


「ねぇ、沙樹くん」

「ふぇ!?ど、どうしたのかな?」

「見た⋯⋯よね?」

「う、うん⋯⋯」

「そう、だよね⋯⋯やっぱ変、だよね?」

「そんな事無いよ!」

「へっ?」

「だ、だってしずくちゃんはただ可愛い女の子が好きなだけなんでしょ?」

「う、うん」

「それを否定するつもりは⋯⋯ないよ」

 だけど、やっぱり悔しくて、泣きそうになる。


「沙樹くん⋯⋯」

 でも僕は我慢する。

 異性として一緒になれないなら、せめてこの関係を⋯⋯


「しずくちゃん、まずは宿題済ませちゃおうよ!」

「う、うん!」

 僕は何も無かったように見せながら勉強を始める事にした。


 今は少し、考えたく無いから。



「あ、危なかった⋯⋯」

 今は沙樹くんは家に帰っていったけれど、まさか私の趣味がこんな単純なミスでばれてしまうなんて思いもしなかった。


「次は無い様にしないと⋯⋯」

 特に親にはバレないようにしないと⋯⋯

 私は隠し場所を再度確認して、次が無い様に気を引き締めた。


「ただ、沙樹くんの反応何かおかしかったような気がするなぁ⋯⋯」

 まさか次から私の想像を超える事が起きるなんてこの日の私は考えもしていなかった。

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